辞書を引いてもいまいち何のことかよくわからない日本語にはない英単語。そんな単語を思い切って解剖してしまおう、というコーナーです。言葉のアナトミーがわかれば、その言葉の「人となり」もわかるのでは?そんな期待を抱きながら、言葉の外科医になったつもりで、今日もメスを握ってみましょう。



context

なんだか見たことあるような単語ですね。学生時代などに英単語を暗記した経験があると思いますが、確か「文脈」とかいう意味だったかなーというような記憶が残っています。しかし、どういう場合にどのように使われるのか、と問われるととっさに答えられませんね。まして、自分が文章を作る場合には、まず使わない単語です。それもそのはず、この単語の持つニュアンスや使い方がわからないのですから、使えるわけがありません。

たとえば、
Teaching and Learning on the World Wide Web - a searchable collection of sites where the web is used in the context of instruction.

という文章があったとします。さて、ここに出てくる context  in the context of instruction で、 instruction (「指導」)の context ということなんですが、 context イコール「文脈」として全体を訳してみましょう。

「インターネット上で教える、学ぶ。指導の文脈でウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」

となります。果たしてどうでしょう?「指導の文脈」と言われて意味がわかる人はよほどキレ者です。指導の文脈とはどういう文脈なのか、なぜそもそも「指導」に「文脈」があるのか、思わず悩んでしまいますね。しかも悩んでもわからない、困ったものです。

仕方ありません。では、さっそく解剖してみましょう。
まず、英和辞書を引いてみることにしましょう。
context
(1)文章などの前後関係、コンテクスト、文脈
(2)事件などの背景、状況
次に、英和辞典に出てくる意味を片っ端から当てはめてみましょう。

「インターネット上で教える、学ぶ。指導の前後関係でウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」
指導の前後関係?指導前、指導後?これもいまひとつよくわかりません。
「インターネット上で教える、学ぶ。指導の背景でウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」
「インターネット上で教える、学ぶ。指導の状況でウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」
ちょっとわかりかけてきたような気もしますが、まだピンと来ないですね。

仕方ありません。さらに深いところまで解剖してみましょう。
今度は、英英辞典を見てみましょう。
context
Function: noun
Etymology: Middle English, weaving together of words, from Latin contextus connection of words, coherence, from contexere to weave together, from com- + texere to weave
(語源:中世英語。言葉を織り成すこと。ラテン語の contextus から、言葉の結合、首尾一貫、織り込む。)
Date: circa 1568
(1) the parts of a discourse that surround a word or passage and can throw light on its meaning
(言葉や節をとりまく議論の一部でその意味を際立たせるもの)
(2) the interrelated conditions in which something exists or occurs: ENVIRONMENT, SETTING
(物事が存在あるいは発生する相関関係をもった状況。環境、設定。)
では、ここで解剖して見えてきたものをじっくり観察してみましょう。まず、語源からは「言葉を織り成すこと。言葉の結合、首尾一貫、織り込む。」ということですから、これは何となく「テクスチャー」つまり「織物」のようなものだということがわかりますね。解剖学的に言うと「組織」というところでしょうか?

次に、(1)の意味から、ある物事に関して「あれやこれやと解説したり、説明したり、話し合ったり」した内容から取り出した部分ということで、つまり、 ということです。

さらに、(2)の「物事が存在あるいは発生する相関関係をもった状況。環境、設定。」ということから、一言で言えば「取り巻く環境」と言った感じですね。

しかし、日本語にピッタリの単語はありませんから、その都度だいたいのところで、適切な日本語表現を選んで表現していくしかなさそうです。この単語をずばり言語化できないということになると、あとはイメージしかありません。

では、ここで、解剖図を見てみましょう。


つまり、この解剖図のようなイメージがcontext で、それは、いろいろ問題や話題にされる背景であり、いろんな関連性ある事柄や情報が存在しているような状況であるひとつのエリアと考えたらいいかもしれません。そして、そのエリア内にあって前後のつじつまが合ったり、脈絡が合致したりしていることがcontext の中にあるということです。

敢えて言語化するとすれば、「指導するということに関連した範囲で」といったところでしょう。しかし、前述のように、context という概念自体が日本語にはないので、自然な日本語にする場合は、

「インターネット上で教える、学ぶ。指導の環境でウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」
「インターネット上で教える、学ぶ。指導関連でウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」
「インターネット上で教える、学ぶ。指導のいろんな場面においてウェブが利用されているサイトで、検索が可能なものを集めてみました。」

といった感じで処理するしかないと思われます。あくまでも一例です。場合によっては、いっそのこと訳出しなくてもいいのではと思います。
最後にcontext を使った例文をいくつか見てみることにしましょう。

Internet connectivity, especially in the context of "always-on" or broadband access services, such as cable modems and DSL.
インターネット接続に関して、なかでも、ケーブルモデムやDSLといった「常時接続」やブロードバンド接続の環境における接続を問題にしている。

The program offers a web search that learns from people users and provides them with context sensitive information about sites.
ユーザーの検索行動から情報の脈絡を自動的に判断し、検索先サイトに関するつじつまの合った検索結果を表示できるプログラムである。(専門的には「状況依存型」と呼ばれているようです。)

We should focus on economy, education, health, and foreign policy in the context of a multi-partisan perspective that will influence the long-term development of the nation.
国の長期発展にかかわる多党性との関わりのなかで、経済、教育、健康問題、外交といったことに焦点を当てる必要がある。
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