英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update June 26, 2016



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Last update June 26, 2016


オーストラリア英語の発音

一般的な傾向と特徴

カナダやニュージーランドと同様、イギリス連邦(The Commonwealth of Nations)のメンバーであるオーストラリアは、18世紀末にイギリスの流刑地として移住が始まりました。しかし、移民していった人々は受刑者ばかりでなく、テムズ川の(the River Thames)の北部、イースト・エンド(the East End)地域を起源とするコックニー(Cockney)と呼ばれる人々も含まれており、それに加えていろんな国や地域から移民してきた人々によって国家の基盤が形成されていきました。

なかでも、アクセントにおいてはコックニーの影響が強く、あの独特なオーストラリア英語の特徴は、すでに、19世紀初期の現地生まれの人々の話し方として定着していたようです。

オーストラリア英語の母音
オーストラリア英語の母音のイメージは以下のようになります。


 オーストラリア英語の二重母音
二重母音 /æɪ/ /ɑe/
単語例 face price
二重母音 /oɪ/ /əʉ/
単語例 choice goat
二重母音 /æɔ/ /ɪə/
単語例 mouth near
二重母音 /e/ * /(j)ʉ.ə/
単語例 square cure
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。

●上の図および表には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれています。それには黒い文字で括弧書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。
●たとえば、/ʉː/ は、アメリカ英語などではみられません。辞書の表記も /uː/ になっていますが、厳密には /u/ よりも舌の位置が前方に来ます。
●また、/ɜ/ も通常は /ə/ で表記されます。


オーストラリア英語発音特徴表
また、オーストラリア英語の発音の特徴を表にすると、以下のようになります。

「r」の発音 母音の特徴 子音の特徴
ノン・ロウティック (Non-rhotic)  独特の母音の発音
 強勢のない母音の同化 (Weak-vowel merger)
 happy の語尾音の強調 (Happy-tensing)
 salary と celery の同化 (Salary–celery merger)
 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger)
 horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger)
 trap と bath の分裂 (Trap–bath split)
 bad と lad の分裂 (Bad-lad split)
 pure と poor の分裂 (Pure–poor split)
 /t/ や /d/ の母音間歯茎はじき音化 (Intervocalic alveolar flapping)
 暗い /l/ の発音 (Dark /l/)
 /j/ の合体 (Yod-coalescence)
 子音の口蓋化 (Palatalization)
 /j/ の脱落 (Yod-dropping)
 /t/ の声門破裂音化 (T-glottalization)
 wine と whine の同化 (Wine–whine merger)

音節語尾の母音の後の「r」は発音しない (non-rhotic)
オーストラリア英語では、イギリス英語と同様に、音節の末尾に来る母音の後の「r」のスペルを発音しない non-rhotic (ノン・ロウティック) の発音になります。これには、アメリカへの移住が始まった頃(17世紀頃)とは異なり、オーストラリアへの移住が始まった18世紀末には、イギリスの英語自体が「r」のスペルを発音しないものになっていたという歴史的背景があります。また、この「r」のスペルを発音しないということから、イギリス英語のように「linking R (つなぎの R)」「intrusive R (侵入の R)」といった現象が起こります。

母音間歯茎はじき音
アメリカ英語やカナダ英語の発音のように、母音に挟まれた強勢のない音節の /d/ や /t/ が「ら行」に近い音になるという母音間歯茎はじき音化 (Intervocalic alveolar flapping) が起こります。

暗い /l/ の発音
イギリス英語が明るい /l/ と暗い /l/ を使い分けるのに対して、オーストラリア英語ではすべての /l/ が暗い /l/ で発音されます。これら2種類の発音については、明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/) をご覧ください。

/j/ の合体
オーストラリア英語では、/tj/ や /dj/ の子音が口蓋化することで、2つの子音が /ʧ/ や /ʤ/ に合体する /j/ の合体 (Yod-coalescence) という現象がみられます。よって、tune や dune が「チューン」、「ジューン」のように発音されます。また、/sj/ や /zj/ が合体して /ʃ/ や /ʒ/ のように発音する話者もみられます。

例)tune、dune
単語 アメリカ英語 イギリス英語 オーストラリア英語
tune /tjun/ /tjun/ un/
dune /djun/ /djun/ un/

子音の口蓋化
上のような子音の口蓋化が進むと、/tr/ や /dr/ などの発音にも影響がおよび、tree が「チュリー」、dream が「ジュリーム」に近い発音に変化する子音の口蓋化 (Palatalization) もみられます。

/j/ の脱落
上の /j/ の合体と逆の現象ですが、話者によっては、/sj/ や /zj/ の /j/、/lj/ や /rj/ の /j/ が落ちる /j/ の脱落 (Yod-dropping) の傾向もみられます。ただし、/nj/ の /j/ が落ちて new が「ヌー」のようになる傾向はないようです。

/t/ の声門破裂音化
アメリカ英語やイギリス英語同様、/t/ の声門破裂音化 (T-glottalization) がイギリス英語でもみられ、button が「ボッン」のように発音される傾向がみられます。

happy の語尾音の強調
happy の語尾のようなゆるい /ɪ/ の音が強調され /i/ の音で発音される happy の語尾音の強調 (Happy-tensing) がみられます。




発音の同化と分裂

オーストラリア英語における発音の同化 (merger) と分裂 (split) の傾向をまとめると以下のようになります。

発音の同化
 強勢のない母音の同化
アメリカ英語と同様に、強勢のない「i」の音があいまいな「ア」(/ə/) で発音されるという強勢のない母音の同化 (Weak-vowel merger) がみられます。その結果、たとえば、abbot と rabbit のような単語が韻を踏みます。

単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
abbot /æbət/ /æbət/ /æbət/
rabbit /ræbət/ /ræbɪt/ /ræbət/

 salary と celery の同化
オーストラリアのビクトリア州の一部でみられる傾向として salary と celery の同化 (Salary–celery merger) が挙げられます。/l/ の前にくる /æ/ と /ɛ/ の音が同化することで、salary と celery が同音になります。

単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
salary /sæləri/ /sæləri/ /sæləri/
celery /sæləri/ /sɛləri/ /sɛləri/

 fern、fir、fur の同化
ほとんどの国の英語に該当する特徴ですが、「r」の前の /ɛ/、/ɪ/、/ʊ/ が同化して同じ発音になる fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) がみられ、オーストラリア英語では /ɜː/ となります。

 horse と hoarse の同化
また、ほとんどの他の英語圏に共通しますが、オーストラリア英語においても、母音の前の /ɔ/ や /o/ が同化する horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger) がみられます。

 wine と whine の同化
他の英語圏でも一般的な傾向になっていますが、what や which などの「wh」の部分の発音が wine などの「w」の音と同化する wine と whine の同化 (Wine–whine merger) がオーストラリア英語でもみられます。

発音の分裂
 trap と bath の分裂
イギリス英語と同様に、オーストラリア英語にも、trap と bath の分裂 (Trap–bath split) がみられ、/f/、/s/、/θ/、/ð/、/z/、/v/、または鼻音の前にくる /æ/ の音が /aː/ に変化します。

単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
trap /træp/ /træp/ /træp/
bath /baθ/ /bɑθ/ /bæθ/

 bad と lad の分裂
オーストラリア英語では、bad と lad の母音の発音が、それぞれ /æ/ の短母音と長母音で区別される bad と lad の分裂 (Bad-lad split) がみられます。この現象は、一部のイギリス英語でもみられます。

単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
bad /bæd/ /bæd/ /bæd/
lad /læd/ /læd/ /læd/

 pure と poor の分裂
ニュージーランド英語にもみられる傾向ですが、/ʊə/ の二重母音が /ʉː.ə/ という2つの単母音からなる発音と /oː/ という長音単母音に分かれる pure と poor の分裂 (Pure–poor split) がみられます。

単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
pure /pjʉ.ə/ /pjʊə/ /pjʊr/
poor /po/ /pʊə/ /pʊr/


独特の母音の発音

次に、オーストラリア英語の独特な母音の発音について、アメリカ英語やイギリス英語と比較しながらみてみましょう。

 /eə/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /eə/(/ɛə/とも表記) で発音される二重母音が、オーストラリア英語では /eː/ で発音されます。
例)lair、square
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
lair /le/ /leə/ /leɚ/
square /skwe/ /skweə/ /skweɚ/

 /eɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /eɪ/ で発音される二重母音が、オーストラリア英語では /æɪ/ で発音されます。
例)face、take
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
face /fæɪs/ /feɪs/ /feɪs/
take /tæɪk/ /teɪk/ /teɪk/

 /aɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /aɪ/ で発音される二重母音が、オーストラリア英語では /ɑe/ で発音されます。
例)price、light
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
price /prɑes/ /praɪs/ /praɪs/
light /lɑet/ /laɪt/ /laɪt/

 /ɑʊ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ɑʊ/ で発音される二重母音が、オーストラリア英語では /æɔ/ で発音されます。
例)loud、mouth
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
loud /læɔd/ /laʊd/ /laʊd/
mouth /mæɔθ/ /maʊθ/ /maʊθ/

 /ɔɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ɔɪ/ で発音される二重母音が、オーストラリア英語では /oɪ/ で発音されます。
例)boy、chois
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
boy /boɪ/ /bɔɪ/ /bɔɪ/
choice oɪs/ ɔɪs/ ɔɪs/

 /u:/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /u:/ で発音される母音が、オーストラリア英語では /ʉː/ で発音されます。
例)boot、goose
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
boot /bʉt/ /but /but/
goose /gʉs/ /gus/ /gus/

 /ʌ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ʌ/ で発音される母音が、オーストラリア英語では /a/ で発音されます。
例)bud、strut
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
bud /bad/ /bʌd/ /bʌd/
strut /strat/ /strʌt/ /strʌt/

 /oʊ(əʊ)/ の発音
アメリカ英語では /oʊ/、イギリス英語では /əʊ/ で発音される二重母音が、オーストラリア英語では /əʉ/ で発音されます。
例)boat、coat
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
boat /bəʉt/ /bəʊt/ /boʊt/
coat /kəʉt/ /kəʊt/ /koʊt/

 /ɔ:/、/ʊə/ の発音
アメリカ英語では /ɔ:/ または /ʊə/、イギリス英語では /ɔ:/ で発音される母音が、オーストラリア英語では /oː/ で発音されます。
例)thought、poor
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
thought ot/ ɔt/ ɔt/
poor /po/ /pɔ/ /pʊɚ/

 /ɑ/、/ɒ/ の発音
アメリカ英語では /ɑ/、イギリス英語では /ɒ/ で発音される母音が、オーストラリア英語では /ɔ/ で発音されます。
例)lot、hot
単語 オーストラリア英語 イギリス英語 アメリカ英語
lot /lɔt/ /lɒt/ /lɑt/
hot /hɔt/ /hɒt/ /hɑt/

 短母音と長母音
オーストラリア英語の長母音と短母音の長さのルールは、イギリス英語とほぼ同じです。


参考サイト

発音以外のオーストラリア英語の特徴については、「世界の英語」コーナーのオーストラリア英語をご覧ください。

また、オーストラリア英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
http://alannat1.podomatic.com/entry/2007-07-31T21_41_50-07_00
オーストラリアのネイティブの方がゆっくりオーストラリア英語で話してくれます。

http://fonetiks.org/engsou2au.html
母音の発音記号にカーソルを当てると、その発音を含んだ単語のオーストラリア式発音が聞けます。



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