英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update March 26, 2015



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母音の変化について

地域差に表れる母音の変化

国や地域による英語の発音の違いとしてよく比較対象になるのが、本来同じ発音だったものが別々の発音に枝分かれする split 「分裂」 と逆に別の発音だったものが同一の発音になるという merger 「合併」と呼ばれる変化です。こういった変化を説明する際には、さまざまな母音を含むレクシカル・セット (Lexical Set) と呼ばれる単語群のなかのキーとなる単語を使って、Trap と bath の分裂 (Trap–bath split) などと呼びます。これは、この特定の単語だけがそうだというのではなく、この単語に代表される単語群のすべてに共通の傾向であるという考え方をします。

そういった母音の変化の特徴をまとめてみると以下のようなものが挙げられます。

 強勢のない母音の同化 (Weak-vowel merger)
強勢のない母音 /ɪ/ の音が /ə/ と同化する傾向で、たとえば abbot と rabbit が韻を踏みます。オーストラリアやニュージーランド英語、アメリカ英語、アイルランド英語ではこの傾向がほぼ確立しています。

 緊張した /æ/ の音 (/Æ/ tensing)
アメリカ英語や一部カナダ英語にみられる傾向で /æ/ の音が /ɛ(e)a/ などのような二重母音に近い音で発音されます。詳しくは、アメリカ英語の発音「緊張した /æ/ の音」の説明をご覧ください。

 non-rhotic (ノン・ロウティック) による発音の同化
イギリス英語をはじめ、オーストラリア、ニュージーランド、ウェールズ英語では、「r」の音が音節末尾の母音を発音しない non-rhotic (ノン・ロウティック) であるため、以下のような単語のペアが同じ発音になることがあります(国や地域によって異なります)。

発音の同化 同じ発音になる単語例
Father–farther merger
(/ɑ:/ と /ɑ:r/ の同化 → /ɑ:/)
レクシカル・セット (Lexical Set) における PALM と START 語群:father = farther、alms = arms、lava = lava、calmer = karma、ma = mar
Pawn–porn merger
(/ɔ:/ と /ɔ:r/ の同化 → /ɔ:/)
レクシカル・セット (Lexical Set) における THOUGHT と NORTH 語群:pawn = porn、awe = or、draw = drawer、laud = lord = lawed、lawn = lorn、sought = sort、talk = torque、taught = tort
Caught–court merger
(/ɔ:/ と /ɔər/ の同化 → /ɔ:/)
レクシカル・セット (Lexical Set) における THOUGHT と FORCE 語群:caught = court、aw (awe) = oar = ore、bawn = bourn(e)、daw = door、flaw = floor、fought = fort、law = lore、maw = more = moor、paw = pore = pour、raw = roar、sauce = source、saw = soar = sore、sawed = sword、Sean = shorn、shaw = shore、yaw = your
Paw–poor merger
(/ɔ:/ と /ʊər/ の同化 → /ɔ:/)
レクシカル・セット (Lexical Set) における THOUGHT と CURE 語群:paw = poor、law = lure、maw = moor、shaw = sure、yaw = your = you're
Calve–carve merger
(/a:/ と /ɑ:r/ の同化 → /ɑ:/)
レクシカル・セット (Lexical Set) における BATH と START 語群:calve = carve、aunt = aren't、bawn = bourn(e)、cast (caste) = karst


 bad と lad の分裂 (Bad-lad split)
RP 以外のイギリス英語やオーストラリア英語にみられる傾向で、bad と lad の /æ/ の音がそれぞれ /æ:/ と /æ/ と区別されることを言います。

 card と cord の同化 (Card–cord merger)
「r」の前の母音の同化の一種で、father と bother の同化のバリエーションです。

 cot と caught の同化 (Cot–caught merger)
アメリカ英語やカナダ英語、スコットランド英語、およびシンガポール英語にみられる傾向で、cot の /ɑ/ と caught の /ɔ/ が、発音の表記にかかわらず同じような音で発音されます。ただし、後に「r」の音がくる場合、この変化は起こりません。つまり、barn と born はそれぞれ異なる音になります。

 cot と coat の同化 (Cot–coat merger)
ズールー語話者の英語にみられる現象で、/ɒ/ と /oʊ/ の音が区別されないため cot と coat が同音になります。また、/ɒ/ と /ɔ:/ も区別されないため、cot、caught、coat がすべて同音になります。

 cork と quark の同化 (Cork–quark merger)
/kɔr/ と /kwɔr/ が同化する特徴で、アメリカ英語において最も顕著に表れています。

 cure と fir の同化 (Cure–fir merger)
/ʃ/、/ʒ/、/ʧ/、/ʤ/ の後にくる /j/ の音が落ちるため、cure が /kɜ:/、sure や pure がそれぞれ /ʃɜ:/、/pɜ:/ となる現象のことです。イングランドのイースト・アングリアやアメリカ英語でみられます。

 doll と dole の同化 (Doll–dole merger)
/l/ の前にくる /ɒ/ と /ə(ɒ)ʊ/ の音が同化し、その結果、doll と dole が同音になる現象で、一部のロンドン英語やニュージーランド英語にみられます。

 father と bother の同化 (Father–bother merger)
father の /ɑ:/ の発音と bother の /ɒ/ の音が区別されなくなり、いずれも /ɑ/ の音で発音される特徴で、アメリカ英語にみられます。また、特に「r」の前で起こるこの傾向を card と cord の同化と呼びます。


 fell と fail の同化 (Fell–fail merger)
/l/ の前にくる /ɛ/ と /eɪ/ の音が同化し、その結果、fell と fail が同音になる現象で、ノースカロライナやテキサスをはじめ、中西部・西部の南部アメリカ英語にみられます。

 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger)
本来は別々の発音であった「r」の前の /ɛ/、/ɪ/、/ʊ/ が同化し、/ə/ または /ɜ/ になる傾向で、ほとんどの地域の英語に該当する特徴です。ただし、スコットランド英語やアイルランド英語は例外です。

 fill と feel の同化 (Fill–feel merger)
/l/ の前にくる /ɪ/ と /i:/ の音が同化し、その結果、fill と feel が同音になり、/ɪ/ に近い音で発音されます。ノースカロライナやテネシー東部、アラバマ、ミシシッピ、ニューオーリンズを除くルイジアナ、テキサス中西部の英語、アフリカ系アメリカ英語などにみられます。

 foot と goose の同化 (Foot–goose merger)
スコットランド、アイルランドのウルスター英語、マレーシア、シンガポールの英語にみられる傾向で、/ʊ/ と /u:/ が同化することで、look と Luke が同音になり、good と food、foot と boot が韻を踏むようになります。full と fool の同化もこの一種です。

 foot と strut の分裂 (Foot–strut split)
中英語期に起こった母音の分裂で、短母音の「u」が foot などの /ʊ/ と strut などの /ʌ/ に枝分かれした変化を言います。ほどんとの英語ではこの変化の影響を受けていますが、北イングランドでは例外であり、逆にこれがこの地域での特徴になっています。

 full と fool の同化 (Full–fool merger)
/l/ の前にくる /ʊ/ と /u:/ の音が同化し、その結果、pull と pool、full と fool が同音になる現象で、ピッツバーグを中心とするアメリカ英語やスコットランド英語にみられる傾向です。その他、「l」の母音化のみられるニュージーランド英語やイギリスのエスチュアリ英語やコックニー英語にも同様の傾向がみられますが、後に母音で始まる接尾辞などがついた場合は、この同化は起こりません。

 furry と ferry の同化 (Furry–ferry merger)
母音に挟まれた「r」の前にくる母音の発音が同化する変化で、「r」の前の /ɜ/ と /ɛ/ が同じになります。アメリカのフィラデルフィアでみられる特徴です。

 happy の語尾音の強調 (Happy-tensing)
happy の語尾のようなゆるい /ɪ/ の音が強調され /i/ の音で発音される現象を言います。南部アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドでみられる特徴です。

 horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger)
North–force merger とも呼ばれ、「r」の前の /ɔ/ と /o/ が同化して /ɔ:/ になるため、horse と hoarse、for と four、war と wore、or と oar、morning と mourning が韻を踏むことになります。ボストンや南部アメリカ英語、アフリカ系アメリカ英語を除くアメリカ英語にみられる他、スコットランド、アイルランド、カリブ諸島、インドの英語を除くほとんどの英語にみられる特徴です。また、伝統的な RP では、horse は /ɔ:/、hoarse は /ɔə/ で区別されています。

 hull と hole の同化 (Hull–hole merger)
/l/ の前にくる /ʌ/ と /oʊ/ の音が同化し、その結果、hull と hole が同音になる現象で、「l」の母音化のみられる英語においてみられます。

 hurry と furry の同化 (Hurry–furry merger)
母音に挟まれた「r」の前にくる母音の発音が同化する変化で、「r」の前の /ʌ/ と /ɝ/ が同じになります。アメリカ英語にみられます。

 /ɪ/ と /ɛ/ の同化 (Merger of /ɪ/ and /ɛ/)
カナダのニューファンドランド・ラブラドール州の英語にみられる現象で、/ɪ/ と /ɛ/ の音が同化し /ɪ/ で発音されるため bit と bet が同音になります。

 kit と bit の分裂 (Kit–bit split)
南アフリカ英語にみられる顕著な特徴で、kit と bit がそれぞれ /kɪt/ と /bʌt/ と発音されるため韻を踏まない現象です。「i」が /k/、/g/ などの軟口蓋音と隣り合う場合や /h/ に続く場合、語頭にくる場合、あるいは /ʃ/ または /ʧ/ や /ʤ/ の前にくる場合は /ɪ/ の発音となり、それ以外は /ə/ となるのが一般的です。

 line と loin の同化 (Line–loin merger)
南部イングランドやアイルランド英語、カナダのニューファンドランド・ラブラドール州、カリブ諸島などの英語でみられる傾向で、/aɪ/ と /ɔɪ/ の音が区別されないため、line と loin、bile と boil、imply と employ がそれぞれ同音になります。

 lot と cloth の分裂 (Lot–cloth split)
/f/、/θ/、/s/ など、無声音の摩擦音の前に来る母音が長音化したり舌の位置が上がる(口の開きが小さくなる)という傾向であり、アメリカの一部の地域では、lot が /ɑ/ で発音され、cloth が /ɔ/ の音で発音される傾向がみられます。

 mare と mayor の同化 (Mare–mayor merger)
フィラデルフィアやバルティモアの英語にみられ、2つの音節で構成される /eɪ.ə/ の音が /eə/ という二重母音に変化することで、mayor と mare が韻を踏むようになります。一方で、/æ/ の強調という /æ/ が二重母音 /eə/ に近くなる現象に関連して、その発音が /æ/ に変化するという動きも起こり、mayonnaise が /meəneɪz/ から /mæneɪz/、graham が /ɡreəm/ から /ɡræm/ になるような発音の変化もみられます。

 Mary、marry、merry の同化 (Mary–marry–merry merger)
「r」前の母音の同化のうち最も顕著な例で、「r」が母音に挟まれた場合、「r」の前の /eɪ/、/æ/、/ɛ/ が同化し、その結果 merry と同じ発音になる変化のことです。アメリカやカナダ英語にみられる傾向ですが、地域によっては、この3つの単語群がすべて同じ発音になるところと、3つのうち2つのみが同一音になり、残りの1つは区別される地域もあります。

 met と mat の同化 (Met–mat merger)
マレーシアやシンガポール、ホンコン英語にみられる現象で、/ɛ/ と /æ/ の音が同化し /ɛ/ で発音されるため met と mat、bed と bat が同音になります。発音が同じになるのは無声音の子音の前でのみという話者もいるようです。

 met と mate の同化 (Met–mate merger)
ズールー語話者の英語にみられる現象で、/eɪ/ と /ɛ/ の音が同化し /ɛ/ で発音されるため met と mate が同音になります。発音が同じになるのは無声音の子音の前でのみという話者もいるようです。

 mirror と nearer の同化 (Mirror–nearer merger)
母音に挟まれた「r」の前にくる母音の発音が同化する変化で、「r」の前の /ɪ/ と /i/ が同じになります。アメリカ英語にみられます。

 mirror と mere の同化 (Mirror–mere merger)
母音に挟まれた「r」の前にくる母音の同化する変化であり、「r」の音節に強勢がない場合や速く発音される場合、その音節の母音が落ちてしまう現象を言います。たとえば、mirror の -ro- が -r- になり Oregon の -re が -r- になることで、mirror が mere、Oregon が organ と同じように聞こえます。アメリカ英語でよくみられる傾向です。

 mitt と meet の同化 (Mitt–meet merger)
マレーシアやシンガポール英語にみられ、/i:/ と /ɪ/ の音が同化し /i/ で発音されるため mitt と meet、bit と beat、bid と bead が同音になります。

 near と square の同化 (Near-square merger)
/ɪə/ と /ɛə/ (あるいは/eə/)が同化する傾向で、ニューヨークやニュージーランド、イングランドのイースト・アングリア、アメリカのサウスカロライナ、カリブ諸島でみられる傾向です。ニューヨークやニュージーランドでは near の発音に同化し、イースト・アングリア、サウスカロライナでは square に同化します。

 pin と pen の同化 (Pin–pen merger)
/m/、/n/、/ŋ/ などの鼻音の前にくる /ɪ/ と /ɛ/ が同じ発音になる現象で、南部アメリカやオクラホマやテキサスからの移民の多い西部アメリカの英語、アフリカ系アメリカ英語にみられます。アイルランドではかってはこの傾向が多くみられましたが、現在ではコークやケリー州にとどまっています。

 pour と poor の同化 (Pour–poor merger)
poor の /ɪə/ と pour の /ɔ:/ が同化することで、南部イギリス英語ではいずれも /pɔ:/ と発音され、アメリカ英語の一部では、いずれも /poə/、/po(ɔ)r/ などと発音されます。

 pride と proud の同化 (Pride–proud merger)
アフリカ系アメリカ英語にみられる特徴で、有声音の子音の前の /aɪ/ と /aʊ/ の音が区別されず、口を大きく開けて舌の前後の位置を真ん中に置いて「アー」 (/&aumul;/) という発音になります。rod と ride の同化がみられる話者では、/ɑ/、/aɪ/、/aʊ/ が区別されないことから、pride、prod、proud や find、found、fond がそれぞれ同音になります。

 pure と poor の分裂 (Pure–poor split)
オーストラリアやニュージーランド英語でみられる特徴で、/ʊə/ の二重母音が /ʉ:.ə/ という2つの単母音からなる発音と /o:/ という長音単母音に分かれることを言います。その結果、pure、cure、tour が fewer と韻を踏むことになり、poor、moor、sure が for や paw と韻を踏む発音になります。具体的にどの単語がどの発音になるかは明確なルールはありませんが、-oor のスペルで /ʊə/ の発音の単語が /o:/ になる傾向があるようです。アメリカ英語でも一部同様の特徴がみられ、/ʊr/ が /ɝ/ と /ɔr/ に分岐し、pure、cure、lure、sure が fir と韻を踏み、poor や moor が store や for と韻を踏むことがあります。

 rod と ride の同化 (Rod–ride merger)
アフリカ系アメリカ英語にみられる特徴で、/ɑ/ と /aɪ/ の音が区別されず /rad/ のように発音されます。話者によっては、rod は /rɑd/、ride は /ra:d/ と区別することもあります。

 salary と celery の同化 (Salary–celery merger)
/l/ の前にくる /æ/ と /ɛ/ の音が同化し、その結果、salary と celery が同音になり、/sæləri/ と発音されます。ニュージーランドやオーストラリアのビクトリア州ワンガラッタで話される英語にみられます。

 square と nurse の同化 (Square–nurse merger)
/eə(r)/ と /ɜ:(r)/ が同化する傾向で、イギリスのリバプール、アイルランドのダブリン、ベルファストの英語にみられます。

 steer と stir の同化 (Steer-stir merger)
本来は別々の発音ですが、前にqu- などの複数の子音がきた場合 /j/ の音が落ちることで steer と stir がともに /stɝ/ となる特徴で、イングランドのウェストカントリーや南部アメリカ英語などにみられます。

 tower、tire、tar の同化 (Tower–tire–tar merger)
tower の三重母音 /aʊə/ が tire の三重母音 /aɪə/ と同化して二重母音 /ɑə/ となったり、tar の /ɑ:/ と同化することで、南部イギリス英語や RP、その他ミッドランドやアメリカ南部にも一部みられる傾向です。どちらかの組み合わせが一般的ですが、3つの単語すべてを同じように /tɑ:/ で発音する話者もいます。

 trap と bath の分裂 (Trap–bath split)
bath などのように /f/、/s/、/θ/、/ns/、/nt/、/nʧ/、/mpl/ の前に来る /æ/ の音が /ɑ:/ などのように長母音 (long vowel) になる傾向で、イギリス英語やオーストラリア英語などにみられます。

 wholly と holy の同化 (Wholly–holy split)
/əʊ/ が /l/ の前にきた場合、/ɑʊ/ の音に変化することで、wholly と holy の発音が異なる現象で、ロンドンの英語やエスチュアリ英語にみられます。