英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update June 26, 2016



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イギリス英語の発音

一般的な傾向と特徴

厳密な意味で「イギリス」というと「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)を指し、そのなかにはスコットランドやアイルランドも含まれます。しかし、それぞれの地域で話される英語は異なった特徴がありますので、ここでは、便宜上、「イギリス英語」というときには、ロンドンを中心とするイングランドで使われる英語という意味に定義したいと思います。

さて、イギリス英語の発音の中核となっているのが、Received Pronunciation (RP) と呼ばれる発音様式。もともとは、イギリス南東部の上流階級やオックスフォードやケンブリッジ大学で使用されていた発音をもとに定義されたもので、発音やアクセントそのものがその人の社会的ステイタスや教養を表すとされるイギリスでは、大変権威のある様式として考えられていました。BBC(英国放送協会:The British Broadcasting Corporation)でも RP が使われ、 RP で話す人は「それなりに教養がある(きちんと教育を受けた)人物である」とみなされていたのです。

近年になってからは、メディアの発達やイギリスでの社会的階級間の線引きもゆるやかになったことで、RP=エリートの発音という図式も壊れてきています。また、話し言葉は絶えず変化しつづけるもので、RP 自身も変化し、今では純粋なRPを話す人はイギリスのわずか3パーセント程度だそうです。

とはいえ、「模範的な標準イギリス発音」としての重要性を失ったわけではなく、多くの国の英語教育に採用されています。よって、ここでも RP を中心に説明を進めていきます。

イギリス英語の母音
イギリス英語の母音のイメージは以下のようになります。


 イギリス英語の二重母音
二重母音 /e(ɛ)ɪ/ /aɪ/
単語例 face price
二重母音 /ɔɪ/ /əʊ/
単語例 choice goat
二重母音 /aʊ/ /ɪə/
単語例 mouth near
二重母音 /ɛə/ /(j)ɔ(ʊə)/
単語例 square cure

●上の図には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれています。それには黒い文字で括弧書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。
●たとえば、/ɑ//ɒ/ は、イギリスでは区別される音ですが、アメリカ英語などでは区別されません。辞書の表記も /ɑ/ のみになっています。
●また、/ɜ/ も通常は /ə/ で表記されます。


イギリス英語発音特徴表
また、イギリス英語の発音の特徴を表にすると、以下のようになります。

「r」の発音 母音の特徴 子音の特徴
ノン・ロウティック (Non-rhotic)  長母音の (long vowel) の特徴
 二重母音の (diphthong) の特徴
 father と bother の同化 (Father–bother merger) の不在
 cot と caught の同化 (Cot–caught merger) の不在
 その他の同化の不在
 pour と poor の同化 (Pour–poor merger)
 tower、tire、tar の同化 (Tower–tire–tar merger)
 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger)
 trap と bath の分裂 (Trap–bath split)
 地域性について
 明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/)
 /j/ の脱落 (Yod-dropping)
 /t/ の声門破裂音化 (T-glottalization)
 wine と whine の同化 (Wine–whine merger)

音節語尾の母音の後の「r」は発音しない (non-rhotic)
まず、アメリカ英語の発音が音節の末尾に来る母音の後の「r」のスペルを発音する rhotic であるのに対して、イギリス英語では、そういった「r」のスペルは基本的には発音しないという non-rhotic (ノン・ロウティック) の発音になります。よって、father と farther、caught と court、formally と formerly などが同音となります。また、この「r」のスペルを発音しないということから、「linking R (つなぎの R)」「intrusive R (侵入の R)」といった現象が起こります。

明るい /l/ と暗い /l/ の使い分け
他の英語圏とは異なり、イギリス英語では、明るい /l/ と暗い /l/ を使い分けています。これら2種類の発音については、明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/) をご覧ください。

/j/ の脱落
イギリス英語においても /j/ の脱落 (Yod-dropping) がみられますが、アメリカ英語のように広範囲には及ばず、/s/ および /l/ の後のみです。したがって、new、duke が「ヌー」や「ドゥーク」になることはありませんが、pursuit や evolution では /j/ を発音する話者もいますが、 /j/ が脱落して「パスート」、「イヴォルーション」と発音する話者もみられます。ちなみに、suit という単語では「スート」が一般的で「シュート」と発音する傾向はほとんどみられません。

/t/ の声門破裂音化
アメリカ英語同様、/t/ の声門破裂音化 (T-glottalization) という特徴がイギリス英語でもみられ、department のように子音の前にくる /t/ の発音が影響を受けるのが一般的ですが、最近の若い世代では、pick it up や what など、母音の前や語尾の /t/ にもこの傾向がみられます。

長母音の特徴
アメリカ英語に比べて短母音と長母音( /iː/  など)の長さが明瞭です。長く伸ばすというよりは、むしろ、 /ɪi/  のように二重母音的に発音される傾向があります。

この長さの区別はあくまでも相対的なもので、その前後の発音にも影響されるため、長母音であっても、/p/、/t/ などの強い張り詰めた音(fortis)の後に来る場合は短くなる傾向があり、逆に短母音であっても、/b/、/d/ などのゆったりした弱い音(lenis)の後に来る場合は長くなる傾向があります。

二重母音の特徴
アメリカ英語では /oʊ/  と発音される二重母音が、イギリスでは /əʊ/  のように発音されます。
例)boat、coat

単語 イギリス英語 アメリカ英語
boat /bəʊt/ /boʊt/
coat /kəʊt/ /koʊt/




発音の同化と分裂

イギリス英語における発音の同化 (merger) と分裂 (split) の傾向をまとめると以下のようになります。イギリス英語では、アメリカ英語の発音ほど発音の同化がみられません。

発音の同化
 father と bother の同化の不在
アメリカ英語では /ɑ/ (father) と /ɒ/ (bother) の音を区別しない father と bother の同化 (Father–bother merger) が起こりますが、イギリス英語にはみられません。

単語 イギリス英語 アメリカ英語
father /fɑðə/ /fɑðɚ/
bother /bɒðə/ /bɑðɚ/

 cot と caught の同化の不在
アメリカ英語では /ɒ/ (cot) と /ɔ/ (caught) の音を区別しない cot と caught の同化 (Cot–caught merger) が起こりますが、イギリス英語にはみられません。

単語 イギリス英語 アメリカ英語
cot /kɒt/ /kɔt/
caught /kɔt/ /kɔt/


 その他の同化の不在
上の同化以外にも、アメリカ英語でみられる Mary、marry、merry の同化 (Mary–marry–merry merger)hurry と furry の同化 (Hurry–furry merger)mirror と nearer の同化 (Mirror–nearer merger)horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger)pin と pen の同化 (Pin–pen merger) もイギリス英語では起こりません。

 pour と poor の同化
イギリス英語では、/ʊə/  (poor) 、/oə/  (pour) の発音が同化する pour と poor の同化 (Pour–poor merger) がみられます。伝統的な RP では区別されていましたが、南部を中心に、いずれも /ɔː/ の音で発音するのが主流になってきています。

単語 イギリス英語 アメリカ英語
poor /pɔ/ /pʊɚ/
pour /pɔ/ /pɔɚ/

 tower、tire、tar の同化
一部の南部イングランド英語や RP にみられる tower、tire、tar の同化 (Tower–tire–tar merger) があります。tower が tire と同化、もしくは tar と同化する、あるいは、これら3つがすべて同じ発音になる場合もあります。

単語 イギリス英語 アメリカ英語
tower /tɑə/、 /tɑ/ /taʊɚ/
tire /tɑə/、 /tɑ/ /taɪɚ/
tar /tɑ/ /tɑɚ/

 fern、fir、fur の同化
ほとんどの国の英語に該当する特徴ですが、「r」の前の /ɛ/、/ɪ/、/ʊ/ が同化して同じ発音になる fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) がみられ、イギリス英語では /ə(ɜ)ː/ となります。

 wine と whine の同化
what や which などの「wh」の部分の発音が wine などの「w」の音と同化する wine と whine の同化 (Wine–whine merger) が一般的ですが、特別に発音の訓練を受けた話者やイングランド北東部では区別される傾向もあります。

発音の分裂
 trap と bath の分裂
アメリカ英語にはみられませんが、/æ/ の音が /f/、/s/、/θ/、/ð/、/z/、/v/、または鼻音の前にくる場合、/ɑ:/ に変化する trap と bath の分裂 (Trap–bath split) がみられます。

単語 イギリス英語 アメリカ英語
trap /træp/ /træp/
bath /bɑθ/ /bæθ/


地域性について

以上、イギリス英語の標準的発音について説明しましたが、ここで少し、地域的な違いについて見てみましょう。

その顕著な特徴として、foot と strut の分裂 (Foot–strut split) という現象が挙げられます。これは、中期英語の母音 /ʊ/  が近代英語になってどのように変化したかという地域的な傾向を言い、Northern England(北部イングランド)では、変化が見られなかったのに対して、Midlands (ミッドランド)や Southern England(南部イングランド)においては、/ʊ/ の音が /ʊ/ と cut や strut に見られる /ʌ/ に分岐しました。

strut と同じ母音を持つ sun の発音を例に挙げると、私たちが一般的に認識している発音は /sʌn/ で、南部や中部の発音ですが、北部では、昔ながらの発音のまま変化せず、foot などの /ʊ/ の発音(「スン」のような音)になっているのが特徴です。

右の地図では、その境界線を赤線で表していますが、南部においても、地域的バリエーションとして、 /sɒn//sɪn/ のような発音も見られます。

 

参考サイト

発音以外のイギリス英語の特徴については、「世界の英語」コーナーのイギリス英語をご覧ください。

また、イギリス英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
http://www.youtube.com/watch?v=52trwsDoj_8
俳優でもあるプロのボイストレーナーが、イギリス英語の発音をわかりやすく説明してくれます。

http://dictionary.cambridge.org/
検索ボックスに単語を入力し検索→Result が表示されます→そこから選択→Definition 表示→単語の右横の Show Phonetics リンクをクリック→イギリス式の発音記号が表示されます。

http://fonetiks.org/engsou2.html
母音の発音記号にカーソルを当てると、その発音を含んだ単語のイギリス式発音が聞けます。

http://www.bl.uk/learning/langlit/sounds/
地図中の人間のアイコンをクリックすることで、イングランド、スコットランド、アイルランドを含む「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」における各地域のスピーチが聞けます。



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