英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update June 26, 2016



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カナダ英語の発音

一般的な傾向と特徴

アメリカ英語とひとくくりで「北米英語」と位置づけられることもありますが、カナダは、オーストラリアやニュージーランドと同じく、イギリスとその植民地であった国家からなるイギリス連邦(The Commonwealth of Nations)のメンバーでもあるため、アメリカ英語だけではなく、イギリス英語の影響も受けているというのが特徴です。

カナダ英語の母音
カナダ英語の母音のイメージは以下のようになります。


 カナダ英語の二重母音
二重母音 /eɪ/ /ʌ(a)ɪ/
単語例 face price
二重母音 /ɔɪ/ /oʊ/
単語例 choice goat
二重母音 /ʌ(ɛ)(o)ʊ/ /ɪɚ/*
単語例 mouth near
二重母音 /ɛɚ/* /(j)ʊɚ/*
単語例 square cure
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。

●上の図には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれています。それには黒い文字で括弧書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。
●たとえば、/ɐ/ は、辞書の表記では /ʌ/ で表記されていますが、厳密にはそれよりも舌の位置が前(中央近く)に来ます。
●また、/ɝ//ɚ/ は、北アメリカ英語特有の「r」の音を伴う音を表します。これら両者の音の違いは、前者が、bird や work などのアクセントのある音を表し、後者は、dinner、water など、アクセントのない「あいまい母音」/ə/ に「r」が伴われた音になります。


カナダ英語発音特徴表
また、カナダ英語の発音の特徴を表にすると、以下のようになります。

「r」の発音 母音の特徴 子音の特徴
ロウティック (Rhotic)  カナディアン・レイジング (Canadian Raising)
 緊張した /æ/ の音 (/Æ/ tensing)
 father と bother の同化 (Father–bother merger)
 cot と caught の同化 (Cot–caught merger)
 Mary、marry、merry の同化 (Mary–marry–merry merger)
 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger)
 horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger)
 trap と bath の分裂 (Trap–bath split) の不在
 /t/ や /d/ の母音間歯茎はじき音化 (Intervocalic alveolar flapping)
 wine と whine の同化 (Wine–whine merger)

アメリカ英語、イギリス英語の影響
ここで、カナダ英語の発音の特徴をアメリカ英語とイギリス英語と比較してみましょう。

カナダ英語の特徴 アメリカ英語の影響 イギリス英語の影響
「r」のスペルを発音する rhotic である。 rhotic non-rhotic
母音間歯茎はじき音 (intervocalic alveolar flapping) がある。 あり なし
緊張した /æ/ の音 (/æ/ tensing) がある。 あり なし
father と bother の同化 (Father–bother merger) がある。 あり なし
cot と caught の同化 (Cot–caught merger) がある。 あり なし
Mary、marry、merry の同化 (Mary–marry–merry merger) がある。 あり なし
アルファベットの「Z」は /zed/と発音する。 /zi/ /zed/
「niche」の単語の発音
/niʃ/
/niʧ/ /nɪʃ/
「adult」の単語のアクセントは第一音節
/ædʌlt/
/ədʌlt/ /ædʌlt/
「lieutenant」の単語の発音
/leftenənt/
/lutenənt/ /leftenənt/
「either」の単語の発音
/aɪðə/
/iðə/ /aɪðə/
「schedule」の単語の発音
eʤul/
/skeʤul/ edjl/
「tomorrow」、「sorry」、「tomorrow」などの発音
/-ɔr-/
/-ɑr-/ /-ɔr-/
「fertile」、「fragile」、「mobile」などの発音
/-aɪl/
/-(ə)l/ /-aɪl/
「semi-」、「anti-」、「multi-」などの発音
/-i-/
/-i- (-aɪ)-/ /-i(ɪ)-/
「asphalt」の単語の発音
/æʃfɒlt/
/æsfɔlt/ /æsfɔlt/



ロウティック (Rhotic) の「r」
アメリカ英語と同じく、音節の最後、つまり母音の後に「r」の /r/ をすべて発音するという rhotic(ロウティック)アクセントです。

母音間歯茎はじき音
同じくアメリカ英語の発音のように、母音に挟まれた強勢のない音節の /d/ や /t/ が「ら行」に近い音になるという母音間歯茎はじき音化 (Intervocalic alveolar flapping) がみられます。

緊張した /æ/ の音
さらに、/æ/ の音が強調されて「エア」という二重母音に近くなる緊張した /æ/ の音 (/Æ/ tensing) の傾向もみられます。これもアメリカ英語と同じです。


発音の同化と分裂
カナダ英語における発音の同化 (merger) と分裂 (split) の傾向をまとめると以下のようになります。

発音の同化
 father と bother の同化
イギリス英語では区別されている /ɑ/ (father) と /ɒ/ (bother) の音がカナダ英語では、どちらも /ɑ/ の音で発音される father と bother の同化 (Father–bother merger) がみられます。これもアメリカ英語と同じです。

単語 カナダ英語 アメリカ英語 イギリス英語
father /fɑðɚ/ /fɑðɚ/ /fɑðə/
bother /bɑðɚ/ /bɑðɚ/ /bɒðə/

 cot と caught の同化
イギリス英語では区別されている/ɒ/ (cot) と /ɔ/ (caught) の音が区別されない cot と caught の同化 (Cot–caught merger) がみられます。カナダ英語では、どちらも /ɑ/ あるいは /ɒ/ の音で発音されます。

単語 カナダ英語 アメリカ英語 イギリス英語
cot /kɑt//kɒt/ /kɔt/ /kɒt/
caught /kɑt//kɒt/ /kɔt/ /kɔt/

 Mary、marry、merry の同化
また、アメリカ英語にもみられますが Mary、marry、merry の同化 (Mary–marry–merry merger) が挙げられます。
Marymarrymerry が同音
●hurry、furry が韻を踏む
●mirror、nearer が韻を踏む

単語 カナダ英語 アメリカ英語 イギリス英語
Mary /mɛri/ /mɛri/ /mɛəri/
marry /mɛri/ /mɛri/ /mæri/
merry /mɛri/ /mɛri/ /mɛri/

 fern、fir、fur の同化
ほとんどの国の英語に該当する特徴ですが、「r」の前の /ɛ/、/ɪ/、/ʊ/ が同化して同じ発音になる fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) がみられ、カナダ英語では /ə(ɜ)r/ となります。

 horse と hoarse の同化
また、アメリカ英語同様、母音の前の /ɔ/ や /o/ が同化する horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger) という特徴もみられます。

 wine と whine の同化
他の英語圏でも一般的な傾向になっていますが、what や which などの「wh」の部分の発音が wine などの「w」の音と同化する wine と whine の同化 (Wine–whine merger) がカナダ英語英語でもみられます。

発音の分裂
 trap と bath の分裂の不在
イギリス英語にみられる /æ/ の音が /f/、/s/、/θ/、/ð/、/z/、/v/、または鼻音の前にくる場合、/ɑ:/ に変化する trap と bath の分裂 (Trap–bath split) は、アメリカ英語同様、カナダ英語でも見られません(例:bath、dance)。

単語 カナダ英語 アメリカ英語 イギリス英語
trap /træp/ /træp/ /træp/
bath /bæθ/ /bæθ/ /bɑθ/


独自の特徴

以上、アメリカ英語およびイギリス英語と比較してみましたが、次に、カナダ英語独自の特徴について紹介したいと思います。

カナディアン・レイジング (Canadian Raising)
無声音である子音(/p/、/t/、 /k/、/s/、/ʃ/、/f/)の前に来る /aɪ/、/aʊ/ の二重母音の発音が変化するという特徴です。舌の位置が上に上がることから「レイジング」(上がる)と呼ばれます。具体的には、地域によっても異なりますが、/aɪ/ の音は /ʌɪ//ɜɪ/ の音になります。また、/aʊ/ の音は /ʌʊ//ɛʊ/、もしくは /oʊ/ のように発音されるため、about という単語が「アベウト」や「アボウト」のように聞こえる傾向があります。

二重母音 有声音の前 無声音の前
/aɪ/ /aɪ/ /ʌɪ/、/ɜɪ/
/aʊ/ /aʊ/ /ʌʊ/、/ɛʊ/、/oʊ/

カナディアン・シフト (Canadian Shift)
シフト(移行)というのは、一部の母音の発音の変化につれて他の母音も影響を受けるといった発音の移行を言います。カナダ英語の発音では、/ɒ/ (cot) と /ɔ/ (caught) の音が区別されない(いずれも /ɔ/ の音で発音)という特徴がきっかけとなった移行がみられます。つまり、/ɔ/ の音は、舌の位置を口の後ろ(後舌母音)、口の天井からより離れた低い位置(半広母音)で発音されますので、それに影響を受けて他の母音がより奥に、より下に移動(より口の開け方が大きくなる)しているのです。

影響を受けている発音は /æ/、/e/、/ɪ/ で、傾向をまとめる以下のようになります。「→移行」の欄は、この発音に近づいた音になっているという意味です。

母音 前後の位置 上下の位置(口の開き) →移行 備考
/æ/         /a/ 舌の位置がより奥に、より下に移動
/e (ɛ)/ ---     /æ/ 舌の位置がより下に移動
/ɪ/ ---     /e (ɛ)/ 舌の位置がより下に移動


こういった変化により、地域や話者によっては、bet や bit の発音がそれぞれ bat や bet の発音と同じように聞こえる場合があります。ただし、上の表の下2つの傾向については、専門家によって意見のばらつきがあるようです。


参考サイト

発音以外のカナダ英語の特徴については、「世界の英語」コーナーのカナダ英語をご覧ください。

また、カナダ英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
http://www.ic.arizona.edu/~lsp/Canadian/canphon3.html#diphthongs
Canadian Raising(カナディアン・レイジング)の発音例が聞けます。

http://fonetiks.org/engsou2ca.html
母音の発音記号にカーソルを当てると、その発音を含んだ単語のカナダ式発音が聞けます。



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