英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update March 26, 2015



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アイルランド英語の発音

一般的な傾向と特徴

アイルランドは、厳密に言うと、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)のメンバーでもある北アイルランド(Northern Ireland)と、メンバーではないアイルランド共和国(Republic of Ireland)とに分かれます。距離的に近いとはいえ、アイルランド英語の発音はイギリス英語 (RP) とは異なる特徴を持っています。また、北アイルランド英語は、むしろスコットランド英語に近いとも言われます。

ここでは、アイルランド英語として、アイルランド共和国で話されるヒベルノ・イングリッシュ(Hiberno-English)についてご紹介します。アイルランドでは、他の英語圏の国のような「その国の標準」となる英語が定められていません。たとえば、ダブリンではイギリス英語に近い特徴がみられますが、他の地域ではさまざまなバラツキがあります。ここでは、地域的なバリエーションも含めながら説明していきたいと思います。

では、さっそくアイルランド英語の発音の特徴を見てみましょう。

アイルランド英語の母音
アイルランド英語の母音のイメージは以下のようになります(地域によっても異なりますので、あくまでも目安です)。


 アイルランド英語の二重母音
二重母音 /e/* /ə(ɔ)ɪ/
単語例 face price
二重母音 /ɔ(o)ɪ/ /o(əʊ)/*
単語例 choice goat
二重母音 /a(ɛ)ʊ/ /ir/*
単語例 mouth near
二重母音 /er/* /(j)ur/*
単語例 square cure
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。

●上の図には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれています。それには黒い文字で括弧書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。
●たとえば、/ɑ//ɒ/ は、アメリカ英語などでは区別されません。辞書の表記も /ɑ/ のみになっています。


アイルランド英語発音特徴表
また、アイルランド英語の発音の特徴を表にすると、以下のようになります。

「r」の発音 母音の特徴 子音の特徴
ロウティック (Rhotic)  独特の母音の発音
 /ʌ/ と /ʊ/ の同化
 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) の不在
 horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger) の不在
 pour と poor の同化 (Pour–poor merger) の不在
 foot と goose の同化 (Foot–goose merger)
 line と loin の同化 (Line–loin merger)
 pin と pen の同化 (Pin–pen merger)
 square と nurse の同化 (Square–nurse merger)
 アルファベットの発音
 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap)
 「r」の口蓋垂音化 (Uvular trill)
 th の閉鎖音化 (Th-stopping)
 明るい /l/ の発音 (Light /l/)
 「t」の無声歯茎摩擦音化 (Voiceless alveolar fricative)
 /j/ の合体 (Yod-coalescence)
 wine と whine の同化 (Wine–whine merger) の不在

ロウティック (Rhotic) の「r」
アイルランド英語の「r」の発音もスコットランド英語やアメリカ英語と同様に、母音の後に「r」のスペルがあれば、その /r/ の音をすべて発音するという rhotic(ロウティック)アクセントですが、その /r/ の音は、アメリカ英語のような接近音 (Alveolar approximant) よりもむしろ 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap) が一般的です。話者によっては 「r」の口蓋垂音化 (Uvular trill) で発音される場合もあります。

th の閉鎖音化
舌先と歯の摩擦による /θ/ や /ð/ の発音が、歯や歯茎の裏側で止める閉鎖音として発音される th の閉鎖音化 (Th-stopping) がみられます。そのため、これらの音がそれぞれ /t/ や /d/ に近い音になり、thank you が「タンキュー」、brother が「ブラダー」のように聞えます。

明るい /l/ の発音
イギリス英語が明るい /l/ と暗い /l/ を使い分けるのに対して、アイルランド英語では、その位置にかかわらず、すべての /l/ が明るい /l/ で発音されます。これら2種類の発音については、明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/) をご覧ください。

「t」の無声歯茎摩擦音化
/t/の発音は、単語の最初に来る場合を除いて、破裂音ではなく、歯茎に舌先をつけて出す無声歯茎摩擦音として発音される傾向が一部みられます。具体的には、th の /θ/ の音を出す場合、舌先を歯の間にはさんだり歯と摩擦させたりして出しますが、その舌先を引っ込めて歯茎の裏側で摩擦させて出します。

/j/ の合体
他の英語圏でもみられますが、アイルランド英語においても /tj/ や /dj/ の子音が口蓋化することで、2つの子音が /ʧ/ や /ʤ/ に合体する /j/ の合体 (Yod-coalescence) という現象がみられます。

例)tune、dune
単語 アイルランド英語 アメリカ英語 イギリス英語
tune un/ /tjun/ /tjun/
dune un/ /djun/ /djun/

アルファベットの発音
他の国の英語に比べてアルファベットの呼び方が異なるという特徴があり、「H」は「エイチ」ではなく「ハイチ」と呼ぶのが一般的です。また、「R」は「アール」ではなく「オール」、「A」は「エイ」ではなく「アー」、「Z」は「イーゼッド」と呼ばれることもあります。




発音の同化と分裂

アイルランド英語における発音の同化 (merger) と分裂 (split) の傾向をまとめると以下のようになります。

発音の同化
 fern、fir、fur の同化の不在
スコットランド英語と同様、アイルランド英語の発音の大きな特徴として、他の英語圏では一般的な fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) がありません。そのため、herd、bird、curd の音が区別され、それぞれ「ヘRド」、「ビRド」、「カRド」といった音に聞こえます。

例)herd、bird、curd
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
herd /hɛrd/ /hə(ɜ)d/ /hɝd/
bird /bɪrd/ /bə(ɜ)d/ /bɝd/
curd /kʌrd/ /kə(ɜ)d/ /kɝd/

 horse と hoarse の同化の不在
スコットランド英語と同様、イギリス英語をのぞくほとんどの英語圏でみられる horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger) は、アイルランド英語ではみられず、それぞれが別の発音になります。

単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
horse /hɒrs/ /hɔs/ /hɔs/
hoarse /hors/ /hɔəs/ /hɔs/

 pour と poor の同化の不在
スコットランド英語と同様、イギリス英語にみられる pour と poor の同化 (Pour–poor merger) はアイルランド英語にはみられません。そのため、pour と poor の発音が区別されます。

単語 アイルランド英語 イギリス英語
poor /pur/ /pɔ/
pour /por/ /pɔ/

 wine と whine の同化の不在
他の英語圏では一般的な傾向である、what や which などの「wh」の部分の発音が wine などの「w」の音と同化する wine と whine の同化 (Wine–whine merger) がみられず、区別して発音されます。これもアイルランド英語の顕著な特徴で、スコットランド英語にもみられます。専門的な IPA 記号では /w/を上下反転させた /ʍ/ という記号を使います。

単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
wine /wa(ɑ)ɪn/ /wɑɪn/ /wɑɪn/
whine a(ɑ)ɪn/ /wɑɪn/ /wɑɪn/

 /ʌ/ と /ʊ/ の同化
ダブリンの労働者階級など、地域や話者によっては、putt の /ʌ/ が put の /ʊ/ と同化し、いずれも /ʊ/ で発音される傾向がみられます。また、put と cut などの /ʌ/ の発音は区別しながらも putt と put や look と luck などのペアは同じように発音するという傾向もあります。

例)putt、put
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
putt /pʊt/ /pʌt/ /pʌt/
put /pʊt/ /pʊt/ /pʊt/

 その他の同化
その他、地域や話者によって異なりますが、foot と goose の同化 (Foot–goose merger)line と loin の同化 (Line–loin merger)pin と pen の同化 (Pin–pen merger)square と nurse の同化 (Square–nurse merger) などの傾向もみられます。


独特の母音の発音

次に、アイルランド英語の独特な母音の発音について、イギリス英語やアメリカ英語と比較しながらみてみましょう。

 /ɑʊ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ɑʊ/ で発音される mouth などの二重母音では、舌の位置が前にくる傾向があるため、/aʊ//ɛʊ/、もしくは /æu//ɛu/ のように発音される傾向があります。

例)loud、mouth
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
loud /laʊd//lɛʊd//læud//lɛud/ /lɑʊd/ /lɑʊd/
mouth /maʊθ//mɛʊθ//mæuθ//mɛuθ/ /mɑʊθ/ /mɑʊθ/

 /oʊ(əʊ)/ の発音
アメリカ英語では /oʊ/、イギリス英語では /əʊ/ で発音される二重母音が、アイルランド英語では /oː/ で発音されます(ただしダブリン地域は例外)。
例)boat、coat
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
boat /bot/ /bəʊt/ /boʊt/
coat /kot/ /kəʊt/ /koʊt/

 /eɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /e(ɛ)ɪ/ で発音される二重母音が、アイルランド英語では /eː/ で発音されます(ただしダブリン地域は例外)。
例)face、take
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
face /fes/ /fe(ɛ)ɪs/ /feɪs/
take /tek/ /te(ɛ)ɪk/ /teɪk/

 /ɑɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ɑɪ/ で発音される二重母音が、アイルランド英語では /əɪ//ɔɪ//aɪ//ɑɪ//ʌɪ/、 など地域や話者によってさまざまな音で発音されますが、前の2つが最も一般的だと言えるでしょう。
例)price、light
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
price /prəɪs//prɔɪs//praɪs//prɑɪs//prʌɪs/ /prɑɪs/ /prɑɪs/
light /ləɪt//lɔɪt//laɪt//lɑɪt//lʌɪt/ /lɑɪt/ /lɑɪt/

 boy の /ɑɪ/ の発音
保守的な発音では、boy など「y」を語尾に含む /ɔɪ/ の発音が、/ɑːɪ/ のように発音される傾向がみられます。

例)boy
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
boy /bɑɪ/ /bɔɪ/ /bɔɪ/

 /ɔ:/ の発音
thought などの /ɔ:/ の発音が、/ɒː/ で発音される傾向がみられます。

例)thought
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
thought ɒt/ ɔt/ ɔt/

 -ea の /i:/ の発音
保守的な発音では、meat など -ea のスペルを含む /i:/ の発音が、/eː/ のように発音される傾向がみられます。

例)meat
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
meat /met/ /mit/ /mit/

 -oo- の /ʊ/ の発音
スペルに「-oo-」を含む単語で、他の国の英語では /ʊ/ で発音される音が、/uː/ で発音される傾向がみられます。

例)book
単語 アイルランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
book /buk/ /bʊk/ /bʊk/


参考サイト

発音以外のアイルランド英語の特徴については、「世界の英語」コーナーのアイルランド英語をご覧ください。

また、アイルランド英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
http://www.youtube.com/watch?v=W2PHch4IPPQ
俳優でもあるプロのボイストレーナーが、アイルランド英語の発音をわかりやすく説明してくれます。

http://fonetiks.org/engsou2ir.html
母音の発音記号にカーソルを当てると、その発音を含んだ単語のアイルランド式発音が聞けます。

http://www.bl.uk/learning/langlit/sounds/
地図中の人間のアイコンをクリックすることで、イングランド、スコットランド、アイルランドを含む「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」における各地域のスピーチが聞けます。



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