英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


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スコットランド英語の発音

一般的な傾向と特徴

スコットランドは、大ブリテン島(the island of Great Britain)の北三分の一を占める本土と北アイルズおよびヘブリーディス諸島を含む790の島々から成る国家で、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)の一部を構成しています。同じ連合王国に属しながら、スコットランドの英語はイングランド英語(このサイトでは「イギリス英語」と呼んでいます)に比べて、発音面での顕著な違いが見られます。

まず、スコットランド英語は、イギリス英語やオーストラリア英語とは異なり、「r」の発音に特徴があります。また、wine と whine の「w」と「wh」の音を区別することや、ほとんどの国や地域の英語では韻を踏む bird、herd、curd の母音が区別されるなど、他の英語にはみられない特徴があります。

では、さっそくスコットランド英語の発音の特徴を見てみましょう。

スコットランド英語の母音
スコットランド英語の母音のイメージは以下のようになります。


 スコットランド英語の二重母音
二重母音 /e/* /ae/~/əi/
単語例 face price
二重母音 /oi/ /o/*
単語例 choice goat
二重母音 /ʌu/ /ir/*
単語例 mouth near
二重母音 /er/* /(j)ur/*
単語例 square cure
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。

●上の図および表には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれています。それには黒い文字で括弧書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。
●たとえば、/ʉ/ は、辞書の表記では /uː/ の表記になりますが、実際の発音では、それより舌の位置が前に来ます。


スコットランド英語発音特徴表
また、スコットランド英語の発音の特徴を表にすると、以下のようになります。

「r」の発音 母音の特徴 子音の特徴
ロウティック (Rhotic)  独特の母音の発音
 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) の不在
 horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger) の不在
 pour と poor の同化 (Pour–poor merger) の不在
 wine と whine の同化 (Wine–whine merger) の不在
 foot と goose の同化 (Foot–goose merger)
 full と fool の同化 (Full–fool merger)
 cot と caught の同化 (Cot–caught merger)
 trap と bath の分裂 (Trap–bath split) の不在
 「r」のふるえ音化 (Alveolar trill)
 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap)
 暗い /l/ の発音 (Dark /l/)
 無声軟口蓋摩擦音 (Voiceless velar fricative)
 /j/ の合体 (Yod-coalescence)
 /t/ の声門破裂音化 (T-glottalization)
 th の非口腔音化 (Th-debuccalization)

ロウティック (Rhotic) の「r」
「r」の発音もスコットランド英語の大きな特徴と言えるでしょう。アメリカ英語と同様に、母音の後に「r」のスペルがあれば、その /r/ の音をすべて発音するという rhotic(ロウティック) アクセントですが、アメリカ英語のような接近音 (Alveolar approximant) よりもむしろ 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap)「r」のふるえ音化 (Alveolar trill) (巻き舌)で発音するのが一般的です。

また、/l/ の前にくる /r/ が強調されて、補完的な母音が挿入される傾向があるため、girl や world などの単語では音節が余分に追加されたような音に聞こえます。この母音の補完挿入は、/r/ と /m/、/r/ と /n/、/l/ と /m/ にも起こります。

暗い /l/ の発音
イギリス英語が明るい /l/ と暗い /l/ を使い分けるのに対して、スコットランド英語では、その位置にかかわらず、すべての /l/ が暗い /l/ で発音されます。これら2種類の発音については、明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/) をご覧ください。

無声軟口蓋摩擦音
他の国の英語にはみられないスコットランド英語の特徴として、無声軟口蓋摩擦音 (Voiceless velar fricative) が挙げられます。スコットランドの地名によくみられ、ネッシーでおなじみのネス湖 (Loch Ness) の loch も「ロッ」や「ロッ」ではなく無声摩擦音の「ロッ」に近い音で発音されます。

/j/ の合体
他の英語圏でもみられますが、/tj/ や /dj/ の子音が口蓋化することで、2つの子音が /ʧ/ や /ʤ/ に合体する /j/ の合体 (Yod-coalescence) という現象がみられます。

/t/ の声門破裂音化
他の英語圏でもみられますが、/t/ の声門破裂音化 (T-glottalization) という特徴がスコットランド英語でもみられ、母音の後の /t/ が影響を受けます。また、この傾向を持つ話者には、-ing の /g/ の欠落もみられます。

th の非口腔音化
上の /t/ の声門破裂音化を持つ話者にみられますが、母音間の /θ/ の音が /h/ に変化する th の非口腔音化 (Th-debuccalization) という傾向がみられます。




発音の同化と分裂

スコットランド英語における発音の同化 (merger) と分裂 (split) の傾向をまとめると以下のようになります。

発音の同化
 fern、fir、fur の同化の不在
スコットランド英語の発音の大きな特徴として、他の英語圏では一般的な fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) がありません。そのため、herd、bird、curd の音が区別され、それぞれ「ヘRド」、「ビRド」、「カRド」といった音に聞こえます。

例)herd、bird、curd
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
herd /hɛrd/ /hə(ɜ)d/ /hɝd/
bird /bɪrd/ /bə(ɜ)d/ /bɝd/
curd /kʌrd/ /kə(ɜ)d/ /kɝd/

 horse と hoarse の同化の不在
イギリス英語をのぞくほとんどの英語圏でみられる horse と hoarse の同化 (Horse–hoarse merger) は、スコットランド英語ではみられず、それぞれが別の発音になります。

単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
horse /hɔrs/ /hɔs/ /hɔs/
hoarse /hors/ /hɔəs/ /hɔs/

 pour と poor の同化の不在
イギリス英語にみられる pour と poor の同化 (Pour–poor merger) はスコットランド英語にはみられません。そのため、pour と poor の発音が区別されます。

単語 スコットランド英語 イギリス英語
poor /pur/ /pɔ/
pour /por/ /pɔ/

 wine と whine の同化の不在
他の英語圏では一般的な傾向である、what や which などの「wh」の部分の発音が wine などの「w」の音と同化する wine と whine の同化 (Wine–whine merger) がみられず、区別して発音されます。これもスコットランド英語の顕著な特徴です。専門的な IPA 記号では /w/を上下反転させた /ʍ/ という記号を使います。

単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
wine /wəi(ae)n/ /waɪn/ /waɪn/
whine əi(ae)n/ /waɪn/ /waɪn/

 foot と goose の同化
ほとんどの英語圏ではみられない傾向ですが、スコットランド英語では /ʊ/ の母音がないため、/ʊ/ (foot) と /u:/ (goose) が同化する foot と goose の同化 (Foot–goose merger) がみられます。その結果、foot と goose がいずれも /ʉ/ で発音され韻を踏みます。

単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
foot /fʉt/ /fʊt/ /fʊt/
goose /gʉs/ /gus/ /gus/

 full と fool の同化
上の foot と goose の同化の一部ですが、/l/ の前にくる /ʊ/ と /u:/ が同化する現象を full と fool の同化 (Full–fool merger) と言います。その結果、fool と full、pool と pull が /ʉ/ で発音され、それぞれ同じ発音になってしまいます。

例)pool、pull
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
pool /pʉl/ /pul/ /pul/
pull /pʉl/ /pʊl/ /pʊl/

 cot と caught の同化
イギリス英語では区別されている /ɒ/ (cot) と /ɔ/ (caught) の音が同化する cot と caught の同化 (Cot–caught merger) がみられ、どちらも /ɔ/ の音で発音されています。

単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
cot /kɔt/ /kɒt/ /kɔt/
caught /kɔt/ /kɔt/ /kɔt/

発音の分裂
 trap と bath の分裂の不在
イギリス英語では、/æ/ の音が /f/、/s/、/θ/、/ð/、/z/、/v/、または鼻音の前にくる場合、/ɑ:/ に変化するという傾向があり、これを trap と bath の分裂 (Trap–bath split) といいますが、この傾向は、アメリカ英語同様、スコットランド英語では見られず、いずれも /a/ で発音されます。

単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
trap /trap/ /træp/ /træp/
bath /baθ/ /bɑθ/ /bæθ/


独特の母音の発音

次に、スコットランド英語の独特な母音の発音について、イギリス英語やアメリカ英語と比較しながらみてみましょう。

 /ʊ/ の発音
スコットランド英語の発音には、/ʊ/ の母音がなく、「ウ」に近い音は /ʉ//u/ で発音されます。また、場合によっては「y」のように聞こえることもあります。

 /ɪ/ の発音
スコットランド英語の /ɪ/ の発音は、話者によっては /ɛ//ə/ に近い音に聞こえる場合があります。また、/w/ や /ʍ(hw)/ の後にくる場合は、 /ʌ/ に近い音になることもあります。

 /eɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /e(ɛ)ɪ/ で発音される二重母音が、スコットランド英語では /e/ で発音されます。
例)face、take
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
face /fes/ /fe(ɛ)ɪs/ /feɪs/
take /tek/ /te(ɛ)ɪk/ /teɪk/

 /aɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /aɪ/ で発音される二重母音が、スコットランド英語では /əi//ae/で発音されます。
例)price、light
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
price /prəi(ae)s/ /praɪs/ /praɪs/
light /ləi(ae)t/ /laɪt/ /laɪt/

 /aʊ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /aʊ/ で発音される二重母音が、スコットランド英語では /ʌu/ で発音されます。
例)loud、mouth
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
loud /lʌud/ /laʊd/ /laʊd/
mouth /mʌuθ/ /maʊθ/ /maʊθ/

 /ɔɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ɔɪ/ で発音される二重母音が、スコットランド英語では /oi/ で発音されます。
例)boy、chois
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
boy /boi/ /bɔɪ/ /bɔɪ/
choice ois/ ɔɪs/ ɔɪs/

 /oʊ(əʊ)/ の発音
アメリカ英語では /oʊ/、イギリス英語では /əʊ/ で発音される二重母音が、スコットランド英語では /o/ で発音されます。
例)boat、coat
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
boat /bot/ /bəʊt/ /boʊt/
coat /kot/ /kəʊt/ /koʊt/

 /ɔ:/、/ʊə/ の発音
アメリカ英語では /ɔ:/ または /ʊə/、イギリス英語では /ɔ:/ で発音される母音が、スコットランド英語では /ɔ/ または /ur/ で発音されます。
例)thought、poor
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
thought ɔt/ ɔt/ ɔt/
poor /pur/ /pɔ/ /pʊɚ/

 /ɑ/、/ɒ/ の発音
アメリカ英語では /ɑ/、イギリス英語では /ɒ/ で発音される母音が、スコットランド英語では /ɔ/ で発音されます。
例)lot、hot
単語 スコットランド英語 イギリス英語 アメリカ英語
lot /lɔt/ /lɒt/ /lɑt/
hot /hɔt/ /hɒt/ /hɑt/

 短母音と長母音
スコットランド英語では、イギリス英語のように長母音と短母音の区別はありませんが、/i/、/u/、/a/が鼻音や有声音で破裂音の前に来る場合は長めに発音されるといった傾向があります。

 その他の傾向
その他にも、それぞれの単語によって、/ð//θ/ になったり、/ŋ//n/ として発音されたりする例もあります。以下、いくつかの例を紹介しておきます。

単語 イギリス英語 スコットランド英語
December /dɪsɛmbə/ /dɛzɛmbər/
length /lɛŋθ/ /lɛnθ/
strength /strɛŋθ/ /strɛnθ/
though ou/ o/
with /wɪð/ /wɪθ/
realise /rɪəlaiz/ /riʌlaɪz/
Wednesday /wɛnzdɪ/ /wɛdnzde/


参考サイト

発音以外のスコットランド英語の特徴については、「世界の英語」コーナーのスコットランド英語をご覧ください。

また、スコットランド英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
http://www.youtube.com/watch?v=mALkCGVA2BU
俳優でもあるプロのボイストレーナーが、スコットランド英語の発音をわかりやすく説明してくれます。

http://fonetiks.org/engsou2sc.html
母音の発音記号にカーソルを当てると、その発音を含んだ単語のスコットランド式発音が聞けます。

http://www.bl.uk/learning/langlit/sounds/
地図中の人間のアイコンをクリックすることで、イングランド、スコットランド、アイルランドを含む「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」における各地域のスピーチが聞けます。



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