英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update March 26, 2015



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子音の変化について

地域差に表れる子音の変化

英語の子音の変化には、複数の子音の組み合わせからなる発音が単一の子音の発音へと省略されてしまうリダクション (reduction) と呼ばれる現象や、本来は異なる発音だったものが同化する merger、特定の音が脱落する dropping などの現象が挙げられます。ここでは、各地の英語の違いとして表れている子音の変化について紹介します。

 語尾子音の消滅 (Final-consonant deletion)
一部のアフリカ系アメリカ英語にみられる現象で、単語の語尾の子音が消滅するため bad が /bæ:/、foot が /fʊ/ のように聞こえます。

 語頭摩擦音の有声音化 (Initial-fricative-voicing)
イングランドのウェスト・カントリーにみられる傾向で、/s/、/f/、/θ/、/ʃ/ の無声摩擦音が有声音となり、それぞれ /z/、/v/、/ð/、/ʒ/ となることを言います。その結果、sing は /zɪŋ/、farm は /vɑ:rm/ のように発音されます。

 語尾の有声阻害音の無声音化 (Final-obstruent devoicing)
シンガポール英語や一部のアフリカ系アメリカ英語にみられる傾向で、息の流れを遮る有声音である /g/ や /d/ などが語尾にきた場合、それらが無声音化して /k/ や /t/ のように発音されることを言います。たとえば、big が /bɪ:k/、bad が /bæ:t/ のように聞こえます。

 子音の口蓋化 (Palatalization)
/t/、/d/、/s/ などが、次に続く音に影響されて口蓋に近い場所で発音される現象を言います。代表的な例として、後に /j/ の音が続く場合に起こる /j/ の合体 (Yod-coalescence) が挙げられます。don't you が「ドンチュー」、would you が「ウッジュー」と発音されるのも1つの例です。この傾向がさらに進むと、tree や contract など /j/ を含まない単語が「チュリー」、「コンチュラクト」のように発音される例もみられます。

 無声軟口蓋摩擦音 (Voiceless velar fricative)
スコットランド英語にみられる現象で、舌の奥の部分と軟口蓋(口蓋の奥の柔らかい部分)で調音される無声の摩擦音を言います。スコットランドのゲール語で湖を意味する loch の ch の発音がこれに該当し、発音記号 /x/ で表記されます。

 子音の長音化 (Gemination)
consonant elongation とも言い、特定の子音が他の子音よりも長く発音される傾向を言います。英語ではアクセントなどの影響で特定の子音が長く発音されることはありませんが、破裂音、摩擦音、鼻音の同じ音が2つ続いた場合、その音が長くなる傾向があります。また、ウェールズ英語では、それらの音が2つ続くかどうかにかかわらず、母音にはさまれた子音が長音化する傾向がみられます。

 ban と van の同化 (Ban–van merger)
カリブ諸島やメキシコ系英語の一部にみられる現象で、/v/ が /b/ と同じ発音になるため、ban と van が同音になります。

 h の脱落 (H-dropping)
ヨークシャーやコックニー英語にみられる特徴で、house や heat など「h」で始まる単語の /h/ が脱落することを言います。それ以外の英語においても、he、him、her、his、have といった強勢のない語においては /h/ の脱落が一般的にみられます。また、代名詞の it は古英語の hit が変化したものですが、アメリカ南部やスコットランド英語の一部では、今でも強調形としての hit が残っているようです。

 /j/ の脱落 (Yod-dropping)
Yod とはヘブライ語のアルファベットのことで /j/ を表すことからこの名称がつけられていますが、/u:/ の前にくる /j/ の音が脱落する現象で、ほとんどの英語においてみられます。特に顕著なのは、chew、juice、yew など /ʧ/、/ʤ/、/j/ の後や rude など /r/、または blue など「l」を含む子音群の後にくる場合で、chews と choose、yew と you、threw と through が同音になります。ただしウェールズ英語では、これらをそれぞれ /ɪu/ と /u:/ で区別しています。さらに、 suit や enthusiasm のように /s/、/l/、/z/、/θ/ の後の脱落も多くの英語でみられます。アメリカ英語ではその範囲がさらに広がり、tune、dew、new などの /t/、/d/、/n/ の後でも脱落が起こり、「トゥーン」、「ドゥー」、「ヌー」に近い発音になる傾向もあります。

 /j/ の合体 (Yod-coalescence)
子音の口蓋化 (palatalization) の1つの現象で、/dj/、/tj/、/sj/、/zj/ の発音がそれぞれ /ʤ/、/ʧ/、/ʃ/、/ʒ/ のように発音されます。たとえば educate が「エディケイト」ではなく「エジュケイト」のように発音されます。主に強勢のない音節において起こる現象ですが、オーストラリア、イギリスのコックニーやエスチュアリ英語、アイルランド英語の一部、ニュージーランドやスコットランド英語、アジアの英語においては、tune や dune などの強勢のある音節でもみられ、「テューン」が「チューン」、「デューン」が「ジューン」のようになります。

 /j/ の「r」化 (Yod-rhotacization)
南部アフリカ系アメリカ英語にみられる特徴で、/j/ が /r/ のように発音されるため、beautiful が「ブルーティフル」、music が「ムルージック」のように聞こえます。



 明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/)
厳密には /l/ の音には、明るい /l/ (light /l/) と暗い /l/ (dark /l/) があり、light や listen などの語頭や only など子音の後に続く場合の /l/ を明るい /l/ で、それに対して、full や pool など母音の後に続く /l/ を暗い /l/ で発音するのが基本です。


両者の違いは舌の盛り上がり方にあります。「明るい」ほうは舌の後部の盛り上がりがないため軽い音になりますが、「暗い」ほうは、舌の後部が盛り上がり軟口蓋に接近するため、こもった音になります。舌先は「明るい」ほうは歯茎の裏側に来ますが、「暗い」ほうは歯の裏側あたりに来ます。イギリス英語では両者を区別していますが、アメリカ英語やオーストラリア英語、スコットランド英語では、その位置に関係なく、すべて暗い /l/ で発音し、アイルランド英語では明るい /l/ で発音される傾向があります。

 「l」の母音化 (L-vocalization)
語尾にくる /l/ の音が母音化し、/w/、/o/、/ʊ/ などに近い音で発音される現象です。その前にくる母音が同化する例が多くみられ、real、reel、rill などがいずれも /rɪw/ のように発音されます。コックニーやエスチュアリ英語、ニュージーランド英語、あるいはアメリカのニューヨーク、ピッツバーグ、フィラデルフィア英語でみられます。ただし、次に続く単語が母音で始まり、続けて発音される場合にはこの現象は起こりません。

 「l」の脱落 (L-dropping)
上の「l」の母音化とも関連して /l/ の音が脱落する現象で、アフリカ系アメリカ英語やサンフランシスコのアジア系アメリカ英語などにみられます。

 pleasure と pressure の同化 (Pleasure–pressure merger)
ホンコン英語にみられる特徴で、/ʃ/ と /ʒ/ がいずれも /ʃ/ で発音されるため、pleasure と pressure が韻を踏むことになります。

 let と net の同化 (Let–net merger)
ホンコン英語にみられる特徴で、音節の最初にくる /l/ と /n/ の発音が区別されないため、let と net などが同音になります。

 pit と fit の同化 (Pit–fit merger)
フィリピン英語にみられる現象で、/f/ と /p/ がいずれも /p/ で発音されるため、pit と fit が同音になります。

 「r」の歯茎ふるえ音化 (Alveolar trill)
スコットランド英語によくみられる特徴で、/r/ の音を舌をふるわせて出す巻き舌 (R-rolling) で発音します。

 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap)
スコットランド英語やアイルランド英語にみられる /r/ の発音方法で、歯茎に舌をたたきつけて出します。もともとはイングランドの発音法であり、今でもヨークシャー北部の英語やリバプールの若い話者たちの間でみられます。

 「r」の口蓋垂音化 (Uvular trill)
/r/ の発音方法で、口蓋垂をふるわせて発音します。フランス語などで使われますが、英語ではアイルランド英語の一部をのぞいてほとんど使いません。

 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap)
スコットランド英語やアイルランド英語にみられる /r/ の発音方法で、歯茎に舌をたたきつけて出します。もともとはイングランドの発音法であり、今でもヨークシャー北部の英語やリバプールの若い話者たちの間でみられます。

 rip と lip の同化 (Rip–lip merger)
シンガポール英語にみられる傾向で、/r/ と /l/ が区別されないため、rip と lip が同音になります。

 s 子音群 の音位転換 (S-cluster metathesis)
アフリカ系アメリカ英語にみられる現象で、-sp など /s/ ではじまる子音群からなる語尾において、子音の位置が入れ替わってしまうことを言います。その結果、ask が /æks/、grasp が /ɡræps/ となります。それ以外にも、ask がジャマイカ英語で /a:ks/ となり、ロンドン方言の /ɑ:ks/ として逆輸入されています。こういった例は古英語にもみられ、当時は許容されていたようです。

 seal と zeal の同化 (Seal–zeal merger)
ホンコン英語にみられる特徴で、/s/ と /z/ がいずれも /s/ で発音されるため、seal と zeal、racing と razing はそれぞれ同じ音になります。

 scream と stream の同化 (Scream–stream merger)
一部のアフリカ系アメリカ英語にみられる現象で、/str/ と /skr/ がいずれも /skr/ として発音されるため、scream と stream が同音になります。

 ship と chip の同化 (Ship–chip merger)
/ʃ/ と /ʧ/ を区別しないため ship と chip が同音となる特徴で、南アフリカのズールー語話者の英語やアメリカのメキシコ系英語にみられます。

 sip と ship の同化 (Sip–ship merger)
アジアやアフリカの英語にみられる現象で、/ʃ/ と /s/ の発音を区別しないため、sip と ship、sue と shoe がそれぞれ同音になります。

 singer と finger の分裂 (Singer–finger split)
Ng-coalescence (Ng の合体)とも呼ばれ、/ŋ/ の後に続く語尾の /ɡ/ は発音しないという16世紀末に起こった変化にともない、singer と finger が韻を踏まなくなった現象を言います。ほとんどの英語においてみられる傾向ですが、イングランド北部やミッドランドなどの地域やアメリカのニューヨークの英語などではみられません。また、スコットランド西部やウルスターの英語の一部では、この変化が語尾の /ɡ/ 以外にも広がり、すべて /ŋ/ のみの発音になっている傾向もみられます。

 /t/ の声門破裂音化 (T-glottalization)
/t/ の音が声門への息の流れを止めるようにして発音される現象を言い、button が「ボッン」、department が「ディパーッメント」など、その部分だけ音が落ちるように聞こえます。アメリカ英語をはじめ、イギリスのコックニー英語、南部イングランド、最近では RP でもその傾向がみられます。

 「t」の無声歯茎摩擦音化 (Voiceless alveolar fricative)
単語の頭に来る場合をのぞいて、/t/ が破裂音ではなく無声歯茎摩擦音になります。英語ではアイルランド英語の一部をのぞいてほとんど使いません。詳しくはアイルランド英語の発音「「t」の無声歯茎摩擦音化」をご覧ください。

 /t/ や /d/ の母音間歯茎はじき音化 (Intervocalic alveolar flapping)
/t/ や /d/ の音を歯茎はじき音として発音する傾向で、アメリカ英語やカナダ英語、オーストラリア英語にみられます。詳しくは、アメリカ英語の発音「母音間歯茎はじき音」の説明をご覧ください。

 th の非口腔音化 (Th-debuccalization)
スコットランド英語特有の傾向で、語頭や母音にはさまれた /θ/ の発音が、無声歯摩擦音から無声声門摩擦音である /h/ に変化することを言います。

 th の前面化 (Th-fronting)
th のスペルで表される /θ/ や /ð/ の発音は舌先と歯の摩擦による発音ですが、これをそれぞれ /f/ や /v/ のように発音する傾向を言います。その結果、three は free となり、bathe が bave のように聞こえます。イギリスのコックニー英語やエスチュアリ英語、ウェスト・カントリー英語の一部、そしてアフリカ系アメリカ人の方言にもみられます。

 th の閉鎖音化 (Th-stopping)
th のスペルで表される /θ/ や /ð/ の発音は舌先と歯の摩擦による発音ですが、これを歯や歯茎の裏側で止めるように閉鎖音として出します。そのため、これらの音がそれぞれ /t/ や /d/ に近い音になり、thank you が「タンキュー」、brother が「ブラダー」のように聞えます(/t/ や /d/ になるのではありません)。アイルランド英語やニューヨーク英語の一部、あるいはインド英語にもこの傾向がみられます。また、カリブ諸島やナイジェリアやリベリアの英語では、/t/ や /d/ と全く同一に発音されます。

 th の歯茎摩擦音化 (Th-alveolarization)
舌先と歯の摩擦による発音である /θ/ や /ð/ の発音をそれぞれ /z/ や /s/ で発音する現象のことです。アフリカの英語やフランス語やドイツ語を母国語とする人たちの英語にもみられますが、th の発音は英語以外の言語ではあまり存在しないことが原因のようです。

 vest と west の同化 (Vest–west merger)
ホンコン英語にみられる特徴で、語頭にくる /v/ と /w/ がいずれも /w/ で発音される現象を言います。また、/v/ が語頭以外の位置にくる場合は、語によって /f/ か /w/ に変化します。例として、even、leaving、rover では /f/ になり、advice、event、revoke では /w/ になるようです。

 wine と whine の同化 (Wine–whine merger)
たとえば、英和辞典で which を引くと、発音の欄に /(h)wɪʧ/ と括弧書きで「h」が表記されていたりしますが、/hw/ の音が /w/ に省略される特徴を言います。その結果、wine と whine、 weather と whether、wear と where、witch と which などがそれぞれ同じ発音になります。イングランドをはじめウェールズやオーストラリア、ニュージーランド、アメリカやカナダの大部分でもこの傾向が一般的ですが、スコットランドやアイルランド、そして一部のアメリカ、カナダの英語では、この傾向はみられません。イングランドでも18世紀までは容認されませんでしたが、現在では少数の話者を除いて RP でも2つの発音が同化しています。

 wing と ring の同化 (Wing–ring merger)
ホンコン英語にみられる特徴で、語頭にくる /w/ と /r/ がいずれも /w/ で発音されるため、wing と ring などが同音になります。

 zip と gyp の同化 (Zip–gyp merger)
インド英語にみられる特徴で、/z/ と /ʤ/ が区別されないため、zip と gyp がともに /ʤɪp/ と発音され、raze が rage のように聞こえます。