英語の発音ってむずかしそう。辞書に書かれている訳のわからない記号もさっぱり… 学校でもとくに教えてくれるわけでもないし…。そんなあなたも、この機会にちょっとだけ頑張って、英語の発音をマスターしてみましょう。


Last update March 26, 2015



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ウェールズ英語の発音

一般的な傾向と特徴

ウェールズ (Wales) はグレートブリテン島の西側に位置する国であり、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)のメンバーです。アイルランド英語同様、ウェールズ英語の発音には「標準英語」というものが存在せず、地域ごとに異なります。たとえば、ウェールズの首都であるカーディフ (Cardiff) の英語はウェールズの他の地域とは異なり、むしろイギリス英語(RP)に近いのが特徴です。当然のことながら、イングランドとの国境に近い東部ではイングランドで話されている英語の影響が強く、西部に行くとその影響が弱まり、ウェールズ独特の特徴がより強くなります。

このウェールズ独特の特徴とは18世紀ごろまで母国語として話されていたウェールズ語(現在でも英語と併用して使われています)の影響であり、音節の末尾に来る母音の後の「r」のスペルを発音するロウティック (Rhotic) の発音をはじめ、ウェールズ語にない /z/ などの発音の不在、二重母音が区切って発音される、母音の発音において舌の位置が前にくる傾向があるといった特徴が挙げられます。

ウェールズ英語の母音
ウェールズ英語の母音のイメージは以下のようになります(地域によっても異なりますので、あくまでも目安です)。


 ウェールズ英語の二重母音
二重母音 /ei(e)/* /ai/
単語例 face price
二重母音 /ɒi/ /o(ou)/*
単語例 choice goat
二重母音 /au/ /ɪə/
単語例 mouth near
二重母音 /* /(j)ʊə/
単語例 square cure
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。

●上の図には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれています。それには黒い文字で括弧書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。
●たとえば、/ɑ//ɒ/ は、アメリカ英語などでは区別されません。辞書の表記も /ɑ/ のみになっています。
●また、/ɜ/ も通常は /ə/ で表記されます。


ウェールズ英語発音特徴表
また、ウェールズ英語の発音の特徴を表にすると、以下のようになります。

「r」の発音 母音の特徴 子音の特徴
ノン・ロウティック (Non-rhotic)、ロウティック (Rhotic)  独特の単母音の発音
 独特の二重母音の発音
 fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger)
 pour と poor の同化 (Pour–poor merger) の不在
 trap と bath の分裂 (Trap–bath split) の不在
 「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap)
 /z/ や /ʤ/ の発音
 破裂音の帯気化
 子音の長音化 (Gemination)
 明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/)
 wine と whine の同化 (Wine-whine merger)

音節語尾の母音の後の「r」
ウェールズ英語の「r」の発音は、基本的にはイギリス英語と同様に、音節の末尾に来る母音の後の「r」のスペルを発音しない non-rhotic (ノン・ロウティック) アクセントです。しかし、北部などのウェールズ語の影響が強い地域では、「r」のスペルを発音する rhotic (ロウティック)の発音もみられます。

また、/r/ の発音にも特徴があり、アメリカ英語やイギリス英語のような接近音 (Alveolar approximant) ではなく、「r」の歯茎はじき音化 (Alveolar flap) が一般的です。

/z/ や /ʤ/ の発音
英語とともに今でも話されているウェールズ語には、有声音である /z/ や /ʤ/ の発音がないため、ウェールズ語の影響が強い北部では、無声音である /s/ や /ʧ/ として発音される傾向があります。そのため、seal と zeal、sink と zinc、joke と choke、rich と ridge などのペアがそれぞれ同音になります。ただし、カーディフなどの都市部やその他イングランドの影響が強い地域ではこの限りではありません。

破裂音の帯気化
これもウェールズ語の影響ですが、 /t/ や /d/ の破裂音が強い呼気で発音され、息の流れが強くなる傾向があります。したがって、破裂音でありながら軽い摩擦音のような発音になります。

子音の長音化
他の英語圏でも midday、roommate など破裂音、摩擦音、鼻音の同じ音が2つ続いた場合にみられる子音の長音化 (Gemination) が、ウェールズ英語では、それらの音が2つ続くかどうかにかかわらず、母音にはさまれた子音が長音化する傾向がみられます。

例)money、butter
単語 ウェールズ英語 アメリカ英語 イギリス英語
money /mɜn.ni/ /mʌni/ /mʌni/
butter /bɜt.tə/ /bʌtɚ/ /bʌtə/

明るい /l/ と暗い /l/ の使い分け
イギリス英語と同じように、ウェールズ英語でも明るい /l/ と暗い /l/ を使い分けています。これら2種類の発音については、明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/) をご覧ください。




発音の同化と分裂

ウェールズ英語における発音の同化 (merger) と分裂 (split) の傾向をまとめると以下のようになります。

発音の同化
 fern、fir、fur の同化
ほとんどの国の英語に該当する特徴ですが、「r」の前の /ɛ/、/ɪ/、/ʊ/ が同化して同じ発音になる fern、fir、fur の同化 (Fern–fir–fur merger) がみられ、ウェールズ英語では /ɜː/ となります。また、カーディフなどの地域では、口の開け方がより小さく、舌の位置がより前方にくる /øː/ の音になる傾向があります。

 pour と poor の同化の不在
スコットランド英語やアイルランド英語と同様に、イギリス英語にみられる pour と poor の同化 (Pour–poor merger) はウェールズ英語にはみられません。そのため、pour と poor の発音が区別されます。

単語 ウェールズ英語 イギリス英語
poor /pʊə/ /pɔ/
pour /po/ /pɔ/

 wine と whine の同化
他の英語圏でも一般的な傾向になっていますが、what や which などの「wh」の部分の発音が wine などの「w」の音と同化する wine と whine の同化 (Wine–whine merger) がウェールズ英語でもみられます。

発音の分裂
 trap と bath の分裂の不在
イギリス英語では /æ/ の音が /f/、/s/、/θ/、/ð/、/z/、/v/、または鼻音の前にくる場合、/ɑ:/ に変化する trap と bath の分裂 (Trap–bath split) がみられますが、ウェールズ英語では、いずれも /a//aː/、あるいは /ɛ/ で発音されます。

単語 ウェールズ英語 イギリス英語
trap /trap//trap//trɛp/ /træp/
bath /baθ//baθ//bɛθ/ /bɑθ/


独特の単母音の発音

次に、ウェールズ英語の独特な母音の発音について、イギリス英語やアメリカ英語と比較しながらみてみましょう。

 /æ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /æ/ と発音される母音が、ウェールズ英語では、舌の前後の位置がやや後方に引くことから /a//aː/、あるいは /ɛ/ で発音される傾向があります。
例)cat、trap
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
cat /kat//kat//kɛt/ /kæt/ /kæt/
trap /trap//trap//trɛp/ /træp/ /træp/

 /ʌ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /ʌ/ で発音される母音が、ウェールズ英語では /ɜ//ʊ/、あるいは /ə/ で発音される傾向があります。
例)bus、cup
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
bus /bɜs/、 /bʊs/、 /bəs/ /bʌs/ /bʌs/
cup /kɜp/、 /kʊp/、 /kəp/ /kʌp/ /kʌp/

 語尾の /i/ の発音
happy などの語尾の「y」の発音が、ウェールズ英語では /iː/ で発音される傾向がみられます。

例)happy
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
happy /ha(a)(ɛ)pi/ /hæpi/ /hæpi/


独特の二重母音の発音
冒頭に紹介している母音や二重母音とは異なりますが、地域によっては、ウェールズ語の影響による単母音化や音の切り離しが起こります。これは、ウェールズ語の母音が純粋な単一母音として発音されることから、2つの音を一気につないで発音する習慣がないからだと言えます。以下、いくつかの例を挙げてみます。

 /eɪ/ の発音
アメリカ英語、イギリス英語では /e(ɛ)ɪ/ で発音される二重母音が、ウェールズ英語では /eː//ei/ で発音される傾向があります。この使い分けは、スペルが place などの「~a~e」のパターンの単語や「ea」や「a」に該当する /eɪ/ は前者の発音となり、play や sail など「ai」、「ay」、「ei」、「ey」に該当する /eɪ/ は後者の発音になります。
例)place、play
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
place /ples/ /ple(ɛ)ɪs/ /pleɪs/
play /pleis/ /ple(ɛ)ɪs/ /pleɪs/

 /o(ə)ʊ/ の発音
アメリカ英語では /oʊ/ 、イギリス英語では /əʊ/ で発音される二重母音が、ウェールズ英語では /oː//ou/ で発音される傾向があります。この使い分けは、soup、bone、toe などの単語やスペルが「~o~e」のパターンの単語や「o」や「oa」、「oe」、「ore」、「oor」、「oar」、「our」に該当する /o(ə)ʊ/ は前者の発音となり、blow など「ow」、blow など「l」の前にくる「o」に該当する母音は後者の発音になります。
例)no、soul
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
no /no/ /nəʊ/ /noʊ/
soul /soul/ /səʊl/ /soʊl/

 /ɛɚ(ə)/ の発音
アメリカ英語では /ɛɚ/ 、イギリス英語では /ɛə/ で発音される発音が、ウェールズ英語では /ɛː/ で発音される地域があります。

例)square
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
square /skɛ/ /skɛə/ /skɛɚ/

 /ɪɚ(ə)/、/ʊɚ(ə)/ の発音
アメリカ英語ではそれぞれ /ɪɚ/、/ʊɚ/、イギリス英語では /ɪə/、 /ɔ:(ʊə)/ で発音される二重母音が、ウェールズ英語では2つの単母音のように分割して発音される傾向があります。

例)beer、poor
単語 ウェールズ英語 イギリス英語 アメリカ英語
beer /bɪə/ /bɪə/ /bɪɚ/
poor /puə/ /pɔ(ʊə)/ /pʊɚ/


参考サイト

発音以外のウェールズ英語の特徴については、「世界の英語」コーナーのウェールズ英語をご覧ください。

また、ウェールズ英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
http://www.youtube.com/watch?v=cq-mEejECcU
俳優でもあるプロのボイストレーナーが、ウェールズ英語の発音をわかりやすく説明してくれます。

http://fonetiks.org/engsou2we.html
母音の発音記号にカーソルを当てると、その発音を含んだ単語のウェールズ式発音が聞けます。

http://www.bl.uk/learning/langlit/sounds/
地図中の人間のアイコンをクリックすることで、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズを含む「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」における各地域のスピーチが聞けます。



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