チョーサーの英語

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 Geoffrey Chaucer  チョーサー (1343−1400)

中英語期を代表する文筆家であるチョーサーの英語を見てみましょう。
下記の一節は、彼の『カンタベリー物語』 (The Canterbury Tales) (1387−95)の冒頭の部分で大変有名な一節です。

『カンタベリー物語』はカンタベリー大聖堂(当時はまだカトリック)への巡礼の途中に巡礼者がそれぞれに話をしながら旅をしようという設定で書かれた英国初の短編集で、政治、教会、ロマンス、世間話などさまざまな題材が盛り込まれた物語です。チョーサー自身がイタリアに行った時に読んだ「デカメロン」や「アラビアンナイト」がヒントになっているといわれています。

 (C) Eigo-Zakkaya

下記に、チョーサーの文章を紹介しています。また、この文章の朗読が当時の発音で聞けます。
下のサイトにアクセスしてください。
http://www.unc.edu/depts/chaucer/zatta/prol.html

また、チョーサーや『カンタベリー物語』について、さらに詳しく知りたい方は以下のサイトにアクセスしてください(ただし英語です)。
http://www.unc.edu/depts/chaucer/zatta/Zatta_Index.html
http://www.librarius.com/canttran/gptrfs.htm



Whan that Aprille with hise shoures soote
     When April with its sweet showers

The droghte of March hath perced to the roote
     has pierced the drought of March to the root

And bathed euery veyne in swich licour
     and bathed every vein in such liquid

Of which vertu engendred is the flour
     from which strength the flower is engendered;

Whan Zephirus eek with his sweete breeth
     When Zephirus also with his sweet breath

Inspired hath in euery holt and heeth
     has breathed upon in every woodland and heath

The tendre croppes and the yonge sonne
     the tender shoots, and the young sun

Hath in the Ram his half cours yronne
     has run his half-course in the Ram,

And smale fowles maken melodye
     and small birds make melody

That slepen al the nyght with open eye
     that sleep all night with open eyes

So priketh hem nature in hir corages
     (so nature pricks them in their hearts);

Thanne longen folk to goon on pilgrimages...
     then long folk to go on pilgrimages...


少し注意深く見ると、現代の英語に非常に近いことがわかりますね。対比表を作ってみると以下のようになります。
Middle English Modern English
Whan When
Aprille April
hise its
shoures Note 1) showers
soote, sweete sweet
hath Note 2) has
euery Note 3) every
veyne vein
swich such
vertu strength
flouNote 1) flower
his his
breeth breath
cours course
yonge young
sonne sun
yronne run
smale small
fowles Note 4) birds
maken Note 5) make
melodye melody
slepen Note 5) sleep
al all
nyght night
hem Note 6) them
hir Note 6) their
corages heart
Thanne then
longen Note 5) long
goon go


Note 1)
shoures に見られる u のスペルですが、もともとは、これが二つ重なって w に発展していきます。そこから「ダブル・ユー (u)」と呼ばれています。

Note 2)
動詞 have の三人称単数形。北部、ミッドランド地方北部では -s であり、現代英語に引き継がれています。

Note 3)
u と v はかっては混同して使用されており、現代のように区別がなされていなかったようです。ちなみにスペイン語などでも、usted という代名詞(ていねいな「あなた」)を略式表記するのに Ud.Vd. の二種類が現存していますから、この傾向はアルファベット全般に共通することだったと言えます。

Note 4)
現代英語では fowl 「家禽」という単語に引き継がれていますが、当時は「鳥、小鳥」の意味。ちなみに現代語の bird に該当する語は古英語では「雛(ヒナ)」の意味だったようです。

Note 5)
-en は複数名詞の動詞の語尾変化です。ちなみに北部では -es 、イーストミッドランド地方や南部では -eth というふうに多様性がありました。

Note 6)
人称代名詞については地域などによってバリエーションがあったようです。とくに複数形の they ですが、まだ印刷がじゅうぶん普及する前のことでもあり、theytheirthem という形は主に北部、西部ミッドランド地方に見られ、hiherehem という形は南部のほうに見られたということです。