古英語の特徴−ルーン文字

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ルーン文字
初期の古英語はルーン文字 (Runic alphabet) と呼ばれるアルファベットで表記されていたようです。この文字はスカンジナビアなどの北欧、現在のドイツあたりの地域およびブリティッシュ島などで使用されており、碑文に使用された例が多く見られ4000点ほど現存しています。その起源は2世紀頃までさかのぼり、中央・東ヨーロッパのゲルマン民族の間で使われるようになりました。ルーン文字のアルファベットは、ギリシア文字、古代ローマ以前にイタリア西部にあったエトルリア国の文字などがベースになっていると言われています。

ルーン文字はそれぞれの文字が意味を持つ「表意文字」で、左右どちらからも書くことができたようです。古英語に使用されたアルファベットは、英語固有の発音に対応するため文字を追加するなど、実際9世紀にノーサンブリアで発見された「発展型」では31文字が使用されています。5世紀〜6世紀頃のアングロ・サクソンによる使用例はもっぱら武器や宝石、記念碑などが多く、メッセージとしても作者の名前を記すなどの簡単な記述がほとんどです。

そもそも語源である "runes" という言葉は "secret" (秘密)を意味し、それぞれの文字に神秘的な意味を持たせていることから、司祭による儀式などの際に使用されており、ルーン文字による記述がなされる場合は、秘密の情報を記すという意味があり、それぞれの文字が不思議な力を持っていたと信じられていたようです。実際スカンジナビア地方では19世紀頃までこのルーン文字が使用されていたということです。

イギリスで発見された最も有名な碑文はルースウェル・クロス (Ruthwell Cross) と呼ばれる十字架で5メートルくらいの高さがあります。8世紀頃に作られたものであるとされ、当時のノーサンブリア地方の方言で記されています。また、ルーン文字で記述された古英語の遺物として最も古いものは、1982年にサッフォークというところで発見された金のメダリヨンで450年〜480年頃のものであるとされています。

ルーン文字のアルファベットには、時代や使われた地域によっていくつかの種類があります。以下はその主な例です。

Elder Futhark (エルダー・フサーク)
2世紀から8世紀頃にかけて使用され、ルーン文字のうち最も古いタイプ。名前の Futhark とは、ルーン・アルファベットの最初の6文字 (f,u,th,a,r,k) (下の文字例を参照)をとってこう呼ばれます。ゲルマン人によって使われていた原始ゲルマン語、原始ノルド語などを表記するのに用いられ、24文字のアルファベットから構成されます。この Elder Futhark が母体となり、Anglo-Saxon Futhorc Younger Futhark などのバージョンが生まれました。

Gothic Runes (ゴート語のルーン文字)
ゲルマン民族の一派であるゴート族 (Goths) の言語であるゴート語 (Gothic) を表記するために使われていたルーン・アルファベット(Elder Futhark)のこと。ゴート族はキリスト教化が早く、聖書を翻訳するという目的からゴート語のアルファベットが考案され、4世紀ころまでにはルーン文字は使用されなくなりました。また、もともとルーン文字を発明したのはゴート族だという説もあるようですが、ルーン文字で書かれた歴史的資料が少ないため証明することはできません。

Anglo-Saxon Futhorc (アングロサクソンのフサーク)
アングロサクソン人によって使われていたルーン・アルファベットを言い、24文字からなる Elder Futhark をベースに文字を追加、最大では33文字までに拡張されたとされています。5世紀以降から使用されるようになり、古英語や古フリジア語 (Old Frisian) を表記するのに使われました。しかし、7世紀にキリスト教化が始まると、次第にラテン語のアルファベットに置き換えられるようになります。初期の頃は、ラテン語にはない þ や  などの文字にはそのままルーン文字を使っていましたが、それも、1066年のノルマン人の征服を機に別の表記へ移行されていきます。(→中期英語の特徴−スペルと発音の変化

Younger Futhark (ヤンガー・フサーク)
スカンジナビア・ルーン (Scandinavian runes) とも呼ばれる Younger Futhark は、母体となった Elder Futhark から長い年月をかけて変遷したアルファベットで、文字数も16文字に減っています。バイキングの台頭が始まる800年頃から、ノルウェイ、スウェーデン、デンマークにおいて使用されるようになりました。この頃から、原始ノルド語に音韻のバリエーションが増え、古ノルド語へと移行していきます。 Elder Futhark が、特権的な「秘密の文字」であったのに対して、このアルファベットは広く一般に普及しました。しかし、スカンジナビア地域のキリスト教化により、1200年頃までにはラテンアルファベットへ置き換えられてしまいます。

以下にルーン文字 (Elder Futhark) のイメージを紹介しておきます。アルファベットの名前(カタカナ表記)は正確でない箇所もあるかと思いますので、あくまでも目安ということでご理解ください。

ルーン文字の例

ルーン文字
対応するアルファベット f u þ (th) a r k g w
名前
(カタカナ表記は目安)
Fehu
ヘフー
Üruz
ウルーズ
Þurisaz
スリソーズ
Ansuz
オンスーズ
Raidō
ライゾー
Kenaz
ケナーズ
Gebō
ゲボー
Wunjō
ウンヨー
発音 [f] [u(:)] [θ] [a] [r] [k] [g] [w]
Meaning
意味
money, wealth, cattle
富、家畜
aurochs
オーロックス:牛の一種
giant, monster
巨人、化け物
Æsir
神の名前
ride, journey
乗ること、旅行
torch
明かり
gift
贈り物
joy
喜び

ルーン文字
対応するアルファベット h n i j ï p z s
名前
(カタカナ表記は目安)
Hagalaz
ハガローズ
Naudiz
ナウディーズ
Isa
イソー
Jēra
ヤーロー
Eiwhaz
アイウォーズ
Perþō
パスロー
Algiz
オルイーズ
Sōwilō
ソウィロー
発音 [h] [n] [i(:)] [j] [æ:] [p] [z] [s]
Meaning
意味
hail
あられ、ひょう
need
必要
ice
year, harvest
年、収穫
yew tree
イチイの木

意味不明
elk (?)
オオシカ(?)
sun
太陽

ルーン文字
対応するアルファベット t b e m l ng d o
名前
(カタカナ表記は目安)
Tiwaz
ティウォーズ
Berkano
ベアコーノ
Ehwaz
アイウォーズ
Mannaz
モンノーズ
Laguz
ログース
Ingwaz
イングォーズ
Dagaz
ドゴーズ
Oþala
オソロー
発音 [t] [b] [e(:)] [m] [l]  ] [ð] [o(:)]
Meaning
意味
Tiw
空の神の名
birch
樺の木
horse
man
人間
water
Ing
大地の神の名
day
hereditary land
先祖から受け継いだ土地


ルーン文字について、詳しく知りたい場合は、下記のサイトにアクセスしてください(ただし英語です)。

http://en.wikipedia.org/wiki/Rune
http://www.acondia.com/fonts/index.html
http://www.sunnyway.com/runes/meanings.html
http://www.omniglot.com/writing/runic.htm


※これまでrunic alphabetの訳語として「ルーニック文字」という記述を使用していましたが、「ルーン文字」というより一般的な表記に変更いたしました。