古英語の特徴

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スペル
古英語のスペルは現代のものとかなり異なります。発音記号のような文字も含まれており、わかりにくいのですが、まず似ている点から見てみましょう。もちろん、使用されていた単語も現在のものとは違います。

グレー文字の部分は現代のスペルや単語に置き換えた文章です。

þa ondswarede he, ond cwæð, 'Ne con ic noht singan; ond ic for þonof peossum
Then answered he, and said, 'Nor can I nothing sing; and I for that from this

gebeorscipe ut eode ond hider gewat, for þon ic naht singan ne cuðe.'
banquet out went and hither came, because I nothing to sing not knew how.'
現代語と似ている単語を比較してみると次のようになります。

Old English Modern English
ond and
ondswarede answered
con can
ic I
ut out
ne not, nor
singan sing
noht, naht nothing

ご覧のように、対比表の単語はよく似ています。また "singan" は動詞 "sing" の活用形です。現代の英語の活用は、現在、過去、過去分詞しかありませんが、昔は複雑な「活用」がありました。フランス語やイタリア語などを勉強された方はおわかりだと思いますが、人称、複数単数の違いによって動詞の形が違うということです。これによって、後に述べますが、語順が今のように厳密でなくてもよかったというわけです。

さて、スペルの話に戻りますが、辞書の発音記号のような文字が出てきます。 æ (ash)   ð (eth)  、 また "p" の縦棒を伸ばしたような  þ (thorn)  といったものまであります。 これらは英語のアルファベットのもとになったローマ文字に含まれていなかった文字で、ローマ語にない英語の音を表現するために設けられたものです。最後の二つは現在でもアイスランド語のアルファベットに含まれている文字です。

þ および ð は  "thin" の th  の音(発音記号では、[θ] )、 "this, that" などの "th" (発音記号では、 [ð] )の音を表記するものでした。 アイスランド語では、þ は [θ] の音を、ð は [ð] の音を表すようですが、古英語、中世英語の時代には、どちらの文字がどの発音を表していたかは、特に区別がなかったようで、たとえば、þ が thin にも that にも使われることがありました。 ちなみに、中世英語や近代英語の初期には、þ の文字の上に小さな "e" という文字をつけて the を、同じく "t" をつけて that を表すという略式表記も使われていたようです。

æ は  "a"  "e" の中間音ですが、現在の中間音とは少し違うようです。


また "gebeorscipe" といった見慣れない単語があります。一見したところでは、これが "banquet" (宴会)という意味だというのは推測できませんが、 "gebeorscipe" の一部である "beor" が昔の "beer" (ビール)だと言われると「なるほど」とうなづけるものがあります。



語順について
古英語は「活用」に基づく言語であり、語順も現代英語と比べるとかなり柔軟性がありました。
下の例を見てください。


Modern English the man saw the messenger その男は使いの者を見た。
the messenger saw the man 使いの者はその男を見た。
Old English a)
b)
se guma geseah þone bodan
þone bodan geseah se guma
その男は使いの者を見た。
使いの者をその男は見た。
c)
d)
se boda geseah þone guman
þone guman geseah se boda
使いの者はその男を見た。
その男を使いの者は見た。

単語が違うのでわかりにくいかもしれませんが、saw --> geseah (見た)、guma , guman --> man boda , bodan --> messenger として、比較してみてください。現代英語では、man  messenger を入れ替えると全く反対の意味になってしまいます。語順は絶対的なものでどんな理由があれ、変更することはできません。

一方、古英語を見てみましょう。まず、定冠詞 "the" らしきものが見当たらず、"se"  "þone" という二つの語がありまずが、言ってみればこれが "the" の代用をしています。現代英語では "the" ひとつで用が足りていますが、古英語では使い分けをしています。つまり、主格(何かをする主体)の名詞には "se" 、目的格(対象となる)の名詞には "þone" が付くようです。

またそれだけではなく、目的格となる名詞の語尾には "-n" が付加されており、それがどういう性格をもった名詞であるかということが一目瞭然でわかります。このように「冠詞」的な単語と名詞の語尾変化で、それが「主語」であるか「目的格」であるかがわかるので、入れ替えても正しく意味が通じるわけです。ちなみに、古英語の上下ふたつの文章は意味が全く変りません。

つまり、"se guma" 「その男は」となり、 " þone bodan" 「使いの者を」となりますので、a) は「その男は使いの者を見た」、b) では「使いの者をその男は見た」となり、意味は同じであるわけです。もっと単純に言ってしまえば、se + 「名詞」= 「名詞は」となり、  þone  + 「名詞」+ 「-n 語尾」で「名詞を」となるわけです。