中学、高校、大学と勉強していながら話せないのはなぜ?通訳付けないと日常会話もできない首脳は日本だけといった指摘。対して日本人が日本語話すのはあたりまえ。英米人も日本に来たら日本語を覚えるべきなんだ、という反論も。ともあれ英語は世界語になることは間違いなさそう。ここでは「日本人が英語が苦手なわけ」を分析してみたいと思います。

Last update January 16, 2015


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日本人の「聴き取り」はトップダウン?

「うちの会社は社長がワンマンですべてトップダウンで事を決定してしまう」とか、逆に「うちの社長はお飾りみたいなもんでほとんど会社のことはボトムアップで決められます」という会社もあるでしょう(?)。上から下へのトップダウン、下から上へのボトムアップ、まあ、どちらがいいのか一言では決められませんね。両方バランスがとれていることがいちばん良い状態なのです。

なんだか「経営論」みたいな話になってしまいましたが、実は日本人のリスニングの傾向はどうもトップダウンではないか、ということなのです。え?社長が聴いて答えを出してくれるの?もちろん、そういうことではありません。ここでいう、トップとは脳のこと、ボトムとは、聴覚の抹消神経のことです。ある音に対して、いままでの経験や脈絡から「これは rice であるべきだ」と判断するのがトップダウン、それに対して、耳から入ってきた音を鼓膜や内耳で信号に変換し、脳へと伝え、「これはこういう音だから、この単語は rice だ」と最終的に決定するのがボトムアップです。

だからどう違うんだ?ということになりますが、つまり、聞こえたままの音をそのまま受けとめ、処理しようとするのがボトムアップで、聞こえたままの音ではなく、脈絡や経験、常識などから、こういうふうに聞こえるはずだというところから結論を出すのがトップダウンというわけです。たとえば、「そら耳」とでもいいましょうか、日本語でもいいんですが、「ウチの会社は"ライフクリエーション"という事業を始めた」などと言いたいときに、自分の言い方が不明瞭で聞こえにくかったのか、相手が「え?ダイフクリエちゃん?」(たぶん相手の発想は「大福」と「リエちゃん」か?)などと聞き返してくる場合があります。相手も確認するつもりで「ダイフクリエちゃん?」などとと訊いてくるのですが、脈絡や常識から考えるとそんなことを言うわけがありません。一体、どんな事業なんだ?ということになりますね(和菓子の会社というのなら有り得る名前かもしれませんが)。こちらとすれば、なぜそんな脈絡のないことが急に出てくるの?と思ってしまうわけですが、そういうタイプの人っていますね。聞こえたままを口に出す、というタイプ。かと思えば、こんなふうに聞こえたような気がするけど、まさかこんな突拍子もないことをここで言うわけがない、と思って口に出さないタイプ。前者のタイプがボトムアップで、後者はトップダウンで音を処理する傾向が強いと言えるかもしれません。



回りくどい話になったかもしれませんが、要は日本人は英語の音を聴く際に、音そのものを聴きわけるというよりは、脈絡で聴いているのではないかということです。自分はリスニングが苦手だという意識があれば余計にその傾向は強まります。外国人相手の英語での会議などになると、そりゃもう、必死です。なんとか相手の言っていることを理解しようと、アタマもフル回転です。自分にとって不明瞭な音を脈絡で補って理解するというのは、高度な脳の働きですが、これをやっているがために、英語の子音そのものを聞き分ける能力が身につかないというわけです。日本人はとくに r  l の聞き分けが苦手だと言われます。確かに、夕食に何を食べるかというようなシチュエーションのときには、 rice しかあり得ないし、 lice (シラミ)という単語が出てくるはずはない、という常識(つまり脳)が働くわけです。よほどゲテモノ食いの人でない限り、「ライス」と聞こえた音はすべて rice と解釈して問題はないのですが、なかには r  l で始まる音のどちらでも成り立つような場合もあり、困るわけです。

筆者も何を隠そう、そういうちょっと恥ずかしい経験があります。仕事で技術的な内容を話していたときのことですが、wire「ワイヤ」が云々 という話になって、相手が「レッド・ワイヤ」と言っているのを聞いて、てっきり「red (赤い)ワイヤ」だと思って話をしていると、突然、No, no, not a red wire, lead wire と言われ、「あら?」なんてことになったことがあります。つまり、「レッド」は「レッド」でも「lead (鉛)のワイヤ」だったわけで、いかに、自分が知らず知らずのうちに、脈絡だけの聞き方になっていたのかを知りました。脈絡だけですと、自分のなかで考えていた脈絡が間違った場合、とんだ勘違いになってしまうわけです。

日本人に限らず、成長の段階で、誰しも母語の発音に順応して言葉を習得するのですが、もともと日本語には r  l の区別がないわけですから、母語にない音を聞き分けること自体が難しいことなんですね。日本人が今後国際語になるであろう英語の聴き取りをマスターするためには、いっそのこと日本語でも r  l と別々の発音を取りいれてしまうか、小中学校で徹底的にこのふたつの音の聞き取りをトレーニングするのがいちばん良いのでしょうが、こういうことは一市民が決めれるような事ではありませんから、自分で訓練するしかないわけです。

ちなみに専門家の先生方がおっしゃるには、 r  l の聞き分けの訓練には、数人のネイティブ(一人ではダメだそうです)に r  l を含んだ単語をテープに録音してもらって、それを繰り返し聞くことで効果があがるのだそうです。ここで大切なのは、「文章」でなくて「単語」でなければならないということです。文章だと、またかしこいアタマがでしゃばってしまいますから。でも、数人のネイティブについてはどう調達しようか、というのが次の課題ですね。まさか電車に乗っている外国人に片っ端から頼んでまわるわけにもいかないし。そりゃそうですね。相手も迷惑でしょうし、ここは、やはり市販のものがいいでしょう。このコーナーを書くのに、大いに参考にさせていただいた「英語リスニング科学的上達法」(ART人間情報通信研究所)というブルーバックスから出版されている本があります。この本の付録に CD-ROM がついていますので、よかったら試してみてください(ただし、パソコンの OS との互換性は確認してください)。正解率%なんて出てきますから、最初はガックリしたりしますが。

以上、音を音として聞き取れるよう訓練していくことの大切さを述べましたが、脈絡で理解しようとすることが間違っているというのではありません。事実、ノン・ネイティブが「ボトムアップ」で聴き取ろうとするのに対して、ネイティブは「トップダウン」で聴き取ろうとするという研究結果もあるようです。もちろん、これは、ネイティブであれば「音自体」をマスターしているわけで、なおかつ、こういう場合はこういう表現をするだろうという「表現のストック」も当然豊富なわけですから、「トップダウン」がうまく機能するのです。しかし、音自体にも親しんでいない段階で、いきなり「トップダウン」は無理だと言えるでしょう。ネイティブのような「表現のストック」もないわけですから、脈絡で想像しようにも限界があります。

とは言え、音自体が聞き取りにくい場合は、大いに脈絡を効かせて理解しようとせざるを得ないこともあります。要は、脈絡も使いながら、音自体を習得しようと努力することも大切だということなのです。

以下、発音の聞き取り練習ができるサイトをいくつかご紹介しておきます。

  http://www.learnenglishfeelgood.com/listening/index.html
似たような発音の単語聞き分け問題。音声を聞いて、その単語を3つの選択肢から選びます。他のコンテンツも充実したサイトです。

  http://www.rachelsenglish.com/videos/listen-repeat-exercises-r-l
「l」と「r」の音に特化したビデオで、講師の口元を見ながら自分でも発音練習ができます。

  http://www.spokenskills.com/self-study-quizzes.cfm
このページから「L and R Multiple choice -10 questions」をクリックすると、「l」と「r」の音を聞き分ける問題が表示されます。アクセスごとに違う問題が4問ずつ出題されます。