母音の「エイ」が「アイ」に聞える?知らないととんでもない意味に誤解してしまう悩ましい発音。その実際のところは?ここでは、オーストラリア英語についてまとめています。
Last update April 20, 2015




現在地→ | 英語雑貨屋トップ | 英語用語集 | 英語独学室 | 英語資料室/世界の英語 | 英語なんてタコ |

           

オーストラリア英語

イギリスがオーストラリアに植民地を設立したのは19世紀初頭ですが、ご存知のように、それ以後は流刑地としても利用されてきました。つまり「島流しの地」というわけで、当然ながら、「行ってみたいな、よその国」という期待や希望を持ってやってきた人々ばかりではありません。とはいえ、これも200年以上も昔の話で、いまや押しも押されぬ人気の高い「行ってみたい国」となりました。

ところで、オーストラリア英語の発音は、母音の「エイ」が「アイ」のように聞こえるという大きな特色があります。たとえば、"day" の発音が "die" のように聞こえるので、ある病院に入院していた(たぶんオーストラリアのネイティブではない)女性が医者から "you can go home today" と言われたのを「もう助かる見込みがないので家に帰ってもよい」 ("you can go home to die") と解釈して悲観したというエピソードがありますが、"today" が "to die" のように発音されることからきた誤解ですね。ちなみに "to die" は "to doy" に近い音で発音されるようです。

一方で、祖国を離れて海外で暮らしているようなオーストラリア人には、こういった訛りはほとんど見られません。外国に来ているのだから「標準発音」で話しているのです。ちなみに、オーストラリア英語は、"Broad Australian""General Australian""Educated (or Cultivated) Australian" に分類されます。最初の二つは、日常一般的に会話などで話されているもので、最後のものは教育機関など正式な場面で使われるようです。この Educated Australian はイギリスの RP (Received Pronunciation) という、いわゆる BBC などで使われている「標準発音」に近いと言われています。ここでは、より特色の表れる Broad Australian  General Australian を中心に話を進めていくことにします。

オーストラリア英語の母音体系というのは、ロンドン東部地域のコックニー英語 (Cockney English) の発音に近いと言われています。少し古くなりますが、ミュージカル映画の「マイフェアレディ」 (My Fair Lady) を見たことのある人ならご存知、主人公イライザ (Eliza) の発音がまさにこのコックニー訛り。ヒギンズ教授 (Professor Higgins) によって「発音矯正」の訓練を受けるのですが、 "The rain in Spain stays mainly in the plain."  という文章を読むのにどうしても、「ザ・ライン・イン・スパイン・スタイズ・マインリー・イン・ザ・プライン」となってしまうわけです。

では、オーストラリア英語の母音がどんな音で聞こえるのか、いくつか例を挙げてみましょう。(オーストラリア英語の発音記号はあくまでも聞こえ方を表したもので、実際のものとは異なります。)

標準英語 オーストラリア英語 聞え方
ei æi day --> ダイ
say --> サイ
here --> ヒー
mere --> ミー
əu cool --> カウル
boot --> バウト
au æɔ cow --> カオ
now --> ナオ
ai ɑe nine --> ナエン
height --> ハエト
ou əu low --> ラウ
row --> ラウ




この発音対比表に基づいて、自動的に言葉を当てはめてみると、 "Hi! How are you?" は、「ハエ!ハオ・アー・ヤオ!」なんてことで、ホンコン映画のような音になってしまいそうですが、何となく味わいを感じますね。


カラフルな英語表現

オーストラリア英語の特徴は発音だけではありません。スラングに見られるカラフルな表現や言葉の遊び心もオーストラリア英語ならではの面白さがあります。ここでいう「カラフル」とは、もちろん、表現に色がついているということではなく、豊かで独自性があるといった意味です。具体的にどういう特徴なのかといえば、たとえば、韻を踏んで2つの語を組み合わせて1つの語を作る rhyming slang が挙げられます。これは、発音同様にコックニー表現(Cockney rhyming slang)の影響が見られます。たとえば、"amber fluid" (琥珀色の液体)と言えばビールのことで、"Captain Cook" というと"Look!" (「見ろ!」)という意味になります。

また、日本でもそうですが、オーストラリア人も省略語が好きです。バーベキューが "barbecue" が "barbie" (着せ替え人形ではありません)になるなど、以下のような例が挙げられます。

省略形 元の単語 意味
Aussie Australian オーストラリア人、オーストラリアの
arvo afternoon 午後
barbie barbecue バーベキュー
brekkie breakfast 朝食
lippie lipstick 口紅
pressie present プレゼント、贈物
smoko cigarette break タバコ休憩
uni university 大学

その他、名前の最後に接尾辞 "o" をつけてニックネームを作るのもオーストラリア英語に多く見られる特徴です。"John" (ジョン)なら "Johnno" 「ジョノー」、"Jennifer" (ジェニファー)は "Jenno" 「ジェノー」というふうになります。さしずめ日本式に考えて見ると、「タロちゃん」が「タロどん」になったり、「ハナちゃん」が「ハナやん」になったりする、あの感じかもしれません。名前だけでなく、Journo 「ジャーナリスト」、Garbo (garbage collector) 「ごみ収集人」など、普通の名詞にもつける例も多くみられます。


オーストラリア英語の語彙

オーストラリア英語には、イギリス英語やアイルランド英語の影響もありますが、先住民のアボリジニの言葉の借用による独自の語彙も多く含まれています。たとえば、今ではすっかりお馴染みの kangaroo 「カンガルー」もその一例です。ちなみに、この語源に関しては、オーストラリアにやってきたキャプテン・クックが「あの動物は何だ?」と尋ねたときに、先住民が彼らの言葉で「カンガルー(知らない)」と答えたのが、そのままその動物の名前になったという伝説があります。面白いのですが、残念ながらこれには根拠がないようです。

以下、オーストラリア英語ならではの語彙の例を挙げてみましょう。

単語 意味 備考
battler まじめ・実直タイプ、コツコツタイプ 生まれつき金持ちでもなく、生活に苦労しながらも見返りを求めずコツコツ努力する勇気ある人物
billy アウトドア用ポット(鍋) アウトドアでお湯を沸かしたりするために使用する蓋や針金状のハンドルがついたブリキ製のポット。語源はスコットランド方言の billy 「調理器具」
bludger 怠け者 割り当てられた仕事をやろうとしない怠け者
bogan; bevan; boonah ワル、ゴロツキ yobo と同じ意味
boomerang ブーメラン アボリジニの言葉が語源
the bush ブッシュ、田舎 人家のほとんどない草木が生い茂った地域。大都会から離れた田舎という意味でも使う
cooee 遠くからの叫び声 ブッシュ地域で使われる遠くまで聞こえる叫び声、助けを呼ぶ声。アボリジニの言葉で「come here」の意味。熟語で within cooee of は「声の届く範囲」という意味
creek 小川 英語本来の単語。アメリカ英語では同じく「小川」を意味するがイングランドでは海に注ぐ小さな水路を指す
didgeridoo ディジュリドゥ オーストラリア北部のアボリジニの楽器。吹いて鳴らす木製楽器
digger オーストラリア兵 第一次大戦のときにオーストラリアおよびニュージーランド兵がもっぱら塹壕を掘ってばかりいたことから
dingo ディンゴ オーストラリアの野犬。「犬」を表すアボリジニの言葉 tingo が語源
dinkum; fair dinkum 真実、本当、本物 イングランドの東ミッドランド方言(今は死語)で「努力、苦労」を意味する dinkum (または dincum) が語源
fair go 公正、平等 納得できる平等の機会
hard yakka 骨折り仕事 「仕事」を意味するアボリジニの言葉 yaga が語源
jackaroo; jackeroo 農夫見習い 羊や牛などの牧畜に従事している(見習いとして働いている)若い男性。女性形は jillaroo
jillaroo 農婦見習い 羊や牛などの牧畜に従事している(見習いとして働いている)若い女性。男性形は jackaroo (jackeroo)
kangaroo カンガルー アボリジニの言葉 gangurru が語源
koala コアラ アボリジニの言葉 gula が語源
mate 友だち、仲間 コックニーなどイギリス英語の方言でも同じ意味で使われるが、本来は「配偶者」の意味
outback 僻地 都市部から離れた広大で乾燥した地域のことで、the bush の反対語。ニュージーランドでも使用
paddock (フェンスで囲まれた)畑、牧草地 イングランドでは家畜のための小さな囲いを指す
sheila (俗語)女性 アイルランドの女性名 Síle が語源
thongs サンダル 草履のようなサンダルのこと。アメリカやイギリスでは flip-flops
yobo; yobbo; yob ワル、ゴロツキ 大声で騒ぎたて、人に迷惑をかける行いの悪い者。酒浸りでなりふり構わない者。一昔前は、後ろの髪だけを伸ばした髪型がトレードマーク


参考

発音についての詳しい説明は、「英語の発音」コーナーのオーストラリア英語の発音をご覧ください。

オーストラリア英語の辞書
 The Macquarie Dictionary
 The Australian Oxford Dictionary

オーストラリアのスラング
  http://www15.uta.fi/FAST/US1/REF/aust-eng.html



 サイト内コンテンツ 

英語の発音 「エ」の口で「ア」と発音… そんな覚え方もいいけれど、英語の発音というものを体系的に捉えてみませんか?

映画ドラマの英語表現 英語ドラマの英語表現   「実際にはこんな表現をするのか」という学校では教えてくれない英語表現。英語圏のドラマや映画を思い切り活用しよう。

英語の歴史 英語の歴史   たどってみよう、英語の生い立ち。英語の歴史を知ることで、英語という言語の理解が深まります。