そこはやはり英語のルーツ、格調高いイメージがありますが、「お高くとまっちゃって」となりかねない?ここではイギリス英語についてまとめてみました。
Last update April 20, 2015




現在地→ | 英語雑貨屋トップ | 英語用語集 | 英語独学室 | 英語資料室/世界の英語 | 英語なんてタコ |

           

イギリス英語

さて、一言で「イギリス英語」と言っても、具体的にどこまでの地域を含むのかという定義は非常にあいまいです。いわゆる UK (United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland) 「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」で話されている英語を指すのか、それとも Great Britain 「グレートブリテン」だけで話されている英語なのか、はたまた England 「イングランド」だけで話されている英語なのか――いろんな定義があるようですが、ここでは、強引に「イングランドだけで話されている英語」と位置付けたいと思います。イングランドで話されている英語を他と区別して、English English、Anglo-English、English in England などと呼んでいます。

イングランドはご存知英語の生まれ故郷、本家だけあって、さすがに英語に対するこだわりには強いものがあります。「英語」というより、その「話し方」と言ったほうが適切でしょう。「マナーは人を作る」 (Manners make people) と言われますが、まさに「英語が人を表す」というくらい、その発音やイントネーション、文法などを含む「英語の話し方」がその人の社会的ステータスを表し、「話し方」(speech)でその出身地域がわかるという伝統的な考え方があります。言ってみれば、話し方はその人の「ブランド」でもあり「烙印」でもあるのです。

一般的に、イギリス英語と言えば「クイーンズ・イングリッシュ」 (Queen's English) や「キングズ・イングリッシュ」 (King's English) 、あるいは 「BBC イングリッシュ」 (BBC English)、オックスフォード・イングリッシュ (Oxford English) などとさまざまに呼称される格調高い英語を思い浮かべます。それには、イギリス英語の発音のコーナーでもご紹介していますが、Received Pronunciation (RP) 「容認発音」が世界的に知られているという背景があります。ちなみに、RP は「発音」だけでなく、イントネーションや表現法も含まれる「話し方」全般を指しています。厳密に言うと、前述の「クイーンズ・イングリッシュ」や「BBC イングリッシュ」などが必ずしもこの RP と一致するとは限らないようですが、かって RP と言えば「教養」や高いステータスの証でもあり、社会的な成功をめざす人々はこぞって RP の習得をめざしたものです。

たとえば、かの「鉄の女」 (the Iron Lady) と呼ばれた元首相のマーガレット・サッチャー (Margaret Thatcher) さんも、出身地であるリンカンシャイアー (Lincolnshire) の方言から RP に切り換えた一人でもあります。つい最近では、サッカー選手のデビッド・ベッカム (David Beckham) さんの例が挙げられます。ずっと以前に彼のインタビューを聴いたときには、「コックニー (Cockney) 訛り」の強い英語を話していましたが、最近のインタビューでは、「あれ?」と思うようなわかりやすい英語に変わっていたのが印象的でした。メディアでは、「ベッカムの英語が posh (スマート、上流社会的)になった」などと言われています。確かに、(年齢もあるかもしれませんが)以前は「下町のにいちゃん風」だったのが、今では「優雅なジェントルマン風」になり、「英語は人を表す」というのもまた言い得て妙だと言えるでしょう。ということで、彼も RP への転向者の一人です。

しかし、その一方で、RP しか認めないという風潮も変わってきており、今では、あまり訛りがきつくなく、わかりやすければOKといった考え方が一般的のようです。かっては、上昇志向の人々は、生まれや育ちを悟られないように RP に近い英語を話そうと努力したもので、それが「教養」というものでした。しかし、今では、きちんと教育も受けて、もともと RP を話す人たちが、逆にロンドンの下町言葉であるコックニーに近い話し方をする傾向も出てきました。それを最初にやった有名人が、あのローリングストーン(Rolling Stones)のミック・ジャガー(Mick Jagger)さんだと言われています。ロックスターともなると、お高くとまった上流階級よりは一般ピープルの支持を得ようとするのは当然のことかもしれません。しかし、本物のコックニー英語は、発音やイントネーションだけでなく文法も違いますので、こういったうわべだけを真似た偽物のコックニー英語を「モックニ―」(Mock 「からかう」+ Cockney)と呼んでいます。こういった傾向は音楽の世界だけでなく、政治の世界でも見られます。元首相のトニー・ブレア(Tony Blair)さんもよくコックニーに近い話し方をすることがあるようです。

とは言え、本来の自分の話し方を全く変えてしまうというよりも、「より身近に感じてもらう」ために相手に応じて話し方を変えているといったほうが適切でしょう。ちなみに、ミック・ジャガーさんはアメリカ英語のアクセントでも歌いますし、トニー・ブレアさんも、オックスフォード訛りや下町言葉など、話し方を七変化させておられるとか。今は、 RP は古臭いイメージもあるようで、コックニーっぽい話し方が「クール、カッコいい、今風」という風潮があり、高級住宅街の店で高級服を身に付けた若い女性たちが、堂々とコックニー英語を話す光景も見られるようです。友達と外出するときはコックニー、家に帰ったら RP、ジーンズでお出かけのときは断然コックニーなのよね!というノリなのか(?)、さすがに英語本場のイングランド、言葉も時と場合に応じて「着替える」感覚なのかもしれません。




コックニー英語(Cockney English)

では、最近、特に若い人たちの間で「カッコいい」英語として市民権を得ようとしている「コックニー英語」についてみてみましょう。

その起源は、ロンドンのイースト・エンドにある街頭での物売りの人々が使っていた独特の言葉であり、伝統的には労働者階級の英語とみなされています。オーストラリア英語でも触れましたが、「マイフェア・レディー」(My Fair Lady)の主人公イライザ(Eliza)はコックニーの花売り娘です。彼女の英語を聞けば、これがコックニー英語だというのがよくわかると思います。 「The rain in Spain stays mainly in the plain」がどのように発音されるか、下記の URL で実際に聴いてみましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=MJr9SSJKkII

コックニー英語の主な特徴をまとめてみると、次のようになります。

 「t」の音が落ちる
厳密には「落ちる」というより、そこで息の流れが遮られてしまうので聞えないわけですが、このような音を専門的には「声門破裂音」 (glottalization) と言います。たとえば「ボタン」 (button) が「ボッン」、「ライト」 (light) が「ライッ」となり、Not now は「ナッ・ナウ」、let's start は「レッ・スターッ」などとなります。「t」だけではなく「d」や「k」の音も落ちることがあり、Hyde Park 「ハイドパーク」は「ハイ・パー・」のように聞こえます。

 「h」の音が落ちる
つまり、前述のマイフェアレディ―に出てくるヒギンズ教授 (Professor Higgins) は「イギンズ教授」になり、「彼」 (he) は「イー」になり、「彼女」は (her) 「アー」になります。文字の読めない昔の人々は「h」を発音しないと学が無いとバカにされるので、とにかくなんでも母音で始まる単語には「h」をつけて発音してしまうこともあったとか。

 母音の発音
わかりやすい例では、rain、Spain などの「エイ」の発音が「アイ」になり、「ライン」、「スパイン」となったり、town、brown などの「アウ」の発音が「アー」になり、「タアーン」、「ブラーン」のように聞こえます。

 [θ] の発音が「f」になる
thin 「細い」が「フィン」になり、thick 「太い」は「フィック」になります。同様に、[ð] の発音は「v」や「d」などになるため、they は「ダイ」、bother は「バヴァ」のように聞こえます。

 my の代わりに me を使う
たとえば、That's my book you got here は At's me book you got 'ere (アッツ・ミー・ブック・ユーゴッ・エア)のように聞こえます。ただし、「彼の本ではなく私の」のように強調する場合は、me の代わりに my を使います。

 韻を踏んだカラフルな表現を使う
オーストラリア英語にも影響を与えた韻を踏んだ表現(Cockney rhyming slang)も大きな特徴のひとつです。ただし、発音も標準英語とは異なりますので、light と lie が同じ発音となり韻を踏むことになります。

 その他
その他の顕著な特徴として、ain't を使う、I didn't see nothing などの二重否定を使うといった傾向も挙げられます。


その他の特徴

 エスチュアリ英語 (Estuary English)
エスチュアリ (estuary) とは「河口」の意味で、エスチュアリ英語とは、テムズ川 (the River Thames) 沿いや河口地域を中心に、イングランドの南東部で話されている英語のことを指します。「t」や「h」の音が落ちる(聞こえない)といった特徴をはじめ、コックニー英語との共通点が非常に多いのが特徴であり、専門家の間でも、どこまでがコックニーでどこからがエスチュアリかという線引きは意見が分かれるようです。前述のトニー・ブレアさんがときどき使うコックニー風の英語も、実際にはエスチュアリ英語と呼んだほうがいいかもしれません。また、南東部では、このエスチュアリ英語がいずれは RP にとって代わるのではないかという意見もあるようです。

 オックスフォード式スペル (Oxford Spelling)
オックスフォード式スペルとは、オックスフォード辞書 (Oxford English Dictionary; OED) を含むオックスフォード大学出版 (Oxford University Press; OUP) から出版された書物で使われているスペル方式で、その基本となる考え方は「単語の語源に忠実なスペルを使用する」ということです。主な例を挙げると、realize などの単語において、イギリス英語では、-ize の代わりに -ise の接尾辞を用いて realise と綴られますが、語源であるギリシア語では -izo の接尾辞を持っているため、それに近づけて -ize を使おうというものです。

アメリカ英語では -ize を使いますので、アメリカ英語に親しんでいる一般の日本人にとっては何ら違和感のないことなのですが、イギリス人にとってはちょっと勝手が違うということになるわけです。イギリス英語を使うヨーロッパの国でも -ise がよく使われていますが、国連機関や ISO (Organization for Standardization)、WTO (the World Trade Organization)、NATO (the North Atlantic Treaty Organization)、科学誌の Nature、ブリタニカ百科事典 (the Encyclopaedia Britannica) やケンブリッジ大学出版 (Cambridge University Press) でもオックスフォード式スペルが用いられています。イギリスの新聞雑誌はおおむね -ise を用いているようです。イギリスのスペルについては、イギリス英語とアメリカ英語のスペルの違いをご覧ください。


参考

以上、イギリス英語についてご紹介しましたが、ここはひとつイギリス人っぽくしゃべってみたいという方は、下記のサイトをチェックしてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=52trwsDoj_8
http://www.wikihow.com/Speak-in-a-British-Accent

RP の発音については、「英語の発音」コーナーのイギリス英語の発音で紹介しています。

イギリス英語の辞書
 The Oxford English Dictionary (OED)



 サイト内コンテンツ 

英語の発音 「エ」の口で「ア」と発音… そんな覚え方もいいけれど、英語の発音というものを体系的に捉えてみませんか?

映画ドラマの英語表現 英語ドラマの英語表現   「実際にはこんな表現をするのか」という学校では教えてくれない英語表現。英語圏のドラマや映画を思い切り活用しよう。

英語の歴史 英語の歴史   たどってみよう、英語の生い立ち。英語の歴史を知ることで、英語という言語の理解が深まります。