同じ北米だからアメリカ英語と同じじゃない?などと思ってしまいがちのカナダ英語。これまでほどんど研究されることのなかった、その特徴とは?ここではカナダ英語についてまとめてみました。
Last update April 20, 2015




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カナダ英語

「同じ北米だからアメリカ英語と同じでしょ?」と思うのは何も日本人だけではありません。カナダ以外の人なら誰でも考えることだと思います。それもそのはず、オーストラリア英語やスコットランド英語など、他の英語圏の国の英語に比べてカナダ英語ほど、これまで研究されなかった英語はありません。1990年代までは研究のもとになる言語学的なデータがほとんど存在していなかったことが原因で、その特徴が知られるようになったのもここ十数年のことです。

さて、カナダ英語の起源は、当然のことながらイギリスによる植民化に始まります。アメリカが1775年の独立革命 (the American Revolution) でイギリスから独立を果たし、独自の英語を形成していったのに対して、カナダは1931年に自治領になりイギリス連邦 (the Commonwealth of Nations) の一員となっています。また、アメリカ独立後も本国に忠誠を誓う人々が、アメリカ領土となった土地から逃れ、カナダへと移住したと言われます。

こういった歴史的背景もあり、カナダ英語は、アメリカ英語とは地理的に近い位置にありながら、実は、宗主国であるイギリス英語の影響がかなり残っているのです。たとえば、水道の「蛇口」を表す単語ですが、アメリカでは faucet を使うのに対して、カナダではイギリスと同じ tap を使う傾向があります。アルファベットの「Z」もアメリカ英語のように「ズィー」ではなく、イギリス式に「ゼッド」と発音します。また、schedule の発音も、アメリカ英語のように「スケジュール」ではなく、「シェジュール」となりイギリス英語の発音に近くなります。とは言え、距離的に近いことから全くアメリカ英語の影響を受けないということは現実的にあり得ません。スペルの「r」をすべて発音する他、母音間の歯茎はじき音、緊張した [æ] の発音、スペルなどにアメリカ英語と共通の特徴もみられます。

以上のことから、カナダ英語とは、イギリス英語の影響を残しながらアメリカ英語の影響を受け、その一方で、独自の特徴を形成してきた英語と言えるでしょう。以下、カナダ英語の特徴についてまとめてみました。


カナダ英語の発音

前述のように、カナダ英語の発音は、イギリス英語とアメリカ英語の両方の影響がみられます。また、独自の特徴として、カナディアン・レイジング (Canadian Raising)、カナディアン・シフト (Canadian Shift) と呼ばれる母音の特徴が挙げられます。カナダ英語の発音については、「英語の発音」コーナーのカナダ英語の発音をご覧ください。


カナダ英語のスペル

カナダ英語のスペルも、発音と同じように、イギリス英語、アメリカ英語の影響を受けています。その傾向をまとめると以下のようになります。

 フランス語源の単語はイギリス式
フランス語を語源とする単語については、イギリス式のスペルを使用します。

カナダ英語 イギリス英語 アメリカ英語 意味
colour colour color
centre centre center センター
catalogue catalogue catalog カタログ

 defence、offence はイギリス式
「防御」、「攻撃」などの単語については、イギリス式のスペルを使用します。

カナダ英語 イギリス英語 アメリカ英語 意味
defence defence defense 防御
offence offence offense 攻撃

 自動車関係の単語のスペルはアメリカ式
自動車関連の単語については、アメリカ式のスペルを使用し、語彙もアメリカの語彙を使う傾向があります。

カナダ英語 イギリス英語 アメリカ英語 意味
curb kerb curb 縁石
tire tyre tire タイヤ

 -ize の語尾はアメリカ式
realize (「実現する」)、commercialize (「商業化する」)など「〜化する」という意味の動詞もアメリカの語彙を使う傾向があります。

カナダ英語 イギリス英語 アメリカ英語
realize realise realize
commercialize commercialise commercialize

 接尾辞を付ける場合はイギリス式
最後の音節に強勢がない単語に -er、-ed、-ing、-able などの接尾辞をつける場合、同じ子音を重ねるイギリス式スペルを使用します。

カナダ英語 イギリス英語 アメリカ英語 意味
traveller traveller traveler 旅行者
counselling counselling counseling カウンセリング
controllable controllable controlable 制御可能な




カナダ英語の語彙

カナダ英語の語彙にも、発音などと同様に、イギリス英語、アメリカ英語の影響がみられます。

単語 意味 イギリス英語 アメリカ英語
tin; can tin can
railway; railroad 鉄道 railway railroad
round-trip ticket; return ticket 往復切符 return ticket round-trip ticket
holiday; vacation 休暇 holiday vacation
tap 蛇口 tap faucet
serviette ナプキン serviette table napkin
truck トラック lorry truck
gasoline ガソリン petrol gasoline
trunk トランク boot trunk

その他、カナディアニズム (Canadianism) とも呼ばれるカナダ英語独自の語彙をいくつか紹介します。ただし、地域によって異なります。

単語 意味 備考
ABM ATM automatic bank machine の略。ATM も使われる
bachelor 独身用アパート 1ルームで小さなバストイレが付いている。one-and-a-half apartment、loft なども使用。アメリカでは studio
bluff 小さな林 プレーリー(草原地帯)にぽつんと存在する小さな木の群れ。プレーリー地方にて使用
boozecan 閉店後酒屋 閉店後に(たいていは違法で)酒類を売る店
bunnyhug フード付きスウェットセーター ファスナーが付いているものと付いていないものがある
Canuck カナダ人 カナダ人を表す蔑称だが、カナダ人自身が使うこともある(その場合は蔑称にはならない)
cheechako 新参者、青二才 ブリティッシュコロンビア地方にて使用。先住民の言葉が語源
dépanneur; dep コンビニエンスストア ケベック地方にて使用。語源はフランス語
double-double クリーム砂糖入りコーヒー クリームと砂糖がそれぞれ2つ(2さじ)入った
dressing gown バスローブ  
fire hall 消防署  
garburator 生ごみ処理装置 台所シンクの下に設けられた生ごみを細かくする装置
gas bar ガソリンスタンド filling station も使われる
ginch; gitch 女性用下着 プレーリー地方にて使用。東欧言語が語源
gitchies; gotchies 子供用下着 プレーリー地方にて使用。東欧言語が語源
gotch; gonch 男性用下着 プレーリー地方にて使用。東欧言語が語源
guichet ATM ケベック地方にて使用
hydro 電力 電力が水力発電で供給される地域において使用。hydro bill は電気料金の請求書
kangaroo jacket フード付きスウェットシャツ(ジャケット) 綿やポリエステル、フリース製のもの、あるいは防水ポリエステル製のもの
jam buster ジャム入りドーナツ プレーリー地方にて使用
mickey 375 mL ビンの酒飲料 pint や flask と呼ぶ地域もある
minihome; mini home トレーラーハウス  
parkade カーパキング 数階建てになった駐車場施設
porch climber 密造酒、自家製の酒飲料 プレーリー地方にて使用。オンタリオではカクテルの名前
slough 農家にある池
runners ランニング用シューズ  
tuque; toque; touque 冬用の毛糸の帽子 カナダのフランス語が語源
two-six; two-sixer,twenty-sixer; twixer 750 mL ビンの酒飲料  
washroom 公衆トイレ アメリカ英語でも一部使用。bathroom も使われる


参考

カナダ英語の発音については、「英語の発音」コーナーのカナダ英語の発音をご覧ください。

カナダ英語の辞書
 The Oxford Canadian Dictionary
 The Dictionary of Canadianisms on Historical Principles (DCHP)



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