イギリスに近いからイギリス英語とほとんど同じ?それともスコットランド英語に似てる?いずれにしろ、なんだかクセのありそうなアイルランド英語ですが、それがまたユニークなおもしろさと言えるでしょう。
Last update April 20, 2015




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アイルランド英語

アイルランドはグレート・ブリテン島の西隣に位置する島で、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)のメンバーである北アイルランド(Northern Ireland)と、そうではない南のアイルランド共和国(Republic of Ireland)から構成されます。この二つのアイルランドではともに英語が話されますが、その歴史的背景から、多少の影響はあるものの、基本的には別々の発展を遂げてきました。北アイルランドの英語はスコットランド英語の影響が強く、アイルランド共和国の英語よりもむしろスコットランド英語に近いとも言われています。

アイルランド英語の直接のルーツは、16世紀から17世紀にかけて行われた英国による植民がきっかけです。それ以前の12世紀頃にも古英語との接触がありましたが、一部の地域のみで話されていただけで、その後アイルランド語(ゲール語)が優勢になっていきます。同じく16世紀以前に古英語との接触があったスコットランドでは、それがスコットランド語として発展したのに対して、アイルランドでは独立した言語として残存せず、16世紀以降に「リバイバル」した英語に語彙などの影響を与えるかたちで残っています。また、語彙や文法など、アイルランド語の影響も色濃く反映されています。

さて、スコットランド英語同様、ちょっとクセのあるアイルランド英語ですが、そのひとつはやはり「訛(なま)っている」アクセントです。ちなみに、アイルランド英語っぽく話すためのポイントは「口先」で話すことだとか。また、母音を弱く発音し子音を強調すると同時に「r」の音もすべてしっかり発音。ですから、How are you? なんかも「ハ・ウェア・ヤ?」となり、語尾の「g」は惜しげもなくカットするので、talking や morning も「トーキン」、「モーニン」となります。「th」の発音も他の英語圏のように「舌先と歯を摩擦させて」といったややこしいことをしなくてもOK、すべてタ行とダ行の音で解決です。つまり、think や this はそれぞれ「ティンク」、「ディス」、thank も tank も「タンク」、than も Dan も「ダン」となり、区別できなくなりそうですが、とにかくカンタンなのがうれしいですね。母音も訛って「アイ」の発音が「オイ」のように聞こえることもあり、「アイルランド」は「オイルランド」で、「え?石油産出国だっけ?」なんてことに

発音やアクセントだけでなく、アイルランド語の影響を受けた言い回しにも特徴があります。久しぶりにアイルランドの友人と会って "What's the story?" (「なんか話ある?」) と聞かれたら、「ここはひとつ日本昔話でも」ということではなく、「最近どう?」という意味です。また、道を歩いていたら知らない人に "Do you have English?" と尋ねられた場合、「英語の辞書は持ってるが」などと悩む必要はありません。「英語話せますか?」の意味ですので、アイルランド英語らしく "I have it with me" と答えましょう。

というわけで、以下、アイルランド英語の特徴を詳しくみていくことにしましょう。




アイルランド英語の発音

アイルランド英語では、アメリカやカナダ、あるいはスコットランド英語同様、スペル「r」の音はすべて発音します。また、上でも述べましたが、「th」の発音や母音の発音にも特徴があります。詳しくは、「英語の発音」コーナーのアイルランド英語の発音をご覧ください。


アイルランド英語の文法

発音だけでなく、文章の作り方にもアイルランド英語ならではの特徴があります。スコットランド英語と同じような表現もあり、日本の学校で学んだ英文法が当てはまらない場合があります。以下、アイルランド英語の文法の違いについてまとめてみました。

 アイルランド人は二者択一が嫌い?
「日本人はイエスかノーかをはっきり言わない」などとよく言われますが、アイルランド人も質問の答えに yes や no を使いません。法廷の証人尋問じゃあるまいし、「はい」か「いいえ」で答えろなんて詰め寄られているみたいでイヤなもの。「来るの?」と聞かれれば「行くよ」とか「行かない」と答えればいいわけで、いちいち「はい、行きます」なんてまどろっこしくて。そう、アイルランド英語でも、"Are you coming?" と聞かれれば "I'm coming" あるいは "I'm not coming" と答え、yes や no を使わないのが特徴です。なんだか親近感を覚えますね。

 完了形も be 動詞と前置詞 after でカンタン表現
スコットランド英語と同様に、アイルランド語(ゲール語)の影響で、「have + 過去分詞」で表す「完了形」は「be 動詞+ after +-ing 形」ですませます。"He has gone" 「彼は行ってしまった」は、"He is after going" つまり「行った後」というわけで、"I'm after eating"、"I'm after telling you" など英作文もラクラク。しかし、日本の学校の試験では×になりますので、ご注意。また、変形として、"I have eaten my lunch" の代わりに "I have my lunch eaten" という言い方もあります。

 have の使い方が一味違う
すでに述べた "Do you have English?" もそうですが、アイルランド英語では have の使い方が異なります。アイルランド語には英語の have に相当する動詞がないため、ついこういった用例が出てくるのでしょう。また、所有を表す場合、英語の with に相当する前置詞と me のような所有代名詞で表現するという特徴もあります。たとえば、"Do you have the book?" と尋ねられたら "I have it with me" と答えます。さらに、「彼は酔っ払っている」というときは "He is drunk" などと言うのは「よそ者」で、アイルランドでは "He has the drink taken" と言わないといけません。

 再帰代名詞はエライ人?
himself や herself など「〜自身」という意味の再帰代名詞ですが、アイルランド英語では尊敬や権威のニュアンスが加わり「上司」や「一家の主」などを指す場合にも使われます。マフィアで言えば、さしずめ「ドン・コルレオーネ」の「ドン」のような存在で、"Tis himself that's coming" と言うと、そのエライ彼がじきじきに来るというわけです。ところが、"Myself and Tommy went..." といった表現もよくみられます。これは、「オレ様とトミーが」というのではなく、アイルランド語の影響で普通名詞のように使われることも多いからだそうです。

 どっこい生きてる古英語
スコットランド英語などでもみられる you の意味の古語 ye はもちろん、その複数形の yous、また it is を省略した tis、「学校などをさぼる」という意味の mitch、thing を意味する yoke など、シェイクスピアとも会話ができそうな古い英語の単語や表現もいっぱい。アルカイックな雰囲気が漂っています。

 その他、いろんなクセ
以下、他にもいろいろあるアイルランド英語のクセについてまとめてみました。

特徴 例文 解説
there の代わりに in it Is it yourself that is in it?
「そこにいるのは君か?」
アイルランド語の影響で「そこ」にいるというときの there の代わりに in it を使う。
なんとなく now を付け加える Bye now.
「じゃあね」
There you go now.
「どうぞ(何かを渡すとき)」
Ah now!
「なんたること!」
あえて必要のない now を追加する傾向は、他の国の英語でも用例があるが、アイルランド英語では特に顕著。その他、ウェイターが飲み物を差し出すときなどにも "Now, Sir" というなど、「はい、どうぞ」といった感じで使われる。
so を使ってしっかり強調 I can speak Irish, so I can.
「アイルランド語は話せるよ、もちろん!」
- You are not working hard enough.
「努力が足りないんだよ」
- I am so!
「してるさ!」
その他、"Bye so", "Let's go so", "That's fine so" など、他の英語圏では then を使うところを so で表現。
sure を使って強調したりののしったり I will go, to be sure.
「当然、行くよ」
Sure Jaysus (Jesus).
「こんちくしょう」
I was only here five minutes ago, sure!
「5分前に着いたばかりだってば!」
なくてもかまわない無意味な sure をつけて強調を表したり、ののしり言葉として使う。
if の代わりに once I will laugh, once your joke is funny.
「ジョークが面白ければ笑うさ」
一般的な英語用法では、once〜 というと「いったん〜すれば」といった意味になる。
shall の代わりに will Will I make us a cup of coffee?
「コーヒー入れましょうか?」
一般的な英語用法では区別する shall と will の区別がなく、「〜しましょうか?」という表現も含めて、すべて will で代用。
to 不定詞の to はしばしば省略 I'm not allowed go out tonight.
「今夜は外出が許されていない」
一般的な英語用法では I'm not allowed to go out tonight となる。
単純な現在形や過去形が仮定法? He asked me would I buy a loaf of bread.
「彼にパンを一斤買ってくれと頼まれた。」
一般的な英語では、He asked me to buy a loaf of bread.
- How do you know him?
- We would have been in school together.

「なぜ彼を知ってるの?」「いっしょに学校に通ったんだ。」
一般的な英語では、We went to school together. となるところを仮定法過去を使って表現。
微妙な bring と take の使い分け Don't forget to bring your umbrella with you when you leave.
「でかけるときは傘を持っていくのを忘れずに。」
一般的な英語では bring でなく take。一般的な英語では、bring は「こちらに持ってくる(連れてくる)」の意味だが、アイルランド英語では「持ってくる(連れてくる)」「持っていく(連れて行く)」の両方の意味で使う。
Someone took my bag when I was having lunch.
「昼食を食べている間にバッグを取られた。」
一般的な英語では、take には「持っていく(連れて行く)」の意味もあるが、アイルランド英語では、「誰かが誰かから何かを取る・受け取る」の意味でしか使わない。
does be/do be で習慣や継続を表す He does be working every day.
「彼は毎日働いている。」
現在も続いている習慣などを表す表現として does (do) + be という構文がある。


アイルランド英語の語彙

アイルランド英語特有の語彙には、アイルランド語から借用したもの、アイルランド語を語源として英語になったもの、古・中期英語の語彙がそのまま使われているものという大きく3つの種類がありますが、それ以外にも語源の不明なものもあります。

以下、そのいくつかをご紹介しましょう。

単語 意味 備考
Abú 「ばんざい!」、「フレー!」 Bertie abú! 「バーティー、ばんざい!」などのように使う間投詞。アイルランド語からの借用
Acting the maggot バカをやる、ふざける 必要以上にふざけたり、冗談を言ったりして真剣さがなく軽薄な様子
amadán バカ アイルランド語からの借用
amn't am not の省略形 スコットランド英語同様、一般英語では使わない am not の省略形
bold 行ないの悪い、わんぱくな The boy is very bold といえば、一般的な英語の bold 「勇敢な」の意味ではなく「わんぱく」の意味。アイルランド語の dána が語源
bowsie ワル、ゴロツキ 語源は不明
childer 子供 古期英語の child の複数形属格が語源
chiseler 子供 語源は不明
cod バカ acting the cod や making a cod of himself のように使う
colleen 少女、若い女性 アイルランド語の cailín が語源
craic 楽しみ、娯楽 スコットランド英語や北部イングランドでも crack のスペルで使用(「ゴシップ、おしゃべり」の意味)。古期英語の cracian がゲール語経由で現代アイルランド英語に借入
eejit バカ、まぬけ ラテン語 idiota を語源とする英語が語源で、スコットランド英語でも使用。英語の idiot に相当
gob 動物の口 ちなみに「人間の口」は beal。アイルランド語の gob が語源
gombeen 金貸し Gombeen man のように使う。アイルランド語の gaimbín が語源
grá 愛、愛好 He has a great grá for whiskey. 「彼はウイスキーが大好きだ」のように使う。アイルランド語からの借用
grinds 個人授業 古期英語の grindan が語源
guards 警察 アイルランド語の Garda Síochána が語源
hames 混乱、困惑、めちゃくちゃ make a hames of の熟語で使用。オランダ語から入った中期英語が語源
Jackeen ダブリン野郎、イギリスびいき 「ダブリン出身者」を意味するやや軽蔑的な言葉。また、1801年以降のイギリス統治時代にユニオンジャック(イギリス国旗)を支持した者、イギリス王室を支持する者ということから「自己主張の強い取るに足らない人間」という意味もある。John の愛称 Jack + アイルランド語の縮小辞 -ín
jaded 疲労した 中期英語の jade が語源
lúdramán バカ アイルランド語からの借用
minerals ソフトドリンク mineral water から
mitch サボる 中期英語が語源
runners スポーツシューズ tackies とも。ちなみにイギリス英語では trainers、アメリカ英語では sneakers
Sláinte 「乾杯!」 「健康を祝して!」、「乾杯!」の意味の間投詞。アイルランド語からの借用
Shoneen イギリスかぶれ イギリスのやり方を真似するアイルランド人を指す。John に相当するアイルランド語の名前 Seoin (英語では Sean)+ 縮小辞 -ín
sleeveen 信用できないずる賢い人間 アイルランド語の slíbhín が語源
soft day 曇り、どんよりした天気 小雨や霧でかすんだ様子を表す。アイルランド語の Lá bog が語源
The tea is wet; Wet the tea お茶を入れる wet the tea で「お茶を入れる」、The tea is wet で「お茶が入った」の意味
wagon/waggon イヤな女 中期英語が語源
whisht 「シーッ!」(静かに!) スコットランドや北部イングランドでも使用。中期英語が語源
yoke 物、物体、小物 古期英語の geoc が語源


参考

以上、アイルランド英語についてご紹介しましたが、ここはひとつアイルランド人っぽくしゃべってみたいという方は、下記のサイトをチェックしてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=W2PHch4IPPQ
http://www.wikihow.com/Speak-With-an-Irish-Accent

発音についての詳しい説明は、「英語の発音」コーナーのアイルランド英語の発音をご覧ください。

アイルランド英語
  http://www.fluentin3months.com/speak-like-the-irish/
  http://www.examiner.com/article/how-to-talk-like-an-irish-person-lesson-one



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