Posted in 2001

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では、さっそく、始めてみましょうね。今日は、実は、カヨちゃんという女性の方からこんなご質問をいただいていますよ。ありがたいことですねえ。こうして、ご質問をいただくことで、私のほうも随分とお勉強になりますものねえ。ご質問を紹介させていただく前に、ちょっとカヨちゃんをご紹介してみましょう。ちょっと、お写真よろしいですか?お願いしますね。ちょっとマウスポインタ合わせてみてくださいね。
はい、どうぞ。

 はい、カヨちゃんでした。可愛いでしょ?いいですねえ。え?小さすぎますか?…… いや、あの、ここはお勉強するところですから、お写真はこれくらいにしておきましょうねー。さて、本題に入りましょうか。え?早くしろって?忘れたらいけませんよぉ、ゆっくリズムですよぉ。。。では、ご質問内容、紹介してみましょう。

オヤジさま

さっそく質問させていただきます。私は今、英文マニュアルのチェックをしています。でも、なかなか理解できないのが、冠詞なんです。「画面が表示される」という内容の文章がいくつかあるんですが、同じような文章なのに、不定冠詞を使っているものと定冠詞を使っているものがあるんですよ。ネイティブの方にもお聞きしたんですが、どうも納得できる答えがもらえなくて困ってます。できれば、どちらかに表現を統一すればすっきりすると思うんですが… ニュアンスなど、どう違うのか教えてください。下に例文を上げておきますのでよろしくお願いしまーす。

カヨ

The screen for setting the density level will appear.
A confirmation screen will appear.


ということですね。う〜ん、これはどうでしょうね。ネイティブにも相談された…ということですが、私が思うのにはですね、ネイティブの方にはやはりわからないと思うんですよぉ。いえいえ、冠詞がわからないということではなくて、日本人が冠詞についてわからない、ということがわからないということですね。ネイティブの皆さんはもともと英語が母国語ですからね、つまり母なるランゲージなわけですよ。小さい頃から自然と身についたものですからね、冠詞というものが無い日本語を話している日本人が、どこがどうわからないか、深く理解できないと思いますよ。当然のことですがねえ。そこに行くと、この私なんかは日本人ですからね、よぉく解るんですよ。私も冠詞というのは苦労しましたからねえ。

ついでに言ってしまいますとね、(ここだけの話ですよ、)どうも日本で使われている英文法の本なんかは、もともと、英語圏の人が、英語圏の人のために、英語で書かれた本をそのまま日本語に翻訳しちゃったんじゃないかと思うんですよ。つまり、英語圏の英語圏による英語圏のための本を日本人が読んで理解できるでしょうか、ということなんですよ。こんなこと言うと、専門家の方に怒られちゃうかもしれませんけど。ね、皆さん、これどう思われますか?たとえばね、国語の名前には定冠詞を使うとか使わないとか、湖には云々とか、橋には云々とか、私たちが学校で習った英文法の本に出てくるようなことが書かれていますよ。あれはねえ、もともと冠詞という考え方や概念が感覚的に身に付いていらっしゃるネイティブの方のためのものだったら、ああいった場合分けのような説明の仕方で通用すると思うんですけどねえ。

ズバリ、私はですね、冠詞というものは「修飾詞」と考えているんですよ。修飾詞と言ってもね、飾り立てることじゃあないんですよ。女性がお化粧をしたり、お洒落するのとは違うんですよ。女性のお洒落は、好みの問題でね、なかには、そこまでしなくても、と思う人もありますが、この「修飾語」というのは… え?なんですか?ああ、そうですね、こう言う事を言うと「セクハラ」になるんですよね。すいません。すいません。それで、この修飾詞というのは決して「飾り」ではない。これを英語で言うと modifier と言いましてね、辞書を引きますと、「ある言葉を詳しく描写したり、意味を限定したりするもの」という具合に書かれていますね。だから、修飾詞ってのは、ほんとはとっても大事な役割をしているということですね。冠詞というものは修飾詞である。ということは、ある言葉を説明したり、意味を限定するという働きがある、つまり、立派な情報を持った「ことば」ということなんですよ。

じゃあね、一体、冠詞がどういう「情報」を持っているのか、ということになりますね。そこでですね、ちょっと具体的な例をあげてみましょう。みなさん、おリンゴ好きですか?私はリンゴ大好きでね、かじっても歯茎から血が出ないんですよ。(関係ないですね、どもども。)では、わかりやすくするために、リンゴを使って「冠詞の有るとき、無いとき」また「定冠詞のとき、不定冠詞のとき」というのを絵で表現してみましょう。

不定冠詞
文字通り「リンゴ1個ください。」というときの「リンゴ」で、任意のリンゴを指す。 a, an  one と同じ意味で「ひとつ」を意味する。
定冠詞
「例のあのリンゴ持ってきて」といった条件付きの「リンゴ」で、たとえば、かじりかけて置いておいたリンゴ。任意ではなく、限定度が高い。 the の語源は指示形容詞の that 
無冠詞
「リンゴ」というおぼろげな概念があるだけで、具体性はない。つまり、任意性もなく、具体性もない、バーチャルなリンゴでしかない。

という具合になるんですがね。

つまり an apple の場合、「1個の、どれでもいい」という情報が含まれているわけですね。「an apple ください」と言うと、話し手も「リンゴだったらどれでもいいよ」ということを暗に言ってるわけで、聞き手のほうも「あ、どのリンゴでもいいんだな」と思うわけです。

ところがですね、次の「かじりかけのリンゴ」。このリンゴですが、例えば、私がリンゴをかじりかけてそのままテーブルに置いていたとしますね、すると家内がですね、「あら、またこんなところにかじりかけのリンゴ置いてるんだから」とブツブツ言ったりするわけですね。まあ、私もあんまりガミガミ言われるとうるさいですから、Bring me the apple (「そのリンゴ持ってきて。」)と言うわけです。そうすると家内はですね、テーブルの上には新しい(かじっていない)リンゴが他にあるにもかかわらず、わざわざかじりかけのリンゴを持ってくるわけです。こんな具合に、the apple には、「例の、そのリンゴ、あのリンゴ」といった情報が含まれていて、お互いの信頼関係や前後のつながりなどから聞き手にもどのリンゴかがわかる、というような前提があるんです。いかがですか?

では、無冠詞の場合は…っていうと、上の絵では「おぼろ」リンゴになってますが、これは何を言いたかったかといいますとね、具象性がない、ということなんですよ。「具象性」というのも、なんだか難しい言葉ですねー。言い換えれば「カタチが無い」とでもいいましょうか、「中身が無い」とも言えますね。つまり、話し手と受け手の頭の中に具体的なイメージが浮かんでいない状態なんです。明確なコミュニケーションが成り立たない状態とでも言いましょーか… あー難しいですね、なんで英語圏の人はこんなややこしい考え方をするんでしょうねえ。まあ、冠詞がある言語は英語だけじゃないんで、英語圏の人ばかりじゃないんですけどね。

というようなことで、ちょっと時間無くなってきましたね。あまりゆっくりしすぎましたかね。じゃあ、ここらへんで結論よろしいですか?カヨちゃん、これはやはり、定冠詞か不定冠詞か、どちらかに統一するということは出来ないのではないか、と私は思うんですよ。

a confirmation screen というからには、読み手も、「ああ、こういう似たような画面が他にもいっぱいあるんだな。そのうちのひとつの画面ということで、ひょっとすると、画面の内容などはあまり気にせんでもいいのかな」といった隠された情報を受け取ることができるんじゃなかろうか、と思うわけです。この画面が出たら、とにかく、OKボタンか、場合によっては、CANCELボタンを押しておけばいいんじゃなかろうか…といったね。逆に the screen for setting ... のほうは、「density level を設定する画面はこれひとつなんだな。この画面がちゃんと出てるか確認せにゃならんかな。」といったことを感じるんだと思うんですね。もちろん、具体的にどう感じるかは読む人によっても違うでしょうが、限定度が高くなるといいましょうかねえ、「修飾詞」ということで言えば、a screen と言うより、the screen と言うほうが、修飾する度合が高くなりますから、どういうものを指しているのかが、より具体的になるということですね。

すなわち、ですね、これは書き手がそれなりの情報や、読み手に感じさせようとする暗黙のメッセージをだのthe だのにちゃんと込めているということなんですよ。たぶん、無意識のうちにそうしてるのかもしれませんね。でも、絶対こっちのほうが正しいというようなルールは明確には無いと思うんですけどね。たぶんネイティブの方によっても若干、意見がね、違ってくると思います。ですから、その部分はある程度、ネイティブ・ライターの方にしかわからない「聖域」のようなものになってしまう部分もありますね、残念ながら。その部分に、何て言いますかね、こう、「挑む」というようなことをしようと思えば、自分もそれ位の見識を持っておかなければならん、というわけですね。

ということでですね、みなさん、だいたいのところ、おわかりいただけたでしょうか?

じゃあ、最後に今日の説明をまとめまして、一句詠ませていただきましょう。
それでは、みなさん、ごきげんよう!