名詞に性別がある？

フランス語やイタリア語などと同様に、スペイン語には、男性名詞と女性名詞があります。そして、それらの名詞を修飾する形容詞、冠詞にも男性形・女性形があり、それぞれ名詞の性と一致させなければなりません。

なんともややこしい話なのですが、まあ、人間にしても男性と女性がいるわけで、単語に男性と女性があっても不思議じゃないと割りきるしかありません。じゃあ「中性」はないのかというと、ドイツ語などでは男性、女性に加えて中性があります。スペイン語の直接の先祖であるラテン語にはありましたが、スペイン語には、中性の概念は基本的にはありません。厳密に言うと、「それ」という意味の定冠詞 lo、「これ」を意味する esto という指示代名詞の２つのみが中性として残っています。これらの単語は抽象的な概念を修飾する場合に使われます。

そもそも、なぜ名詞に性別があるかというと、ずっとさかのぼって、スペイン語（その他英語やドイツ語、フランス語なども）の祖先であるインド・ヨーロッパ語にその起源を見つけることができます。最も古いインド・ヨーロッパ語の原型には、「動くもの」と「動かないもの」という２種類の名詞の分類があり、「動くもの」が男性名詞に、「動かないもの」が中性名詞と女性名詞になったということです。「性別」といった言い方をすると、男女均等の現代社会では違和感が残るかもしれませんが、「動物」と「静物」などと言われると、よりピンと来るのかもしれません。

というわけで、前置きはさておき、スペイン語の名詞の性についての特徴をまとめてみましょう。

もともと「性別」のある名詞はその「性」になる。
つまり、「お父さん」といえば「男性」、「娘」といえば「女性」ということで、「お父さん」は男性名詞、「娘」は女性名詞となります。

単語	性
padre 「父」	男性
madre 「母」	女性
hombre 「男」	男性
mujer 「女」	女性

男性は「-o」、女性は「-a」。
例外もありますが、語尾が「-o」で終わる名詞は男性名詞、「-a」で終わるものは女性名詞という傾向があります。

単語	性
camino 「道」	男性
casa 「家」	女性
libro 「本」	男性
revista 「雑誌」	女性

男性形と女性形の語尾対比。
たとえば、男生徒と女生徒など、同じ種類の人間や生物で、語尾を変えて性を表す単語もあります。その男性・女性語尾の対比には、上であげた「-o」 vs 「-a」以外にも、以下のようなものがあります。

対比	意味	男性形	女性形
-o/-a	子供	niño	niña
-/-a	教授	profesor	profesora
-o/-ina	鶏	gallo	gallina
-/-na	イノシシ	jabalí	jabalina
-or/-riz	俳優	actor	actriz

「-ción」、「-sión」、「-tión」、「-dad」、「-tad」、「-tud」、「-umbre」、「-ie」で終わる単語は女性名詞。
以下、その例をいくつか挙げておきます。

単語	性
nación 「国家」	女性
tensión 「緊張」	女性
cuestión 「質問」	女性
ciudad 「都市」	女性
amistad 「友情」	女性
joventud 「若さ」	女性
costumbre 「習慣」	女性
serie 「シリーズ」	女性

「-ista」、「-ante」で終わる単語は男女同形。
語形としては男性・女性も同じであるため、性別を区別するには、冠詞や形容詞をつけて区別します。

単語	男性	女性
pianista 「ピアニスト」	un pianista 「あるピアニスト」	una pianista 「あるピアニスト」
cantante 「歌手」	el cantante famoso 「その有名な歌手」	la cantante famosa 「その有名な歌手」

以上、男性名詞、女性名詞についてみてきましたが、具体的な単語の男性形・女性形の例は、スペイン語文法ノートの名詞の男性形・女性形リストを参照ください。