スペイン語の歴史 その歴史を知れば言語がもっとよくわかる―ラテン語からロマンス語へ、そして現代のスペイン語へと発展してきた道のりをたどってみます。




スペイン語略年表



Última actualización: 6 de mayo 2016


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年代 出来事 スペイン語の変遷
 前ローマ化時代 
~紀元前 3 C  ローマ以前のイベリア半島  ローマ以前の言語
  西部と中心部ではケルト語が話される。
  東部ではイベリア語(消滅)、バスク語が話される。
  ケルト語より語彙の一部が引き継がれる。
  バスク語の影響が hijo, hilo などの発音・綴りとして引き継がれる。
 ローマ化時代 
218  ローマ帝国によるイスパニアの征服・植民地化始まる  ローマ化の始まり
  バスク語を除くローマ以前の言語が消滅。
  ラテン語(俗ラテン語)が取って代わる(ローマ化)。
  本来ラテン語にはなかった冠詞が登場。
  北部はローマ勢力に抵抗、ローマ化が遅れる。
 ロマンス語時代 
5 C  イベリア半島にゲルマン民族(西ゴート族)が侵入
 ローマ帝国の滅亡
 ゲルマン語の影響
  西ゴート族がすでにローマ化していたため影響は少ない。
  一部のゲルマン語源の単語が引き継がれる。

 ラテン語からロマンス語への移行
  ラテン語が大きく発展・変化し、ロマンス語と言われる言語へ移行、スペイン語の基礎となる。
7 C  西ゴート族の支配
 言語としての統一
  カタラン地方を除いてほぼ言語の統一がなされる。

 変化の特徴
  強勢のある e と o の母音が二重母音化する。
  –ariu, - eriu, -oriu, -asiu などの語尾が –airo, -eiro, -oiro, -eiro に変化。
  有声音間の p, t, k などの無声音が b, d, g の有声音に変化。
  –cl-, –li- などが すべて -ll- の硬口蓋音に変化。
711  アラビア勢力による支配が始まる
 アラビア語の影響
  ラテン語から離れ、独自言語として発展する段階において、非常に大きな影響を与える。
  álgebra, cifra, alcohol をはじめ数多くの語彙をアラビア語から借入。
  カタラン語、カスティリア語、モサラベ語などの方言が生まれる。




 カスティリア語 
~10 C  カスティリア地方の誕生
 カスティリア語
  古代カンタブリア地方(バスク、サンタンデール近接)にレオン自治区として発祥。
  harina, hembra などラテン語では「f」で始まる単語が有気音「h」(のちに無音)に変化。
10 ~ 11 C  中世カスティリア語
 フランス語の影響
  サンティアーゴ・デ・コンポステーラへの巡礼、クリュニー修道会の発展とともにフランス語の影響が顕著。

 書き言葉への発展
  それまで書き言葉ではラテン語が使用されていた。
  修道規範の解説書などにカスティリア語で書かれたものが登場。
12 ~ 13 C  レコンキスタの始まり
 新大陸の発見
 カスティリア語の発展
  カスティリア語の南下。
  一方で、モサラベなど他の方言は衰退、あるいはカスティリア語へ吸収統合。
  他の方言・言語の特性を取り入れながら独自の言語へと発展。

 カスティリア語の変化の特徴
  縮小辞 iello の二重母音が変化し始める。
  母音間および語頭、あるいは子音の後の無声音の「s」 (ss と表記)、有声音間の「s」 (ss と表記)の二種類の「s」が存在。
  「c」、無声音「ç」([ts] と発音)、有声音「z」([ds] と発音)を区別。
  フランス語の「ch」のように発音する無声音「x」とフランス語の「j」に似た発音の「ge, gi」を区別。
  語頭に来る「f」が有気音「h」に変化(話し言葉のみ)。書き言葉では「f」はそのまま維持。
  「与格+対格」の組み合わせである「ge lo」(現在の se lo)が「gelo」と結合。
  「nul」 (ninguno) 、「maguer」 (aunque)、「ca」 (porque) などの古語が存在。
  「los mis ojos」など冠詞と所有代名詞を合わせて使用(現在もイタリア語で見られる用例)。
  Gonzalo de Berceo (13世紀)、Juan Ruíz こと Arcipreste de Hita (14世紀)、Don Juan Manuel (14世紀)、Fernando de Rojas (15世紀)などの文学者による貢献。

 RR.CC (キリスト教王国)による言語的統一
  レコンキスタのための団結は同時に言語的標準化をもたらす。
  レオン語は方言としてのみ存続、アラゴン語は消滅。
  カスティリア語が言語的覇権を持つようになる。
  1492年、Nebrija による 「Gramática」の出版。
  印刷技術の発達による文法的な統一。
  カスティリア語についてのさまざまな辞書、書物が出版される。




18 C  黄金世紀(シグロ・デ・オロ)
 黄金世紀における変化の特徴
  efecto, efeto などの単語で「c」を入れるものとそうでないものが出てくる。
  10世紀頃にラテン語の「f」で始まる単語は有気音「h」への変化をみたが、この頃になると「h」が無音となる。
  二種類あった「s」(有声音)と「ss」(無声音)が統一され、すべて無声音 [s] に変化。
  区別されていた「v」と「b」に混同が起こり、現在の [b] の発音になる。
  「c」、無声音「ç」([ts] と発音)、有声音「z」([ds] と発音)の区別がなくなり、現在の「z」、「c」の発音になる。
  17世紀前半において、「x」と「ge, gi」の発音が現在の発音になる。
  17世紀初頭に、amás/amáis, sos/sois, vo/voy など、定着していなかった動詞活用形が現在の形になる。
  haber と tener、ser と estar などの動詞の使い分けが定着。
  「人」を表す直接目的語の前の前置詞「a」の使用が定着。
  –illo, –uelo, -ito,- ico、最上級を表す -ísimo などの接尾辞が登場。
  「suso」に代わって「arriba」、「yantar」が「comer」、「so」が「debajo」、「luengo」が「largo」など、語彙が近代化。
  イタリア、フランス、ポルトガル、アメリカなどの様式の影響を受ける。
~現在  近代のスペイン語
 言語の統制
  1713年、スペイン語の純正を維持・統制する目的で、王立アカデミー (la Real Academia Española) を設立。
  1726~1739年、同アカデミーより「Diccionario de Autoridades」、1741年に「Ortografía」、1771年に「Gramática」出版。
  foto などのように「ph」のスペルが「f」に変化。同様に、「th」、「rh」、「 ch」はぞれぞれ「t」、「r」、「c」に置き換わる。
  「s」、「ç」がそれぞれ「z」、「c」 に、「ss」はすべて「s」に変化。
  さまざまな分野の語彙が組み込まれる。
  burgués, bayoneta, pantalón, bisturí などのフランス様式が外来し、純粋主義者たちの反発を招く。
  19世紀になると、伝達、義務教育での文法・正書法、出版などの分野において、アカデミアを中心としたスペイン語の標準化がますますさかんになる。