Last update March 18, 2022

どんな発音があるのか?

器官の組み合わせでいろんな音があります。

次に、どんな音があるのか、発音の種類を見てみます。まず、大きく分けると「有声音」と「無声音」とがあります。これは、文字通り、声を出しているかいないかの分類です。そもそも声を出すというメカニズムは、声帯が縮まった状態のときに息の力で声帯を震わせることで声が出るという仕組みになっています。つまり、声が出ている状態のときは声帯が振動しています。それを確かめるには、喉に手を当ててみるとよくわかります。振動していれば「有声音」になっており、振動していなければ「無声音」というわけです。

有声音(ゆうせいおん) 有声音(ゆうせいおん) voiced sound
ほとんどの言語では、母音はすべて有声音になります。
英語の子音では、/b/、/d/、/g/、/v/、/z/、/r/、/l/、/m/、/n/ の音が有声音となります。

無声音(むせいおん) 無声音(むせいおん) voiceless sound
英語では、無声音は、子音のみで /p/、/t/、/k/、/f/、/s/、/h/ が無声音となります。

え?でも、無声音の /p/ を「ピー」と出しながら喉を触ると震えてるんですけど… という意見もあるかもしれません。「ピー」は [pi:] と発音しているから /i/ の母音が入っています。その音が声帯を震わせているわけです。 /i/の音を含まない /p/ の音だけが発音できていれば喉は振動しないはずです。

では、どんな音の種類があるのかを見てみましょう。





母音の分類

最初に、母音の分類です。母音の発音は、ずばり、唇の丸め具合や口の中の舌の位置で決まります。唇が丸まっているか丸まっていないか、舌の位置が口の天井から近い・中くらい・遠い(縦方向の位置)、および前・中・後ろ(水平方向の位置)にあるかで音が違ってくるのです。これらの要素を組み合わせていろんな母音の音が出せるというわけです。こう考えると非常に単純ですね。

まず、唇が丸まっているかどうかということですが、これは、唇の形が丸いというのではなく、唇をぎゅっとすぼめて突き出したような状態になっているかという意味です。分類としては、大きく以下の2つがあります。

円唇母音(えんしんぼいん) 円唇母音(えんしんぼいん)  rounded vowel
唇を丸めることによって発音する母音の分類をこう呼びます。「ウ」や「オ」の音がこれです。

非円唇母音(ひえんしんぼいん) 非円唇母音(ひえんしんぼいん)  unrounded vowel
発音するときに、唇の形が丸まっていないものを言います。「ア」、「イ」、「エ」の音がこれに該当します。

次に、舌の位置による分類を見てみましょう。ここで、ちょっと息抜き(?)をしていただいて、「あ~」と大きく口を開けてあくびをしてみてください。別に眠くもないんだけどなーという方もやってみてください。さあ、口が大きく開いていますか。そして、そのときの「舌」の位置をチェックしてください。口の中の上、中ごろ、下のどの辺にありますか?大きく口を開けたときには、舌は下のほうにありますね。言い換えれば、口の中の天井から遠く離れているはずです。つまり、口の天井と舌の間の間隔が「広い」ですね。

では、ぎゅっと口を閉じてみましょう。舌の位置は口の天井に限りなく近づいていますね。つまり、口の天井と舌の間隔が「狭い」というわけです。ということで、口を大きくあければ、間隔は「広く」なり、閉じれば「狭く」なるというわけで、その度合いに応じて、ざっと以下のように分類することができます。口の開け方が最も狭い母音から広い母音までを順番にあげています。

狭母音(せまぼいん) 狭母音(せまぼいん)  close vowel

半狭母音(はんせまぼいん) 半狭母音(はんせまぼいん)  close-mid vowel

半広母音(はんひろぼいん) 半広母音(はんひろぼいん)  open-mid vowel

広母音(ひろぼいん) 広母音(ひろぼいん)  open vowel

最後に、口の中を前・中・後に分けたとき、舌がそのうちのどこに位置しているかという分類がこれです。舌の位置が最も前にある母音から後ろにくる母音の順番にあげています。

前舌母音(ぜんぜつぼいん) 前舌母音(ぜんぜつぼいん)  front vowel

中舌母音(ちゅうぜつぼいん) 中舌母音(ちゅうぜつぼいん)  central vowel

後舌母音(こうぜつぼいん) 後舌母音(こうぜつぼいん)  back vowel

以上、母音の分類を見てみましたが、こういった分類を組み合わせて、たとえば、非円唇前舌狭母音(ひえんしん・ぜんぜつ・せまぼいん)などという細かい分類が可能になり、それぞれの発音を定義づけすることができるわけです。





子音の種類

では、次に、英語の子音にはどんな音があるのか見てみましょう。パッと破裂するように出す「破裂音」、歯や唇などが摩擦することによって発生する「摩擦音」、鼻から息を抜く「鼻音」などの他にふるえたり、はじいたりする音などがあります。母音とは異なり、舌や唇以外の調音器官も使いますので、いろんなバリエーションが可能です。

破裂音(はれつおん) 破裂音(はれつおん) plosive consonant
「キャンディーがお口のなかで破裂してシュワーとミントの香りが…」など、何かが破裂してしまうというのではなく、2つの調音器官をくっつけ、空気の流れを止め、次の瞬間に放すことで、詰まったような音を出します。stop consonant と呼ばれることもあります。英語の /p/、/t/、/k/、/b/、/d/、/g/ が破裂音です。

摩擦音(まさつおん) 摩擦音(まさつおん) fricative consonant
「物言えば唇寒し…」てなことで、唇を乾布摩擦して鍛えています―なんてことでは当然ありませんね。これは、2つの調音器官を触れさせると、その2つの器官の間から出る空気の流れは当然狭くなります。この狭くなった空気の流れによって出す音がこれです。英語では、/s/、/z/、/ʃ/、/ʒ/、/f/、/v/、/ð/、/θ/ がこれに該当します。

破擦音(はさつおん) 破擦音(はさつおん) affricate consonant
一言で言えば、破裂音と摩擦音の両方を合わせた音です。破裂させながら同時に摩擦といった器用なことはできませんので、まず、/d/、/t/ の破裂音を出して空気の流れを止めてから、それぞれ /ʒ/、/ʃ/ の摩擦音を出して、舌を放します。英語では、/ʤ/、/ʧ/ の発音があります。

鼻音(びおん) 鼻音(びおん) nasal consonant
フランス語のように鼻にかかった「びよんびよ~ん」(シャレているわけではありません)といった感じの音で、鼻腔からの空気の流れを鼻の穴から抜くことによって出します。このとき、口からの空気は遮(さえぎ)られていますので、口からは空気が出ません。英語では、/m/、/n/、/ŋ/ があります。

ふるえ音 ふるえ音 trill consonant
震わせるのは「舌」や「喉ひこ」など、調音器官のなかでも固定されていない部分で、スペイン語の /r/ の巻き舌をはじめ、フランス語の /r/ のように喉ひこを震わせるものもあります。「巻き舌」なら河内弁、それなら得意ですという方には残念ですが、スコットランド英語などにはみられるものの、基本的に英語にはこの音はありません。

はじき音 はじき音 flap consonant
ひとつの調音器官を別の調音器官に対して、はじくようにして出します。と言っても、意識して力いっぱいはじくのではなく、舌を歯ぐきの裏側に瞬間的にくっつけて離します。英語では、アメリカ英語で「水」water のことを「ワラ」、「バター」butter は「バラ」などと発音するときの「ラ」の音がこれです。

接近音(せっきんおん) 接近音(せっきんおん) approximant consonant
「何ミリぐらい近づいたらいいですか?」といった規定はありません。接近している2つの調音器官の間を流れる空気によって出す音ですが、両者が触れていないため、摩擦音に比べると空気の流れの道は広くなります。英語では、/r/、/j/、/w/ 、実際の発音には、舌先を上の歯(または歯ぐき)に接触させて発音する /l/ もカテゴリー的にはこの接近音に入ります。