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Last update November 8, 2018

ケルトイの言語ケルト語 (1)

ケルト語とは?

ケルト語 (Celtic languages) といきなり言われてもピンと来ませんね。英語などに比べてずっと古い言語ですから無理もありません。しかし、実は、ケルト語(厳密にはケルト語の一派)から英語に入った単語もけっこうあるのです。たとえば、ウィスキー (whiskey) やスローガン (slogan)、地名ならテムズ川 (Thames) やケント (Thames) などが挙げられます。

さて、そのケルト語ですが、紀元前1000年頃からローマ帝国が台頭するまでの間、ヨーロッパ大陸の広範囲にわたる地域やブリテン諸島で話されていた言語です。ケルト人 (Celts) の移民とともに、トルコ、北イタリア、フランス、スペイン、ブリテン諸島などで話されるようになり、大陸のケルト語 (Continental Celtic languages) とブリテン諸島の島嶼(とうしょ)ケルト語 (Insular Celtic languages) とに別れ、それぞれ独自に発展していきました。

しかし、歴史の流れとともに、ローマ人の話すラテン語やゲルマン民族の言語であるゲルマン語の出現によって衰退し、現在では、イギリス、マン島、アイルランド、ケープ・ブレトン島、パタゴニア、フランスのブルターニュ半島において少数派の人たちに使われるのみとなっています。

言語学的には、ケルト語はインド・ヨーロッパ語族 (the Indo-European languages) に属する言語のひとつで、ケルト祖語 (Proto-celtic languages) を先祖とする言語であると定義できます。ここでいう「ケルト祖語」とは、「母体言語」として再構築された概念上の言語で、他の言語でもそうですが、特徴の似た言語群の派生関係を体系化するために、このような言語の原型を想定するわけです。ケルト祖語の時代は、紀元前1250年頃の青銅器時代 the Bronze Age とされています。

大陸ケルト語には、現在のフランスや北イタリアで話されていたガリア語 (Gaulish)、スペインのケルトイベリア語 (Celtiberian)、中央トルコのガラティア語 (Galatian) があります。しかしながら、6世紀頃になると衰退し、いずれも生き残ることはできませんでした。

一方、ブリテン諸島の島嶼ケルト語は、アイルランドやスコットランドなどのゲール(ゴイデル)語 (Goidelic or Gaelic languages) とイングランド、ウェールズなどのブリソン語 (Brythonic languages) へと分岐します。しかし、ローマの支配が終わって、アングロ・サクソン (Anglo-Saxons) がこの地に定着するようになると、ケルト語は衰退し、英語の祖先であるゲルマン語がそれに取って代わるようになります。ブリソン語を話すケルト人は大陸へ逃れ、イギリス海峡に面したフランス北西部のブルターニュ半島に定着していきます。ゲール語は今日のアイルランド語 (Irish) へと発展し、さらに、スコットランドマン島のゲール語へと枝分かれしていきます。ブリソン語からは、コーンウォール語 (Cornish)ブルトン語 (Breton)ウェールズ語 (Welsh) が生まれました。

ケルト語の文字

また、古代ケルト人は、記憶と口伝による伝承を尊び、特定の文字を持っていなかったと言われています。そのため、発見されたケルト語による記録も、ラテン語やギリシア語などの文字を使って書かれたものがほとんどです。大陸ケルト語では、紀元前6世紀頃のレポント語の銘刻が発見されていますが、ラテン語の元になったイタリック文字で書かれています。4世紀になると、アイルランドのケルト語を筆記するために出現したオガム文字 (Ogham) が登場し、10世紀頃まで使われていました。

ケルト語の主な特徴

では、ケルト語とは一体どんな言語だったのでしょうか?――その特徴のひとつとして、複雑な発音のルールが挙げられます。それは、組み合わせる単語によって名詞の最初の子音の発音が変わるというもので、アイルランド語の例では、「血液」を意味する fuil という単語を使って「私たちの血液」という名詞句を作る場合には、ar bhfuil となり、また、ウェールズ語では、「頭」を表す単語 pen が「私の頭」になると fy mhen と変化します。

その他、下記のような特徴が挙げられます。

名詞の性 (grammatical gender) には「男性」と「女性」の2つがある。
現在分詞がなく動名詞で代用
動作主を表現するのに、動詞の主語ではなく非人称の受動態をよく利用
動詞を文章の頭に置く文章構造
古代ケルト語では文字は用いられなかったが、その後オガム文字が使用された