「l」vs「r」聴き分け戦略 (2)

「l」と「r」の音の本質において、それぞれの音の特徴や発音されるしくみについて説明していますが、もう一度確認して基本をおさえておいてください。

音の分解

単語として聴いたのではどこが違うのかわからないという場合は、音を分解し、部分ごとにその違いを比較する方法が考えられます。ちなみに、オーディオ編集ソフトを使って、lad と rad という単語を前半と後半に分割してみると以下のようになります。実際に音を聴いて違いを比較してみてください。サンプルはアメリカ男性です。（分割は正確に測定して行ったものではなく「耳分量」です。）

lad / rad の分解

	lad	rad
前半	la- の部分	ra- の部分
後半	-ad の部分	-ad の部分

いかがでしょう？よく聴いてみると、意外というか、当たり前というか、違うのは la- と ra- の前半部分だけですね。後半部分の音はほとんど同じです。

さらに分割してみましょう。下図は、アメリカ英語の lad という単語を発音したときの編集ソフトによる波形です。これを 1 から 3 までのパーツに分割し、それぞれの部分の音を取り出したものが下の表の 1 から 3 までの音声ファイルになります。（３つの波形はすべて同じものですが、1 から 3 までの部分を図示するために、便宜上３つ並べています。なお、分割は正確に測定して行ったものではなく「耳分量」です。）

つまり、1 の濃く塗りつぶした部分の音が下の表の 1 の音声ファイルになり、2 の濃く塗りつぶした部分が 2 の音声ファイル、3 のオレンジ色の部分以降の濃く塗りつぶした部分が 3 となるわけです。

	音
1
2
3

それぞれの段階の音を聴いてみると、1 ではまだ詰まるような音がするだけです。1 の音の段階では、「l」の発音のうち、舌先が歯ぐきの裏側に付着した瞬間の音だと言えます。この音に母音が加わってはじめて「ら行」の音として聞こえるようになります。

2 の A 地点になると「ラ」の音が聞こえ始めますが、B の時点を過ぎるともう「ラ」の音は消え去り、3 の塗りつぶした部分では -ad の音しか聞こえません。言い換えれば、この段階で聴き分けようとしても、もはや「ラ」の音は聞こえないわけです。

つまり、聴き分けをするには、オレンジの矢印の部分（B 時点まで）のどこかで判断しなければならないということになります。これは、英語に限らず、どんな発音でもそうです。たとえば日本語の「ダ」と「タ」を取り上げてみても、最初の音が d か t なのかをつかまなければ正しく区別することはできません。

ということで、「l」と「r」の音を聴き分けるためには、いかに早い段階で、それぞれの音の特性をつかむことができるかにかかっていると言えるでしょう。

では、次ページで詳しくみていくことにしましょう。

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