Last update March 24, 2022

オーストラリア英語の発音

基本的な特徴

音節語尾の母音の後の「r」は発音しない (non-rhotic)
オーストラリア英語では、イギリス英語と同様に、音節の末尾に来る母音の後の「r」のスペルを発音しない non-rhotic (ノン・ロウティック) の発音になります。これには、アメリカへの移住が始まった頃(17世紀頃)とは異なり、オーストラリアへの移住が始まった18世紀末には、イギリスの英語自体が「r」のスペルを発音しないものになっていたという歴史的背景があります。また、この「r」のスペルを発音しないということから、イギリス英語のようにlinking R (つなぎの R)」intrusive R (侵入の R)」といった現象が起こります。

母音間歯茎はじき音
アメリカ英語やカナダ英語の発音のように、母音に挟まれた強勢のない音節の /d//t/ が「ら行」に近い音になるという母音間歯茎はじき音化 (Intervocalic alveolar flapping) が起こります。

暗い /l/ の発音
イギリス英語が明るい /l/ と暗い /l/ を使い分けるのに対して、オーストラリア英語ではすべての /l/ が暗い /l/ で発音されます。これら2種類の発音については、明るい /l/ と暗い /l/ (Light /l/ and dark /l/) をご覧ください。

/j/ の合体
オーストラリア英語では、/tj//dj/ の子音が口蓋化することで、2つの子音が /ʧ//ʤ/ に合体する /j/ の合体 (Yod-coalescence) という現象がみられます。よって、tunedune が「チューン」、「ジューン」のように発音されます。また、/sj//zj/ が合体して /ʃ//ʒ/ のように発音する話者もみられます。

例)tune、dune
単語 アメリカ英語 イギリス英語 オーストラリア英語
tune /tjun/ /tjun/ un/
dune /djun/ /djun/ un/

子音の口蓋化
上のような子音の口蓋化が進むと、/tr//dr/ などの発音にも影響がおよび、tree が「チュリー」、dream が「ジュリーム」に近い発音に変化する子音の口蓋化 (Palatalization) もみられます。

/j/ の脱落
上の /j/ の合体と逆の現象ですが、話者によっては、/sj//zj//j//lj//rj//j/ が落ちる /j/ の脱落 (Yod-dropping) の傾向もみられます。ただし、/nj//j/ が落ちて new が「ヌー」のようになる傾向はないようです。

/t/ の声門破裂音化
アメリカ英語やイギリス英語同様、/t/ の声門破裂音化 (T-glottalization) がイギリス英語でもみられ、button が「ボッン」のように発音される傾向がみられます。

happy の語尾音の強調
happy の語尾のようなゆるい /ɪ/ の音が強調され /i/ の音で発音される happy の語尾音の強調 (Happy-tensing) がみられます。