Last update March 24, 2022

カナダ英語の発音

独自の特徴

以上、アメリカ英語およびイギリス英語と比較してみましたが、次に、カナダ英語独自の特徴について紹介したいと思います。

カナディアン・レイジング (Canadian Raising)
無声音である子音(/p/、/t/、 /k/、/s/、/ʃ/、/f/)の前に来る /aɪ/、/aʊ/ の二重母音の発音が変化するという特徴です。舌の位置が上に上がることから「レイジング」(上がる)と呼ばれます。具体的には、地域によっても異なりますが、/aɪ/ の音は /ʌɪ//ɜɪ/ の音になります。また、/aʊ/ の音は /ʌʊ//ɛʊ/、もしくは /oʊ/ のように発音されるため、about という単語が「アベウト」や「アボウト」のように聞こえる傾向があります。

二重母音 有声音の前 無声音の前
/aɪ/ /aɪ/ /ʌɪ/、/ɜɪ/
/aʊ/ /aʊ/ /ʌʊ/、/ɛʊ/、/oʊ/

カナディアン・シフト (Canadian Shift)
シフト(移行)というのは、一部の母音の発音の変化につれて他の母音も影響を受けるといった発音の移行を言います。カナダ英語の発音では、/ɒ/ (cot) と /ɔ/ (caught) の音が区別されない(いずれも /ɔ/ の音で発音)という特徴がきっかけとなった移行がみられます。つまり、/ɔ/ の音は、舌の位置を口の後ろ(後舌母音)、口の天井からより離れた低い位置(半広母音)で発音されますので、それに影響を受けて他の母音がより奥に、より下に移動(より口の開け方が大きくなる)しているのです。

影響を受けている発音は /æ/、/e/、/ɪ/ で、傾向をまとめる以下のようになります。「→移行」の欄は、この発音に近づいた音になっているという意味です。

母音 前後の位置 上下の位置(口の開き) →移行 備考
/æ/         /a/ 舌の位置がより奥に、より下に移動
/e (ɛ)/ ---     /æ/ 舌の位置がより下に移動
/ɪ/ ---     /e (ɛ)/ 舌の位置がより下に移動


こういった変化により、地域や話者によっては、betbit の発音がそれぞれ batbet の発音と同じように聞こえる場合があります。ただし、上の表の下2つの傾向については、専門家によって意見のばらつきがあるようです。


参考サイト

カナダ英語の発音については、下記のサイトが参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=vBjC-KBhJRo
カナダ英語の発音をアメリカ英語と比較しながら解説。

https://www.youtube.com/watch?v=3NEsuxYkvIQ
母音の発音や Canadian Raising(カナディアン・レイジング)を説明したサイト。

https://www.youtube.com/watch?v=N5YJnKy1yq8
Canadian Raising(カナディアン・レイジング)の解説と発音例が聞けます。