th [θ] [ð]の発音 

「ベロばさみ」。だいたい、こういった勝手な名前をつけていること自体が不謹慎なわけですが、要は発音できればいいのであって、専門的にどう呼ぶかはちょっと置いておきましょう。ということで「ベロばさみ」。これは文字通り、ベロの先っちょ(舌先)を、歯と歯の間で、ちょっとはさむようにして音を出すわけですが、これだけではわかりにくいので、スローモーションでやってみましょう。

1. 口を少し開けます。
歯の治療ではありませんので、そんなに大きく開ける必要はありません。ほんの少しで結構です。

2. 上の歯と下の歯の間に舌先をちょっとだけ挟みます。
「挟む」とは言え、 のようにしっかり挟む必要はありません。これじゃ下手をするとベロが痛くなってしまいます。

どちらかというと上の歯のに舌の先端をくっつけるような感じです。下の図では、舌と歯の位置をわかりやすくするために、口が大きく開いているように見えますが、実際の口の形はもっと平たくなります。(歯も二本しかありませんが、気にしないでください)

正しく舌先が歯の先端に付着したところで、
3. そのままの状態で、静かに息を吐きます。

このとき、舌と歯の位置を動かしたり、口を動かしたりしないでください。せっかくのポジションが崩れると正しい発音ができません。あくまでも、口のポジションはそのままで、息を吐くだけです。

いかがですか?息を吐くことで出てきた空気が、歯と舌がくっついている箇所で「摩擦音」を起こしていますね。「音」と言っても、声は出ていないわけですから、「スゥーッ」といった音にならない音になっているはずです。間違っても、「すうーっ」なんていう声を出してはいけません。その時点で「す」=[su] の発音に変わってしまいます。

このように、舌先と上の歯の先端とかくっついた箇所で摩擦を起こして出てくる音、これが、ここで言う「ベロばさみ」の音で、発音記号で言えば[θ]という音になるわけです。

4. 実際に発音してみます。

いつまでも息を出しているだけでは意味がありませんので、実際に、この音を含む単語を発音してみることにしましょう。英語が苦手な人でも誰でも知っている「サンキュー」という言葉があります。実は、この最もポピュラーな単語にこの発音が含まれているのです。まず、わかりやすくするために、単語を分解してみましょう。

th + ank + you

赤い文字の部分です。では、スローモーションでやってみましょう。

1) 舌先を上の歯の先端につけて、歯と歯のあいだで挟むようにセッティング。

2) そのまま息を吐きながら「アンキュー」と言います。

いかがですか?息を吐きながら「アンキュー」と発音することで、英語の thank you の音になっているはずです。当然のことですが、「アンキュー」の「ア」の時点では、口を大きく開けるため、すでに舌先は歯からは離れているはずですね。「ベロばさみ」の状態のままでは、「ア」の発音はできません。「ベロばさみ」のポジションは、あくまでも最初の音を出すための「一瞬」だけです。

また、くどいようですが、サンキューの「サン」のところでわざわざ「サ」と言わないようにしてください。わざわざ言ってしまうと、それは立派な日本語の「サ」になってしまうのです。息を吐きながら「アンキュー」というだけで、英語の thank you になるのですから。

他に、この発音をする単語にどんなものがあるかというと、スペルに th が含まれている単語です。強引にカタカナ表記するとスリー(three)「3」、フィフス(fifth)「5番目」の赤い部分の発音になります。

5. 応用編―2.に戻って、声を出す。

じゃあ、ディス・イズ・ア・ペン(this is a pen )の this やザット( that )、ゼア( there )などはどうなるかということですが、基本的には同じです。ただ、前者では、「息」の音だけだったのに対し、後者では、「声」の音が加わります。上の手順の1、2までは同じで、3のところで、息を吐きながら喉を使って声を出します。あくまでも「声」だけを出すのであって、人為的に「ジー」とか「ゼー」とか「ズー」などという「具体的な声」を出してはいけません。せっかく口の位置が正しく出来ているのに、そういった余計な音を付け加えるために正しくない発音になってしまいます。

舌の位置と歯の位置をしっかり固定させた状態に保っていれば、こういう音は出るはずがないので、「ずーっ」などという声が出ているとすれば、それは明らかに位置がずれていることになります。あまり、むずかしく考えても仕方がありませんが、正しい舌の位置と歯の位置を保ったまま自然に出る声を出していればいいわけです。発音記号で言うと[ð]という音になります。

このように、声の出ていないバージョンが[θ]で、声の出ているバージョンが[ð]というわけです。