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Last update May 20, 2019

新英語時代へ―― (1)

古英語期の概要でも述べましたが、アングロ・サクソン人 (Anglo-Saxons) の話す言語をもとにした古英語 (Old English) は、現代の英語とは似ても似つかないもので、格変化や人称ごとの動詞の活用 (conjugation) など、ゲルマン語 (Germanic language) の特徴をたっぷりと残した言語でした。

しかし、それが中英語 (Middle English) になると、「もはやゲルマン言語とは言えない」というような言語になってしまいます。ここでは、古英語から中英語の時代へと進む過程において、いったい英語に何が起こったのかを探ってみたいと思います。

総合的言語からの脱却

まず大きな変化として、複雑な格変化や人称ごとの動詞の活用がなくなり単純な文法を持つようになったことがあげられます。専門的には、総合的言語 (synthetic language) から分析的言語 (analytic language) への変化ということができます。もちろん複雑な変化がシンプルになっただけで、現代でも代名詞の格変化は I, my, me のように3種類あり、動詞の活用についても3人称単数の s や過去、過去分詞、現在分詞といった形で残ってはいますが、元の形とは比べものにならないほど単純です。

この変化によって、英語は語順に依存する言語になっていきますが、同時に、そのシンプルさから普及しやすく世界の共通語への道が開けたのかもしれません。

変化にまつわるミステリー

では、どのようにしてこの変化が起こったのか――を考えてみましょう。それには、2つの説が考えられます。まず1つめは、ケルト語 Celtic languages の影響です。そして2つめは、侵攻してきたデーン人 Danes の言語、古ノルド語 (Old Norse) の影響です。では、1つずつ見ていきましょう。

ケルト語の影響

古英語の時代とは、アングロ・サクソン勢力が先住民であったケルト民族ブリトン人 (Britons) を支配した時代でしたが、そのブリトン人が話していたのがブリソン語 (Brythonic language) というケルト語の一派でした。ケルト語はゲルマン語と同様に、インド・ヨーロッパ語族 (Indo-European languages)というルーツを持つ言語ですが、当時のブリソン語はすでに総合的言語の特徴を失っていたようです。

ところが、古英語は征服民であるアングロ・サクソンの言語ですから使わないわけにはいきません。そのころの古英語では、すでに語尾変化も比較的シンプルになっていたという事実もありますが、完全になくなっていたわけではありません。慣れていない人々にとっては、いちいち単語が語尾変化するというのはわずらわしく感じられ、そんな言語の習得は簡単ではないはずです。日本人がいきなりドイツ語を覚えろと言われるのと同じですね。

ということで、古英語をマスターできないブリトン人が、自分たちの言語にない格変化などを省略したり、カタコトの英語を使っていたことが、古英語の単純化につながったというわけです。

これを強引に日本語の世界で表現してみると、単語の語尾変化というのは、意味的には日本語の「てにをは」になぞらえることができますので、

「わたし わからない アングロ・サクソン語」とか「あなた わたし 教える アングロ・サクソン語 プリーズ…」

というような言い方がはびこっていたのかもしれません。

とはいえ、被征服民の言語が、逆に征服民の言語に影響をおよぼすことがあるのかという疑問がわいてきますが、ブリソン語と英語の関係においては、いちがいに否定できないようです。後に紹介する「その他の変化」でもそうですが、英語が複雑な語尾変化のない「分析的言語」になってからの文章の語順は、ブリソン語の文章構造の影響を受けているという指摘があるからです。