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Last update November 11, 2018

神秘の文字ルーン・アルファベット (1)

ルーンの起源

古ノルド語 (Old Norse) で書かれたヴァイキング時代 (Viking Age) の詩集『ハヴァマール』(Hávamál) には、北欧神話の神オーディン (Odin) がルーン文字 (runes) の起源を明かす、次のような一節があります。

我は知る 風の揺さぶる木にぶら下がりて
9つの長い夜
槍を手に 傷ついて オーディンに献ず
我自身を我自身のために
何処より伸びくる根とも誰も知らぬ かの木上にありし

誰も我に捧げる者はなし パンも 角の酒も
下方に目を凝らし
ルーンの文字をつかみ取る
叫びとともに つかみ取り
しかして その場より 落下したり

もちろん神話の話ですので、現代人としてはこれがルーン文字の起源だとは思いませんが、文字の神秘性を感じさせますね。

ちなみに、実際のルーン文字の起源は古代のイタリック文字ではないかと言われていますが、はっきりしたことはまだわかっていません。

このルーン文字とは、ゲルマン人 (Germanic peoples) が1、2世紀ごろから使ってきた文字です。そもそも runes の語源であるゲルマン語の run- は「秘密」、「ささやき」という意味があります。ルーン文字はそれぞれの文字が意味を持つ「表意文字」ideogram であり、それぞれの文字が不思議な力を持っていたと信じられていたようで、儀式や占いにも使われてきました。しかし、キリスト教が伝わることで、ラテン語からきたアルファベット(現代のアルファベット)に置き換わり、だんだん使われなくなっていきます。

ルーン文字の種類

ルーン文字のアルファベットには、時代や使われた地域によっていくつかの種類があります。以下はその主な例です。

Elder Futhark (エルダー・フサーク)

2世紀から8世紀頃にかけて使用され、ルーン文字のうち最も古いタイプ。名前の Futhark とは、ルーン・アルファベットの最初の6文字 (f, u, th, a, r, k) (後の文字例を参照)をとってこう呼ばれます。ゲルマン人によって使われていた原始ゲルマン語 (Proto-German)、原始ノルド語 Proto-Norseなどを表記するのに用いられ、24文字のアルファベットから構成されます。この「エルダー・フサーク」が母体となり、「アングロサクソン・フソーク」(Anglo-Saxon Futhorc)、「ヤンガー・フサーク」(Younger Futhark) などのバリエーションが生まれました。

Gothic Runes (ゴート語のルーン文字)

ゲルマン民族の一派であるゴート族 (Goths) の言語であるゴート語 (Gothic) を表記するために使われていたルーン文字のこと。ゴート族はキリスト教化が早く、聖書を翻訳するという目的からゴート語のアルファベットが考案され、4世紀ころまでにはルーン文字は使用されなくなりました。また、もともとルーン文字を発明したのはゴート族だという説もあるようですが、ルーン文字で書かれた歴史的資料が少ないため証明することはできません。

Anglo-Saxon Futhorc (アングロサクソンのフソーク)

アングロサクソン人によって使われていたルーン・アルファベットをいい、24文字からなるエルダー・フサークをベースに文字を追加、最大では33文字までに拡張されたとされています。5世紀以降から使用されるようになり、古英語や古フリジア語 (Old Frisian) を表記するのに使われました。しかし、7世紀にキリスト教化が始まると、次第にラテン語のアルファベットに置き換えられるようになります。初期の頃は、ラテン語にはない þ や などの文字にはそのままルーン文字を使っていましたが、それも、1066年のノルマン人の征服を機に別の表記へ移行されていきます。

Younger Futhark (ヤンガー・フサーク)

スカンジナビア・ルーン (Scandinavian runes) とも呼ばれるヤンガー・フサークは、母体となったエルダー・フサークから長い年月をかけて変遷したアルファベットで、文字数も16文字に減っています。ヴァイキングの台頭が始まる800年ごろから、ノルウェイ、スウェーデン、デンマークにおいて使用されるようになりました。このころから、原始ノルド語に音韻のバリエーションが増え、古ノルド語へと移行していきます。 エルダー・フサークが、特権的な「秘密の文字」であったのに対して、このアルファベットは広く一般に普及しました。しかし、スカンジナビア地域のキリスト教化により、1200年ごろまでにはラテンアルファベットへと移行します。