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Last update July 6, 2012


ネイティブチェックの必要性




その昔、今をときめく韓国のサ○○ン電子の仕事をしたことがあるが、「ネイティブチェック」の話をすると、その担当者に、「ウチはネイティブチェックなんか入れません。料金が高くなるだけです」と言われたことがある。今でもそうなのかどうかは不明だが、確かに、この「ネイティブチェック」というものは、真面目な日本人ならではの仕組みなのかもしれない。

英語にも proofreading という言葉があり、自分も「ネイティブチェック」を依頼するときは、proofreading という単語を使っているが、この単語自体の意味するところは「文章の校正」であり、書かれた文章に間違いがないかチェックし修正を加えるという定義がある。そういう意味では、「ネイティブチェック」も「校正」なのだが、そこに「ネイティブ」という言葉がつくところがミソである。つまり、ネイティブでない人間が作成した文章をネイティブがチェックするということがポイントなのである。

「ネイティブチェックは不要」というのも、なかなか思い切りの良い考え方なのだが、その反面、文法的な間違い、誤解を招くような表現、プッと吹き出してしまうような言い回しなど、英語を母国語としない人間にとっては気づかない「落とし穴」が隠されている場合もある。それが私信や自分だけで完結する内容のものであれば、笑われるだけで済むが、ことビジネスに関して言えば、商品やサービスの品質を疑われる場合があり、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうかもしれない。



数年前になるが、ある外資系の会社のホームページのリライトをしたことがある。外国人が翻訳した日本語だとすぐわかるが、随所に思わず吹き出してしまうような表現があった。なかでも印象に残っているのは、「あなたが大事な顧客として尊重されたかったら、私たちに頼んでください」(正確には覚えていないが)といったような文章だ。さて、このような文章を読んでどう感じるか、である。外国人が書いた日本語の文章だなという前提がわかる人間は、舌足らずの子供がしゃべっているようで「微笑ましい」と思う人もいるかもしれないが、そんな前提を理解しない人には「失礼な、脅しか」と取られるかもしれない。いずれにしろ、ここの会社と取引して大丈夫かなという不安は残りそうな気がする。「この仕事を完成させたかったらもっとお金をください」とか言って途中で値上げされるかもしれない。

多少間違いがあっても商品が良ければいいじゃないかという意見もあるかもしれないが、こう言っちゃなんだが、それは、単なる「思い込み」に過ぎないと思っている。オレはよく「こだわりが強すぎる」とか「細かいところにうるさい」と言われるので、これは自分だけなのかもしれないが、たとえば、文書に数値や仕様の間違いとかがあると「品質的に信頼できない」と思ってしまうし、スペルミスや文法ミスがあると「情報として信憑性がない」と不安になってくる。1か所でもあるともうダメだな。ま、ネイティブチェックでは数値や仕様のチェックは無理だが、表現的な間違いを防ぐことができる。「商品やサービスが良ければ」というが、その良さを伝えるには、文章表現に頼らざるを得ない。間違いだらけのまずい表現で、どうして伝えることができるのかというのが単純な疑問だ。

じゃあ、最初から、そういったミスの起こりにくい翻訳者が翻訳すればいいじゃないかということになる。確かに優れた翻訳者が担当すればミスは少なくなる。しかし、後工程でのチェックが全く不要かというと、それも「否」だ。正式なところに出る文書であれば、やはり、必要だと思う。優秀なノン・ネイティブの翻訳者が担当しても、品質保証のためネイティブチェックはやるべきだし、ネイティブの翻訳者が訳した場合も、日本人ネイティブによる原文とのすり合わせチェックが不可欠だ。新聞記事などでも記者が書いたものを校正者がきちんとチェックするものであり、第三者の冷静なチェックはごく当たり前のことである。

適切なたとえかどうかはわからないが、「保険」のようなものだと言うこともできる。つまり、ひとつのリスクマネージメントというわけだ。「ガン保険に加入すべきかどうか」という問題に対して、「いや、健康管理に気をつけて、ガンにならなければいいじゃないか」とするのか、あるいは、「災害保険はどうか」、「災害に遭わないように気をつけたらいいんだ」というのか、健康も災害も自分の意識だけではコントロールできないわけで、そのときのために「保険」が必要なのだ。よって、文章作成者の意識が届かないところをカバーするためにネイティブチェックを行うのである。

しかし、私的な内容の文書、プライベートな文章のやりとり、提案、または、社内でしか用いられない文書など、自分個人や自社内でのみに責任が発生するようなものについては、あえてネイティブチェックは必要ないと思う。第一、日々送られてくるメールの返事をするのに、いちいちネイティブチェックを通していたのでは仕事にならない。社内の重要文書なども、もし、伝わらないというのであれば、元々の翻訳に問題があるわけで、ネイティブチェックをしたところで根本的な解決にはつながらない。

以上のことをまとめると、次のようなことが言える。

 外国人が書いた文章を母国人がチェックするのがネイティブチェック。
 ネイティブチェックとは、外国語で情報を発信する際のリスクヘッジ。
 正式な文書、公的な内容のものはネイティブチェックするのが望ましい。
 私的な内容のものにはあえてネイティブチェックは必要ないだろう。