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Last update June 1, 2019

古英語のアルファベット

初期の古英語では、現代のようなアルファベットではなく、ルーン文字 (runic description) で構成されたアルファベットを使っていました。(アルファベットの起源については、アルファベットはどこから?を参照してください。)

厳密には、現代のようなアルファベットのことをラテン・アルファベット (Latin alphabet) と言いますが、キリスト教の伝播とともに、このラテン・アルファベットが導入されたのは、9世紀から12世紀にかけてでした。

古英語の文字

時代やまとめた人によっても若干異なるようですが、1つの例をあげると以下のような24文字になります。

順序 大文字 小文字 順序 大文字 小文字
1 A a 13 M m
2 Æ æ 14 N n
3 B b 15 O o
4 C c 16 P p
5 D d 17 R r
6 Ð ð 18 S s/ſ
7 E e 19 T t
8 F f 20 Þ þ
9 Ᵹ/G ᵹ/g 21 U u
10 H h 22 Ƿ/W ƿ/w
11 I i 23 X x
12 L l 24 Y y

なんだか発音記号のような文字や見たことのないような不思議な文字もありますね。また、現代のアルファベットにはあるのにここには欠けているような文字もあります。この文字体系の構成としては、20文字はラテン語のアルファベットからそのまま借用し、Æ, æÐ, ð についてはラテン語の文字を改造し、Þ, þǷ, ƿ については、ルーン文字をもとにしています。KQZ の文字は、本来の英語の語彙では使われなかったため含まれていません。

Æ, æ は「アッシュ」(ash) と呼ばれ、見てのとおり AE を組み合わせた文字です。Ð, ð は「エズ」(eth)Þ, þ は「ソーン」(thorn) といいますが、現代の this, thatth の音(発音記号では [ð] )、thinth の音(発音記号では [θ] )を表記するのに使われていました。もっとも、古英語、中英語 (Middle English) の時代には、どちらの文字がどの発音を表していたかは厳密な区別がなかったようで、たとえば、Þ, þthin にも that にも使われることがありました。ちなみに、中英語や近代英語 (Modern English) の初期には、þ の文字の上に小さな e という文字をつけて the を、同じく t をつけて that を表すという略式表記も使われていたようです。

また、Ᵹ, ᵹ はアイルランドで考案され、ブリテン島にも広まった「インシュラー体」(insular script) と呼ばれる文字書体の G, g です。これは、「カロリング小文字体」(Carolingian minuscule) と呼ばれる現代の G, g へと移行していくことになります。

さらに、ſ といった f によく似た文字は「長い s(long s) と呼ばれ、表記ルールなどにより s と使い分けがされていました。この「長い s」は19世紀の始めごろまで存続します。

Ƿ, ƿ は「ウィン」(wynn) と呼ばれる文字で、古英語では uuu を2つ重ねて表記されることもありました。これが W, w として使われるようになるのは、12~13世紀の中英語の時代で、古英語期では、Ƿ, ƿ を使うのが一般的だったと言われています。

w, v, ui, j

ちなみに、古英語のころの文字の変化はちょっと複雑なので、簡単に解説しておきましょう。

まず、なんと、古英語の時代には vuij はそれぞれ同じ文字だったのです。つまり、v = ui = j というわけです。そういえばよく似ていますよね。 vu なんて底が尖っているか丸まっているかの違いですし、ji は先端に尻尾のようなものがあるかないかの違いだけです(字の下手な人が書けばどっちかわからないこともあります)。

さらに、w だって、v を2つくっつければ w になります。事実、スペイン語などでは v (「ベー」)がダブル(ドブレ)ということで「べ・ドブレ」(v doble) と呼ばれています。英語では、v = u なので「ダブル・ユー」(double u) と呼ばれるわけです。数式風にすれば、w = v x 2 = u x 2 となりますね。

前述のように、ルーン文字の Ƿ, ƿ[w] の発音をする文字でしたが、その文字の形は p とよく似ているため間違えることも多かったようです。そこで、この音を表記するのに、u を2つ重ねて uu と書いていたわけですが、当時の uv のように尖っていたため、vv つまり w へと発展していくことになり、中英語の時代には w の文字が定着します。

vu を区別するようになったのは、母音の [u] を表記するためで、そのときに v は子音の v を表記する文字として使われるようになります。

そして、ji のほうです。最初、ji のバリエーションとして、いくつかの i が続いたときに最後の i に「尻尾」を付けるという意味で使われていました。 i が母音を表記し、i が子音を表す文字として使われるようになるのは15世紀のころで、17世紀になるとそれがすっかり定着してきます。