Posted in 2002


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Posted in 2002


ネーミング英語あれこれ




この数日、仕事でネーミングを考えている。何度かアイデアを出したが、どうも先方の求めておられるモノとは違和感があるようで、ボツになって返ってくるので、引き続き考え続けている。といっても、一日中こんなことを考えていても、神経衰弱になってしまうので、息抜きしながら時間を決めて集中したほうがいい、と言ってもムダだが。

こういうものは、時間をかけたからといって良いものが出てくるわけでもない。アイデア提出の納期が長いからといっても毎日毎日考えられるものでもないし、時間を決めて何時から何時までというものでもない。提出までの期間が長いといっても、1ヶ月あれば、最初の25日くらいは全然手をつけないで、後の残りの数日であせって考えるといったようなことが多いのが世の常でもある。だいたいアイデア提出の納期がたっぷりあった試しもない。

ということで、この2、3日、そのネーミングについて考えているわけだが、行き詰まるとアイデアが出てこない。もう、今日はここら辺にして忘れようなどと思っても、アタマのなかでの余韻が強く、気がついたらまた考えている。終電近くの電車に乗って、ぼーっと考えるのだが、同じアイデアのレベルでぐるぐる回っているのに気づく。あー、疲れてるな。と、思いながら、今度の週末は絶対に家でゴロゴロしてやる!という強い決心をする。ゴロゴロしながら、英語のビデオやドラマ見まくってやるなどと考えながら、週末まで頑張ろうとか思うのだが、金曜日に「成人病検診」があるのを思い出し、また、バリウム飲まないとあかんのか、前日の夜は8時以降は、食べ物、飲み物、タバコの類もすべてダメ、あー、うっとおしいなー、と憂鬱になる。そしてまた、気づいたらネーミングを考えているのだ。ネーミング中毒のようになりながら、ふらふらと自分の駅に降り立つと、何と雨。カサがない。自宅まで歩いて20分。しゃあない、ぬれて帰るか。ということで、とぼとぼと深夜の道を歩きながら、ネーミングのことを考えるというわけである。



今回は、ネーミングといっても、どちらかというと、コンセプトをキーワード化するという案件である。しかも、多分にもれず、日本人でも理解できるカンタンな英語を使って、しかも、英語的にもおかしくないもの、という条件がつくのである。具体的な依頼先や内容を出すわけにはいかないので、仮に「冷蔵庫」を作っている会社があって、冷蔵庫が得意なんだけど、他にもいろんな家庭器具を作っていることにしよう。めざしているのは、「総合家庭器具メーカー」としての姿であり、それには、まず冷蔵庫から始めるということをひとつのキーワードで表現したいということなのだ。なかなか複雑で微妙な依頼だな、と思いながら、まず考えたのが、行き着く先のコンセプトである「強い家の電化」というところから発想してみた案が以下である。

Invincible Housekeeping
「強い」→「無敵」ということで、ふと思いついたスペインの無敵艦隊 the Invincible Armada から発想してみた。
United power of housekeeping
「総合メーカ」→「統合する」というところからベネトンの United colors of Benetton を拝借して発想。
Dynactive Housekeeping
 dynamic  active を組み合わせて dynactive という造語も作ってみた。
その他数案あれこれ出してみたが、いずれもボツとなった。

「不採用」の理由として、いきなりそこまで大きなことは言えないという「乖離」があったようだ。やっぱりうちは「冷蔵庫」なんです、「冷蔵庫」に着眼したものがいいんでしょうね、という回答なので、それでは、ということで出したのが以下。

More than just a refrigeration
「ただの冷蔵とは違います」「冷蔵より上のこともやるんです」というニュアンスをもたせたつもり。
Refrigeration a step ahead
「一歩進んだ冷蔵」
Everything from refrigeration
すべては冷蔵から(発展・成長していきます)というメッセージを込めてみた。
その他いろいろ数案出してみたが、これも「不採用」となった。

その理由として「これでは、冷蔵庫だけになってしまいます。」ということ。冷蔵庫はカギとなる部分だが、特定してしまうとちょっと違いますということだ。つまり、めざすコンセプトである「強い電化」を感じさせながら、「冷蔵庫」も感じさせるということらしい。そういう微妙なところが果たしてどこまで数語に表現できるのか?とりあえず、疑問を感じたりするわけだが、ここで「できません」というのは、あまりにも芸がない。逆に「いよいよ面白くなってきた」という思いもある。本気でかからないとダメだな、といった緊張感である。じゃあ、今までのアイデアはいい加減に考えていたのか、というと、もちろんそんなことはない。だいたい「クリエイター」とかを自称している人間にとって、むずかしくなればなるほど「燃える」という気質がある。と言っても「程度もの」ではあるが、ある程度は「チャレンジする」というのが楽しかったりする。ということで、今度はすべて白紙に戻して考えることにした。

その第一歩として、社内の営業担当の人間に、この依頼があったときの最初からの「いきさつ」をすべて聞いてみることにした。というのも、途中から参加したこともあって、そもそも、どういう「頼まれ方」をしたのか、相手はどういう表現を使って「依頼」してきたか、そのときに「例えば…」とかで言った言葉はないのか、などを詳細に渡って思い出してもらうことにした。行き詰まったら、迷ったら、最初に戻る――これは、何事においても基本である。ヒントのない「答え」はない。どこかに「ヒント」があるはずだ。相手が伝えようとしていること、説明の言葉を連ねてもうまく伝わっていない「コア」的なメッセージがあるはずである。しかし、言葉というものは無くては困るが、あったとしても、人の「考え」や「思い」を完全に伝えるには限界があるものだとつくづく感じる。

というような訳で、営業担当のまとめてくれた長い「いきさつ」レポートを読みながら、引き続き、日夜キーワードを考え続けるのである… というとカッコよく(?)聞こえるが、大半が「意地」と「こだわり」である。しかし、悲しいかな、そこまでして考えても結局、苦心して出した案は採用されず、クライアントが出してきた「な〜んだ、これ?」というような案に決まるのがオチだったりする。ネーミングの仕事とはだいたいそういうものである。